林業の動向

(1)林業生産の動向

(木材生産の産出額の推移)

我が国の林業は、⾧期にわたり木材価格の下落等の厳しい状況が続いてきたが、近年は国産材の生産量の増加、木材自給率の上昇など、その活力を回復させつつある。我が国の林業産出額は、丸太輸出、木質バイオマス発電等による新たな木材需要により増加傾向で推移し、令和4(2022)年は、前年に生じた木材価格の上昇の影響が続いたことや燃料用 チップ素材の生産量が増加したことなどにより前年比6.4%増の5,807億円となった。

このうちの約6割を占める木材生産の産出額は、令和4(2022)年は前年比10.8%増の3,605億円となった。これに対して、令和4(2022)年の栽培きのこ類生産の産出額は2,080 億円となり、前年比で0.6%減少している。


(国産材の素材生産量の推移)

令和4(2022)年の国産材総供給量は、前年比2.7%増の3,462万㎥となった。製材、合 板及びチップ用材については、前年比1.1%増の2,208万㎥となっている。

令和4(2022)年の素材2生産量を樹種別にみると、スギは前年比2.5%増の1,324万㎥、 ヒノキは前年比3.5%減の297万㎥、カラマツは前年比2.8%減の193万㎥、広葉樹は前年比3.6%減の170万㎥となり、樹種別割合は、スギが59.9%、ヒノキが13.5%、カラマツが8.7%、広葉樹が7.7%となっている。また、国産材の地域別素材生産量をみると、令和4 (2022)年は多い順に、東北(26%)、九州(24%)、北海道(15%)が上位となっている

(素材価格の推移)

スギの素材価格は、昭和55(1980)年をピークに下落してきたが、近年は13,000 ~ 14,000円/㎥程度で横ばいで推移してきた。ヒノキの素材価格もスギと同様の状況であり、近年は18,000円/㎥前後で横ばいで推移してきた。カラマツの素材価格は、平成16(2004)年を底にその後は若干上昇傾向で推移し、近年は12,000円/㎥前後で推移してきた。

素材価格は、令和3(2021)年に国産材の需要の高まり等を受けて上昇し、令和5 (2023)年にかけては下落傾向にあるものの、価格上昇前の令和2(2020)年よりも高い水 準で推移している。令和5(2023)年の年平均価格は、スギは15,800円/㎥、ヒノキは22,000円/㎥、カラマツは16,000円/㎥となった。


(山元立木価格の推移)

令和5(2023)年3月末現在の山元立木価格は、スギが前年同月比13%減の4,361円/

㎥、ヒノキが18%減の8,865円/㎥、マツ(トドマツ、エゾマツ、カラマツ)が10%増の5,446円/㎥であった。


(2)林業経営の動向

(林家)

2020年農林業センサスによると、林家の数は69万戸となっている。保有山林5面積が

10ha未満の林家の数が全体の88%と小規模・零細な構造となっており、その5年前の前 回調査(2015年農林業センサス)と比べ、この層の林家の割合は大きく変化していない。 なお、平均保有山林面積は6.65ha/戸となっている。

保有山林面積の合計は459万haであり、前回調査から減少しているが、100ha以上の規 模の林家の面積は116万haと、前回調査から増加するとともに、保有山林面積の合計に占 める割合も増加している。


(林業経営体)

令和2(2020)年の林業経営体6数は3.4万経営体で、前回調査と比べて大幅に減少している。

林業経営体数を組織形態別にみると、個人経営体7は82%(2.8万経営体)と大半を占める。自伐林家については、明確な定義はないが、保有山林において素材生産を行う家族経営体に近い概念と考えると、2,954経営体存在する 。

林業経営体の保有山林面積の合計をみると、令和2(2020)年は332万haで、前回調査から減少しているが、平均保有山林面積は100.77ha/経営体と、前回調査から約2倍に 増加している。

林業経営体数・保有山林面積の減少要因としては、山林の高齢級化の進行等により直近5年間に間伐等の施業を行わなかったため調査対象外となった者が増加したことが一因と推察される。


(林業経営体の作業面積)

保有山林については、作業面積の推移をみると、間伐、下刈り等の育林作業の減少が顕著である。作業面積を組織形態別にみると、個人経営体の占める割合が減少しており、特に間伐では大きく減少している。

作業受託については、森林組合や民間事業体9の占める割合が大きく、作業の中心的 な担い手となっている。このうち、植林、下刈り、間伐は森林組合が、主伐は民間事業体が中心的な担い手となっている。主伐を行う林業経営体には、主伐後の再造林を実施することが期待されてお重要である。主伐のみを行う民間事業体においても森林組合等の造林事業者と連携した再造林の取組がみられる。

また、作業受託とは異なり林業経営体が保有山林以外で期間を定めて一連の作業・管理を一括して任されている山林の面積は98万haであり、その約9割を森林組合又は民間事業 体が担っている。


(林業経営体による素材生産量は増加)

素材生産量のうち約8割は森林所有者からの受託や立木買いにより生産されており、民間事業体や森林組合が素材生産全体の約8割を担う状況となっている。

また、素材生産を行った林業経営体数は、令和2(2020)年で5,839経営体であり、前回調査から減少する一方で、素材生産量の合計は増加し、1経営体当たりの平均素材生産量は3.5千㎥に増加している。年間素材生産量が1万㎥以上の林業経営体による生産量は、生産量全体の約7割まで伸展しており、規模拡大が進行している。

素材生産を行った林業経営体数を組織形態別にみると、個人経営体は3,582経営体であり、前回調査から大幅に減少している。

また、平成30年林業経営統計調査報告によると、会社経営体の素材生産量を就業日数 (素材生産従事者)で除した1人・日当たり素材生産量(労働生産性)は平均で7.1㎥/人・日、森林組合が53万ha、民間事業体が35万haである。林野庁は、令和12(2030)年度までに、林業経営体における主伐の労働生産性を 11㎥/人・日、間伐の労働生産性を8㎥/人・日とする目標を設定している。


(林業所得に係る状況)

2020年農林業センサスによると、個人経営体2.8万経営体のうち、調査期間の1年間に何らかの林産物12を販売したものの数は、全体の約2割に当たる5,649経営体となっている。

また、平成30年林業経営統計調査報告によると、家族経営体の1経営体当たりの年間林業粗収益は378万円で、林業粗収益から林業経営費を差し引いた林業所得は104万円となっている。


(森林組合の動向)

森林組合は、森林組合法に基づく森林所有者の協同組織で、組合員である森林所有者に対する経営指導、森林施業の受託、林産物の生産・販売・加工等を行っている。さらに、森林経営管理制度の主要な担い手として森林の経営管理の集積・集約化を推進し労働生産性を高めることや、木材の販売を強化し収益力を高めることが求められている。これらの取組を通じて組合員や林業従事者の収益を確保することで、組合員の再造林の意欲を高め、地域において持続可能な林業経営の推進に寄与することが、より一層期待されている。

令和3年度森林組合統計によると、令和3(2021)年度の数は610組合で、全国の組合員数は148万人である。組合員が所 有する森林面積は、私有林面積全体の約3分の2を占め、また令和2(2020)年の全国における植林、下刈り等の受託面積に占める森林組合の割合は約5割となっており、我が国の森林整備 の中心的な担い手となっている。また、素材生産量については平成25(2013)年度の452 万㎥から令和3(2021)年度には655万㎥へと、近年大幅な伸びを示している。

森林組合の総事業取扱高は、令和3 (2021)年度には2,959億円、1森林組合当たりでは4億8,506万円となっており、事業規模も拡大傾向にある。

一方、総事業取扱高が1億円未満の森林組合も16%存在するなど、経営基盤の強化が必要な森林組合も存在する。

また個々の森林組合の得意とする分野も異なる。

このような近年の状況を踏まえ、令和2(2020)年に森林組合法が改正され、事業、組織の再編等による経営基盤の強化を図るため、合併によらずそれぞれの状況に応じた事業ごとの連携強化による広域での事業展開が可能になるよう、吸収分割及び新設分割が連携手法として導入された。また、販売事業等に関し実践的な能力を有する理事1人以上の配置を義務付けた。さらに、理事の年齢や性別に偏りが生じないよう配慮する旨の規定が設けられており、若年層や女性の理事の就任に積極的に取り組んでいる組合もみられる。

また、森林組合等が生産する原木を森林組合連合会が取りまとめ、更に複数の森林組 合連合会が連携し、大口需要者に販売する協定を結ぶ取組など、森林組合系統内での連携による経営基盤の強化の取組が進展している。森林組合系統では、おおむね5年に1度、森林組合系統全体の運動方針を策定しており、令和3(2021)年10月に策定された運動方 針では、国産材供給量の5割以上を森林組合系統で担うことなどを掲げている。


(民間事業体の動向)

素材生産、森林整備等の施業を請け負う民間事業体は、令和2(2020)年には1,211経 営体となっている。このうち植林を行ったものは35%(426経営体)、下刈り等を行ったものは47%(565経営体)、間伐を行ったものは68%(826経営体)となっている。また、受託又は立木買いにより素材生産を行った民間事業体は980経営体となっており、うち52%(505経営体)が年間の素材生産量5,000㎥未満と小規模な林業経営体が多い。安定的な事業量の確保のために、民間事業体においても、施業の集約化や経営の受託等を行う取組が進められている。

林野庁では、民間事業体等の経営基盤の強化を図るため、低利な資金貸付けや利子助 成、林業信用保証等の様々な措置を実施しており、令和4(2022)年度には、森林を購入 して経営規模の拡大を図る民間事業体等への⾧期かつ低利な資金措置を拡充した。また、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証においては、創業間もない民間事業体等に対して、将来性を評価した保証引受等により資金調達の円滑化を支援している。

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日本の林業まとめ @kimura141421356

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