第7話

 結局、喧嘩の裁定は翌年二月に下されて、過料が三百貫になった他は、ほぼ遠山の意見が通る形で決着がついた。


 どちらも裁定を受けいれたが、長州では押込になった家臣を早くに許し、すぐに召し抱える旨を示している。また、喧嘩に加わった中間はすぐに国許に呼ばれて変わりなく奉公できただけでなく、苦労をかけたという理由で銀二〇〇匁が給付されている。


 裁定に納得していなかったのは明らかで、決着がついた途端、幕府の意向を無視して、勝手次第にふるまったのである。


 白根については、お構いなしだったが、それが彼の幸福につながったかどうかははっきりしない。


 遠山はその後も幕閣に振り回されながらも、南町奉行を勤めることになる。


 職を辞したのは、嘉永五年三月二十四日。


 マシュー・ペリー率いる黒船が浦賀に来航する一年前のことであった。


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枯れ尾花の彼方 --遠山景元異聞-- 中岡潤一郎 @nakaoka2016

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