第5話
気が付くと元の私の部屋でベッドの横に座っていた。
朝なのかしら?
小鳥が外で囀っているし、使用人たちが働いている音が聞こえてくる。死神は私を強制的に眠らせたのだと思う。よく見ると透けていた手や身体は元に戻っている。
あれからどれくらい経ったのか全く分からない。身体と離れている分時間の感覚がないような不思議な感覚なの。
相変わらずベッドで寝ている自分の身体。前よりも頬がこけてしまってあまり健康には見えない。そんな状態の自分を見ると悲しくなってきてしまう。
こんなにも脆い自分を家族は守ってくれようとしている。
死にたくない、だけど人の命を代償として生き返るなんて出来ない。
そんな考えをしながらジッと自分の身体を見つめていると、
「ようやく起きたようだね。透けていないね」
「ねぇ、死神さん。私はあれからどれくらい眠っていたの?」
「大体四日くらいかな。昨日君とアラン君との婚約は解消されたよ。おめでとう」
死神は私の手を取り鼻歌と共にダンスを踊る。その様子が可笑しくてふふっと笑ってしまった。
「そうそう。君はそうやって笑っているといい。あぁ、そうだ。君が眠っている間に色々と楽しい事が起こっていたよ。話を聞くかい?」
「えぇ。聞きたいわ」
私はソファへ腰かけて死神の話を待った。
「侯爵家から帰ったアラン君はね、色々と現実を知ったんだ。家の経済状況とか、その原因が男爵領からだったとか。伯爵は隠してはいなかったけれど、アラン君は興味がなかったんだろうね。
伯爵に聞いて知ったみたいだったよ。今更だよね。伯爵ったらさ、それはもう烈火の如く怒り狂っていたよ。
思い出すだけでも笑いが止まらない。ようやく、ようやくだよ。アラン君が置かれている状況に気づいたのは。馬鹿だよね。今頃君を捨てた事を後悔しているんじゃないかな?ハハハッ」
死神はまた上機嫌で宙に浮きながら笑っている。
「死神さん、ノーラはどうなったか知っているの?」
「あぁ。メインディッシュはちゃんと最後に取っておく事にしたんだよ。今から見に行くかい?」
「えぇ、お願い」
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