第8話 父アーダムside


 まさかファルマが蟲使いだったとは。


前代未聞だ。由緒正しいヘルクヴィスト家は代々精霊使いかそれに準ずるようなスキルが生まれている。そうなるように代々政略結婚してきたからだ。地を這う虫を使役するなど魔女のようではないか。


我が家から魔女が生まれたとなれば醜聞以外の何物でもない。幸い娘はあと2人いる。ファルマより出来が悪いが姉のシーラが我が家の跡を継げるだろう。ファルマは家族や仕える者たちとの接触を禁止したが黙って受け入れたようだ。もっと反抗すると思ったのだがな。セバスチャンは


「エイラ様がファルマ様の日当たりの良い部屋が欲しいと言っておりますし、旦那様方の視界にお嬢様が入るのは目ざわりでしょうから、ファルマ様の部屋を1階の使用人部屋へと移動させたほうが良いと思います」


と助言してきた。セバスチャンの言う事はもっともだな。すぐにファルマを移動させた。


それと同時にこの家でファルマの名前を出してはいけない、ファルマに誰も話しかけてはいけないと家族を含め、使用人達に触れを出した。


いい気分だ。


魔女に関わるとろくなことがないと聞いたことがある。麗しい精霊使いの我が家には不幸は必要ない。ファルマを毒で徐々に弱らせて放置していれば良いだろう。


私が直接命令を下さなくても後はセバスチャンがいい様にする。私や家族達はそうしているうちにすっかりファルマという存在を忘れていった。

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