第47話
1枚のシートに出来上がったので師匠の所へと持っていく。
「師匠、出来たよ」
私は師匠に作ったオブラートを差し出す。
「これを正方形に切って薬を真ん中に入れてね、薬が出ないようにしてお水と一緒に飲むんだよ」
師匠は私の言った手順で薬を包み水と一緒に飲み込んだ。
「まぁ、苦味は無いから飲みやすくはなったけど、喉に引っ付きそうですね。それにこのオブラートは湿気に弱いのか?瓶に詰めればそれはいいのか」
うんうんと頷きながらペンを持ち、思考の海にダイブしている様子。
タナトス様はというと師匠の横で何やら見ている。そして師匠の横からペンで何かを書き加えたりして頷いている。何か阿吽の呼吸で通じる物があるのか!?タナトス様も博識だろうから師匠の考えについていけているんだろうなぁ。
私にはまだよくわからないけれど、そっと部屋を出て晩御飯の準備をする。今日は腕によりをかけた物を作ろう。
私はタルタルソースのために卵を茹でる。その間に肉をひたすら包丁で叩きミンチにする。しっかりと下味を付けて火を通してから冷ます。同様に玉ねぎにも火を通し冷ましておく。同時進行でジャガイモを茹でて熱い間に皮むきをし、潰す。
私が持つ昔の洋食屋さんのイメージってクリームコロッケなのよね。オシャレな白い皿には付け合わせの人参のソテーやキャベツの千切りが乗っていたような。コンソメスープもあった記憶。
今思えばザ・日本って感じよね。
過去の記憶を思い出しながらパンを捏ねていく。今日も柔らかいパン。私が亡くなる前のパンはオシャレなパンが増えていたわ。硬いパンも多くなっていた気がする。
個人的には硬いパンでサンドイッチ作ると噛みちぎった勢いで中身が出ちゃうから苦手なんだよね。それに手に力が入るせいかパンに指の痕が付く。
手で食べている上に中身を出すなんて貴族としてはあるまじき行為なのよね。平民になった今は気にせず食べてるけどね!
後は玉ねぎと肉を併せて塩コショウで味付けをしてコロッケの形にしていく。硬いパンをすり下ろしパン粉にしてコロッケに衣を着せて準備しておく。ジャガイモ料理って地味に手間なのよ?
玉ねぎと卵を細みじん切りにしてマヨネーズと酢を入れてタルタルソースを作る。
さて、晩御飯の準備は出来た。そろそろでんぷんも欲しいし、芋もちを作るかな。あー偶にはポテトチップスにしようかな。殆どデンプンは取れないんだけどね。
私は薄くスライスしたジャガイモを水に浸して水気を取って揚げていく。風魔法で塩を振り、師匠の部屋に持っていく。
「師匠、タナトス様。おやつが出来たよ。ぶどうジュースしかないけど」
「ファルマ、これは?」
「ジャガイモを油で揚げたおやつだよ。まぁ食べてみて?」
不思議そうにポテトチップスに手を伸ばしてパリパリと食べ始める師匠達。美味しかったようで手は止まらない。
「美味しいでしょう?そこにあるだけしかないけど、今度また作るね」
そして晩御飯の時はコロッケを揚げ、アツアツを食卓に出した。うん。コショウがしっかりとアクセントになっていてとっても美味しい。贅沢を言うなら私はタルタルソースより中濃ソースが欲しい。
タナトス様もコロッケを喜んでくれている。やはり二人ともワインが好きなのね。そういえばビールってあるのかな?まだ無いのかな?その辺はよくわからない。
まだお酒を飲む年頃ではないんだよね。無ければそのうち作ろう。そのうち、ね?
翌日の昼前にはなんと、タナトス様を騎士達が迎えに来た。結構飛ばして来たんじゃないだろうか。第一騎士団長さんがプリプリと怒っている。タナトス様は『なんじゃ、もう来たのか。残念』とがっかりしていたわ。
まぁ、みんなに黙って来るのはだめよね。お城のみんなが心配しちゃう。そして騎士達がワラワラと村に来たもんだから村も騒然としているわ。
「タナトス様、楽しかったよ。また遊びに来てね。それと、これはお土産。私が作った昼食とおやつ。お昼に馬車で食べてね」
そう言って紙袋を渡した。中にはサンドイッチと瓶に入ったポテチを入れてある。
「ファルマ、有難う。またすぐ来るぞ。ホルムス、儂は嬉しかった。また来る」
「・・・あぁ。親父殿」
ボソっと呟いた言葉にタナトス様は感激したのか顔を真っ赤にしているわ。
騎士達は師匠に礼をしてタナトス様を馬車に乗せて出発していった。タナトス様にとって良い休暇となっているといいな。
ちょっぴり寂しいなと思ったのも束の間。その後、ちょくちょく数日の休みを利用して飛んでくるようになったのは言うまでもなかった。
師匠、ヨカッタネ。
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