第35話

 そうして美味しい休憩時間を取った後、また魔法について3人は談義をしている。


「ファルマはこの他の魔法についても何か違いそうだ」


師匠がそう言うと2人とも私をじっと見つめてくる。何を期待しているんだか。


「師匠、私の生活魔法は殆ど基本的な物だって知っているでしょう?例えば火魔法だってこうやって火を指先から出すだけだし、勢いを出してもこれくらいだよ」


私は指先からローソクのような火を出してそのままガスバーナーのような火に切り替える。


「それにイメージを付けても小さいから何にも使えないんだよ?」


私はそのまま火の鳥の形を作るが、火が形を作ると途端に小指の先程の小さな火の鳥にしかならない。でも、形を作れるようになるまで訓練をしていたのは内緒だ。


だって悔しいよね!?折角魔法があるのに使えないって。


何故か団長さんもザロさんも師匠も驚いている。むしろ驚愕の表情だ。何故だ!?


「ファルマ、一応聞きますが、それはなんという魔法なのですか?」


「え?師匠。無唱詠だけど【ファイア】だよ」


「「「・・・」」」


3人とも沈黙してしまった。


「師匠?何か変なの?」


私はよくわからないのでちゃんと聞くことにした。変人扱いされても困るしね。


「ファルマ、私達が思う【ファイア】は火の玉なんだよ。間違っても火の鳥は出せない。そういう時は【ファイアフェニックス】を使うんだ。だけどこれは上級魔法なのでファルマは使えないはずなのですが変だね?」


「師匠、それって魔法のイメージがあればある程度使えるんじゃない?もしかして私は学校も行かず、独学でしたからかもしれない?」


 そして前世でのアニメの影響を多大に受けているはず。まぁ、私は生活魔法なのでイメージで色々な魔法を使えたとしても威力はほぼない。火の鳥でさえ小指の先ほどしか大きさもないし、ふわふわと師匠の目の前まで飛んでシュンと消える程度だ。


もしかしたら学校では【ファイア】とはこういう物です的な感じでイメージを植え付けられているのかもしれない。まぁ、その方が道は一つしかないわけだから簡単に覚えられるし使いやすい。私もまた勉強になったわ。


こんな所で異世界人罠が発動するとは。


 まぁ、これでザロさんの治癒の方法もバリエーションが出来て良かったんじゃないかな。そしてまた団長さん達は魔法談義に花が咲いている様子。




 私にはよくわからないので静かに部屋を出て晩御飯の準備に取り掛かる。今日はどうしようかなと考えたけれど、鳥肉があるのでてりやきチキンにしてみようと思う。


鶏肉はこの森でよく狩られているので自然と鶏肉料理が多くなるのは仕方がないわ。もちろん鳥ガラも同時進行でスープにしていく。


欲を言えばもっと片栗粉が欲しい。自分で作るのが面倒で仕方がない。


 前世ではいつも買っていたし、小学校の時の理科の実験でしかジャガイモでんぷんの作り方を知らないのでかなり非効率なんだとは思っている。でんぷんを作る日のおやつは芋もち確定。師匠は喜んで食べてくれているけどね。むしろ芋もちを要求してくる。


美味しいよね芋もち。塩気とチーズの相性がまたたまらない。


そんな事を思いつつキッチンに立って料理を仕上げていく。


「師匠~!ご飯が出来たよ!団長さんもザロさんも食べていくよね?」


私は師匠達に声を掛けると即座に師匠は答える。


「フェルナンドとザロは帰るようなので夕ご飯は要らないそうです」


「いや、私、フェルナンドはもちろん頂いていく!!」


「団長がそう言うなら私も食べてから帰ります」


やはりみんな食べるのね。多めに用意していて良かった。


 今回はしっかりと個別の皿に取り分けている。3人とも席に着くとお祈りをしてから食べ始める。今日は照り焼きチキンとサラダとチキンスープとパンを用意した。もちろんパンは切って照り焼きチキンサンドにしても美味しいと思う。


見ているとみんな食べ方が上品だわ。きっとザロさんもお貴族様なのね。私は1人でサンドにしてパンを頬張っている。


「ファルマさん、この鶏肉美味しいですね。甘じょっぱい感じのタレがなんとも言えず食欲をそそります。それにこのパン。とっても美味しいですよ!


巡回騎士団で食べられてるパンはもっと硬くて歯が疲れる仕様ですね。団長、食事の時に居なくなると思っていたらこっそり美味しい食事を黙って1人で食べに来ていたなんてずるいですね」


「私はわざと黙っていた訳ではない。ただ聞かれなかっただけだ」


ザロさんはずるいと言いながら晩御飯を食べている。


「ファルマ、1つ聞きたいのだが、あの無数の蜘蛛を集めるのにスキルを使ったのか?」


私は言っていいのか迷っていると、師匠が代わりに答えてくれた。


「フェルナンド、ザロ。この話は漏らさぬように」


すると先ほどの和やかな雰囲気が一気に引き締まった。やはりスキルの話はあまりしない方がいいのだろうか。


「ファルマは王都に住んでいた貴族です。そしてスキルは蟲使い。巡回騎士団にとっては有益なスキルでしょう。しかし私の傍に置いている理由はそのスキルや魔法が生活魔法だった事により王都に近づくだけで親に殺される可能性があるためです。勿論の事ですが他言しないように」


「承知致しました。ファルマは貴族のご令嬢だったのか。私も貴族で舞踏会等参加をしているがファルマと会った事がないな」


「うん。私はスキル判明してから邸に病気療養という名の監禁をされていて今は死亡届も出していると思う」


「・・・闇が深そうだな」


フェルナンド団長さんもザロさんもそれ以上私の事を聞く事はなかった。

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