第38話
それから私は師匠が帰ってくるまでの間、ひたすら釣り続けた。入れ食いとはいかなくてもすぐに釣れたので楽しかったわ。腕が疲れてパンパンになったけどね。
大きな鮭サイズの山女魚っぽい魚とトラウトサーモンっぽい魚、イワナっぽい魚、あと全然分からない甲羅で武装したような魚を全部で30匹程釣れたの。
大漁旗を掲げたいわ。
結局師匠は夕方になるまで帰ってこなかったのよね。リュックがパンパンになるほどの処理した薬草を持って帰ってきたと思ったらお腹が減ったので帰ろうって。
もちろん釣った魚は籠に入れて店に竿を返しにいった。おじさんが甲羅の魚を見てちょっと驚いた顔をしていた。
「お嬢ちゃん、この魔魚を店で買い取ってもいいかい?」
「この魚、魔魚っていうの?美味しいの?」
「いや、美味くはないぞ。食べると腹を下す。魔魚の甲羅や硬い鱗が欲しいんだ。いい防具になるんだぞ」
食べれないなら私は要らないかなぁ。
「師匠、どうしよう?」
「いいですよ。薬になる魚でもないので買い取ってもらえると助かりますね」
「おお、そうか。有難い。それと、その籠の中の魚をどうするか?このまま持って帰るか加工するか」
「どうしようかなぁ。おじさん、半分を開きにして、残りを3枚におろして欲しいんだけどいいかな?」
「おお、いいぞ。この魚達は燻製にすると酒のつまみにもってこいだ」
自分でも出来るけど、やっぱり専門家の方が上手だし手早く処理してくれるので任せるに限る。魚も大きいしね。魚をどうやって食べようかなぁ。
今日食べる分にはやっぱりムニエルがいいよね。後は干して乾燥させる分と魚のだし用、あぁ、燻製も捨てがたいわ。燻製にした後、炙って食べるのも美味しいよね。
私はうっとりと魚を眺めながら食べ物の事を考えていると、おじさんは台の上に魚を乗せスキルを使った。【開き】するとものの1分にも満たない間に開かれた魚が出来上がった。
なんて凄いの。ちょっと感動だわ。
【三枚おろし】どんどん魚が処理されていく。目が離せないわ、感動しちゃう。
ちょっと欲しいスキルよね。
「お嬢ちゃん、骨取りもしておくかい?」
「是非、お願いします。骨は持ち帰るので捨てないで」
「分かった」
そうしてあっさりと全ての魚の処理が済んでしまった。
「おじさん凄いね。そのスキルは魚の調理だけなの?」
「この湖には魚を捕りにくる魔物も多いんだが、その魔物にも使えて便利なスキルだな」
なんて凄いスキルなんだろう。
きっと【鱗取り】やら【皮剥ぎ】やらのスキルがあるに違いない。ビッグホーンをスキルで骨を取れば余すところなく肉が使えていいわよね。毛皮だって傷を付けずに綺麗に取れそうだし凄いわ。
「おじさんってとっても素敵なのね!」
私は目を輝かせておじさんにそう言った。
「おぉ、お嬢ちゃん良いこと言ってくれるね。嫁に貰ってやるからいつでもこの店に来な!」
「・・・ファルマ。貴女のその目の輝きはスキルがどれだけ料理に使えるかって事の興奮なのでしょうね」
「うん。そうだけど、師匠は違うの?」
「がははは。お嬢ちゃんは可愛いな。いつでも店に来な。またスキルを見せてやるからな」
「おじさん、有難う」
そして私は加工済みの魚と骨を貰い、師匠と共に店を出た。
「ファルマ、遅くなった。急いで帰りますよ」
「はい。師匠」
私は師匠にぴたりと張り付くと師匠は魔法で体を浮かせて風に飛ばされるように移動した。今回は山道と違って平坦な道なので怖くは無かったわ。
日中であれば馬車が通る道だけれど、流石に夕方はみんな安全を考慮して村や街に戻っているので道すがら出会う馬車も人も居なかった。
帰りは30分コース。出来れば行きも楽ちんにしてもらいたいなぁ。
そして家にたどり着いた。なんだかんだで疲れた。
私はささっと魚をムニエルにして焼いてタルタルソースを上からかけた。レモンが欲しいところだけど生憎レモンはないんだよね。私は魚を焼いている傍で今日釣った残りの魚をお酒に漬けたり、塩漬けにしたりして下処理をしていく。
骨の処理は明日でいいかな。明日食べる分は冷蔵庫に入れておく。明日はフリッターにでもしてパンに挟むとしよう。
そして翌日も私は捕った魚を調理していき、師匠は薬草を処理していった。
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