第2話 御苑の兄妹
〜新宿御苑〜
「ゴロゴロもんじゃ」の家族は御苑が住処、明治神宮と並んでタヌキには非常にいい場所だ。大半は食料を森の中で調達しているが、人間の近くにいると、美味しそうな匂いがするので、どうしても近くに行ってしまう。特に「油」を使った料理はたまらないらしい。まあ人間だってそうだろうけどね。
ゴロ吉っちゃんとおかみさんは、今日の収支を自分のノートに書き込んでいた。
「最近、野菜が高くなってるわ!」
おかみさんは納品書を見て言った。確かに天候不順でキャベツが高くなっている。
「困ったもんだわ」
おかみさんは洗い物が残っていたので、早々に洗い場に戻って行った。
「早く寝なさいね」
兄妹は時計を見た。
「まだ早いけどな…」
〜しかし今日は疲れた〜 早めに休もう!
心の中でコロちゃんは思った。父親の背中に乗ってはしゃいでいる妹を尻目に寝床に潜った。まあしょうがないか、深夜11時にお店をオープンさせるためには、そろそろ寝ておかないとね。もともと我々は夜行性なので昼間は静かにしているが、夜にどこからともなくゾロゾロ集まって来るんだよね。団体行動はしないけど、家族単位で行動するからな。
コロちゃんは眠くなったらしく、
体が小刻みに揺れ、深い眠りに入った。
「コロのやつ、相当疲れたんだな」
お父さんタヌキも寝床に入ってきた。続いておかみさんと妹も後に続いた。
御苑はちょうど小川のせせらぎが子守唄代わりになってくれるので、みんな気に入ってる場所だ。なかなかこんなところは「宿」周辺には無いだろうね。
たしかに思っている以上に接客するっていうのは疲れる。
特にこの次元を超えた世界で行動するのは、何倍もエネルギーを要すると言ってもいい。現実とは異なる想いの世界、特に想念の世界を幻影として出せる生き物にとっては、相当な疲労がのしかかるのだろう。
コロちゃんは夢を見ているのだろうか?
妙に身体が動いている。一体どんな夢を…
〜御苑の森に風が吹いてきた〜
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