第9話 新たな挑戦に向けて

学校の放課後、公民館。柚月は田辺先生と向き合いながら、発表会に向けた練習をしている。昨日の母の言葉が胸に響き、これまで以上に真剣な表情でピアノに向かう。


田辺

「今日は何だか集中してるね。何かあった?」


柚月はピアノから手を離し、少し照れたように笑う。


柚月

「お母さんが、発表会に出てもいいって言ってくれたんです。」


田辺は驚きながらも満足げに頷く。


田辺

「そうか、それはよかった。本当に素敵なお母さんだね。」


柚月(小さくうなずきながら)

「はい。でも、お母さんが信じてくれた分、私もちゃんと頑張らないといけないって思って…。」


田辺先生はその言葉に感心し、ピアノの隣に座る。


田辺

「その気持ちが大事だよ。でも、緊張しすぎると指が動かなくなることもある。発表会では、君が今ここで弾いてるように、自分の気持ちを音に乗せるだけでいいんだ。」


柚月は少しだけ不安げに聞き返す。


柚月

「…私の音、大丈夫かな?みんなに伝わるかな?」


田辺は微笑みながら、優しく答える。


田辺

「大丈夫だよ。君が感じたことをそのまま音にする。それが音楽なんだから。間違えたっていい、君の音楽が誰かの心に届けばそれで十分なんだ。」


柚月はその言葉に勇気をもらい、再びピアノに向かう。鍵盤に触れる指は今までよりも力強く、そして自信に満ちている。


田辺先生はそんな柚月を見守りながら、静かに言葉を添える。


田辺

「さあ、もう一度弾いてみよう。君の音を聴かせて。」


ピアノの音が公民館に響き渡る。その音は少しずつ確かな形を帯び、曲としての完成度を高めていく。夕日が窓から差し込み、彼女の集中した横顔を温かく照らしている。


カット:ピアノの音とともに公民館の外の風景。海風が吹き抜け、遠くに漁船が戻ってくる様子が映る。柚月の音楽は、確かな一歩を踏み出している。


次回予告


ナレーション(田辺先生の声)

「音楽に向き合う中で見えてくる不安と希望。発表会が近づくにつれ、柚月は自分の音楽と本当の自分に向き合い始める――。」


映像予告:

•夜遅くまで公民館で練習を続ける柚月の姿。

•クラスメイトたちに冷やかされながらも、発表会の話を隠さずに伝える場面。

•直子が市場で同僚たちに柚月の話をする様子。

•発表会の会場を初めて訪れる柚月と田辺先生。


タイトル表示

「次回:音楽が響くとき」

「小さな町から生まれた音楽が、やがて大きな波紋を広げていく――。」


読者へのメッセージ


「『Gifted』第4話をお読みいただき、ありがとうございます。母の理解を得た柚月が、新たな挑戦へと踏み出す姿が描かれました。音楽と向き合う中で葛藤や困難に直面する彼女が、どのように自分を表現していくのか。そして家族や周囲の人々にどんな変化をもたらすのか――。次回もぜひお楽しみに!」

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