第60話

 翌日、侍女の声と共に起きて準備をする。試験会場の部屋には前回試験をした試験官とホルムス様、陛下が立っていた。


「これよりダンスの試験を行います。ホルムス様、どうぞパートナーとしてご参加下さい」


試験官の言葉にホルムス様は何も言わず、私の手を取った。


「ファルマ、昨日踊った事を思い出せば大丈夫ですよ」


「はい。師匠」


 曲が流れ、ホルムス様の1歩から始まる。教えて貰った事を思い出しながら踊る。ステップを間違わず踊り切れたと思うの。曲が終わるとパチパチと陛下が手を叩いて褒めてくれたわ。


「ファルマ嬢。ダンスの試験は合格です。おめでとう。優秀な生徒に出会えて良かったです。いつでも学院へ遊びに来てくださいね。これが卒業証書となります」


試験官の人が一枚の上質紙を私に差し出してくれた。


中身を見てみると、_ラカン総合学院卒業証書_と書かれていた。


「し、師匠、こ、これは?この試験は巡回騎士団へ付いていくための試験ではなかったの?」


「これは学院に通えなかったファルマの為に陛下が用意して下さったのですよ。そして飛び級制度ですぐに卒業してしまうなんてファルマは末恐ろしい子ですね」


「!!陛下、有難うございます」


私はホルムス様の言葉で理解したと同時に学院に通えなかった事や家族の事、色々な思いが頭の中を駆け巡って涙が出てきた。


「なぁに。儂の見る目が確かだっただけだ。ファルマは優秀だからな。それに儂が特別に用意したのではなく、学院の制度があったからその制度を使ったまでだ。王宮に呼び出したのは儂だがな」


「・・・嬉しいです」


「ファルマよ、レンスの補佐もしっかりと成果を挙げたし、学院も卒業出来た。これで貴族達も邪魔する者はおらん。大手を振ってホルムスの傍におれるじゃろう。さぁ、パジャンの街に遊びにいっておいで。あぁ、土産を宜しく頼んだ」


「やはりファルマの巡回騎士団への参加は貴族絡みでしたか」


「あぁ。お前を手に入れたい貴族や令嬢は沢山おるのだ。前回王都へ帰って来た事を聞きつけた貴族達がここぞとばかりに釣書を送って来たり、令嬢達が城へ押しかけて来おってな。


ファルマの存在を知らしめる良い機会を探しておったら丁度フェルナンドから応援要請があり、レンスの補佐として付けたのだ。


遺物を持ち帰るという成果を挙げ、学院を最短で卒業する令嬢だ。他の者から異論は出ないだろう。出た所で儂が叩き潰してやるがな」


「タナトス様有難う。お土産楽しみにしていてね」


私は陛下や試験官達に改めてお礼を言い、師匠と一緒に部屋を出た。


「さぁ、ファルマ。海に行きますよ」


「はい、師匠」


私は荷物を持って師匠と一緒に転移陣で南部の街パジャンへと転移した。

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