第4話 合コンから遠ざかり10年!
「崔君、崔君に女性を紹介したるわ」
「それはええけど、なんで急に?」
「今、口説いてる女性がいるんやけど、その女性から“先輩に男性を紹介してあげてくれ”って頼まれたんや」
「どんな女性?」
「40歳」
「うーん、今、僕が30代前半やから……まあ、ええか。会うわ。年上は好きやし」
「ほな、今度の土曜、〇〇時に〇〇駅で」
「わかった-!」
土曜、〇〇時、〇〇駅。
「崔君、この人やねん」
「え! あ! 崔です」
「淑子です」
「ほな、後は2人きりで」
紹介者の知人はスグに去った。僕と淑子だけ取り残された。淑子は、どう見ても50代だった。流石にキツイ。どこに行きたいか? 聞いてみたら“どこでもいい”と言われたので困った。結局、映画を観ることにした。映画なら、会話をしなくてもいいからだ。
映画を観ていたら手を繋がれた。振りほどくのも申し訳無いので放置していたら腕を組まれた。仕方が無いので、そのまま放置していたら映画が終わった。
映画館から出て、“それじゃあ”と言って帰るのも申し訳無い気がして、コーヒーを飲んでから帰ろうと思った。
カフェで娘の自慢をされた。写メを見せられたが、意外に美人だった。淑子の遺伝子を受け継いでいるのか? 目を疑った。
「僕、お嬢さんに会いたいわぁ、お嬢さん、歳は?」
「娘は26歳やで」
おいおい、それじゃあ、絶対に40歳じゃないだろう?
「お嬢さんに会わせてや」
「えー! 崔君って、意地悪やなぁ、私がいるのに」
「ええやんか、会わせてや」
「わかった、ほな、私とホテルに行ってくれたら会わせてあげるわ」
「ちょっと待ってや、僕はあなたのお嬢さんを気に入ったんやで。もし、お嬢さんが僕を気に入ったら付き合うということもあるかもしれへんのやで」
「そうやね、でも、それがどうしたん? 私達は気にせえへんで」
「気にせえへんの? 親子で同じ男に抱かれるってことやで」
「ええやん、おもしろいやんか」
「むむむむむ……」
悩んだ末、僕は淑子とホテルに行った。
「こんにちは、来夢(らいむ)です)
「崔です! いやー! 写真よりもキレイやね!」
「そうですか? ありがとうございます。母がお世話になっています」
「崔君、ウチの娘、美人やろ?」
「はい! もうテンション爆上がりです」
僕と淑子と来夢は、ちょっとだけ洒落たレストランでランチ。僕は来夢に猛烈アピールをした。淑子はニヤニヤしながら僕を見ていた。
ところが、コーヒータイムで来夢が立ち上がった。
「え! どこか行くの」
「これからデートやねん」
「え! 彼氏がいたの?」
「うん、ほな、崔さん、また今度」
来夢が去って行った。
「淑子さん、どういうことやねん? 来夢ちゃんに彼氏がいるって聞いてへんで」
「うん。だって崔君、“彼氏がいるかどうか?”聞かへんかったやんか」
「むむむむむ……」
苦い! 苦すぎる経験だった。
また或る日、別の知人から連絡があった。
「崔君に女を紹介するわ」
「どんな人?」
「40歳」
「……」
「どないしたん? 黙り込んで」
「いや、今、デジャブとトラウマが僕の中を駆け抜けて行ったんや」
「なんやそれ? で、一応、会ってみるやろ?」
「そうやな、一度、会ってみようかな」
「ほな、土曜日、〇〇時に〇〇駅で」
「わかった」
土曜日、〇〇時〇〇駅。
「崔君、この人、芳子さん」
芳子さんは50代に見えた。なんやねん? この似たような展開は?
「ほな、後は2人きりで」
知人は去って行く。嫌、やめて、1人にしないで! じゃない、2人にしないで。
「崔君、どこに行こうか?」
「映画!」
そして、また僕は映画館で手を繋がれ、腕を組まれ、複雑な気分で映画館を出た。
「芳子さん、ほな、僕はこれで」
「お茶くらい飲もうや」
「……はあ、ほな、コーヒー1杯だけ」
「この女性、お嬢さんですか?」
「うん、美人やろ?」
「お嬢さんに会わせてくださいよ」
「じゃあ……ホテルに行ってくれたら会わせてあげる」
「むむむむむ……」
前回で学習し、少しだけ利口になっていた僕は、もう口車には乗らなかった。
というわけで、合コン、紹介に良い思い出が無い! もう合コンなんか行かない! 紹介すると言われても行かない! 合コンのセッティングなんかしない! 紹介もしない! 心に誓って約10年。ところが今、或る女友達から合コンのセッティングを頼まれて困っている。この歳でまだ合コンか? 僕は合コンから逃げられない宿命なのだろうか? やがて歳をとり、禿げた頭で合コンをセッティングする自分を想像してみたら、気を失いそうになるのだった。
嗚呼! 合コン! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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