第13話 渡辺の場合

きりーつ


きをつけー


れーい



6限が終わって帰宅。

今日は朝から上田が教室を破壊して、掃除も大変だった。

何よりあの現実離れした状況を渡辺は未だに飲み込めていなかった。


「あの、すみません」


!?

なんだこの子…1年生?

普通に考えて可愛すぎるだろ!


「ど、どうも。どうかしました?」


「1年の美川芹菜っていいます。上田先輩とお友達の人を探してて…」


「上田?おれ普通に話すけど…上田は早退したからいないよ」


「知ってます、教室を壊したのが隕石じゃなくて先輩だってことも」


「え!?だ、誰に聞いたの」


「高橋先輩」


「高橋か…言っちゃダメなのに。あいつちょっと態度悪いんだ。広めちゃダメだよ」


「わかってます。というか私、上田先輩が2階から飛び降りるとこ見ちゃって。それをたまたま高橋さんに話したって感じです」


「あーなるほど、目撃者もいるよね。普通に考えて」


噂話がもう広まってるのかと思ったけど、さすがに海崎くんの人望か。

彼が決めたことは大抵クラスのみんな守るもんな。


というかこんな可愛い1年生と話せてめっちゃ嬉しい。ずっと話してたい。


「上田先輩って何者なんですか?」


「いや、本当に普通の子だよ。口数少なくて、真面目で。あとスマブラが好きってくらい。おれ卓球部で一緒なんだけど、それくらいだもん」


「…?じゃあ教室が壊れたのって」


「おれたちもわかんないんだよ。上田さ、高橋に結構陰湿な嫌がらせされてたんだけど、それに堪忍袋の緒が切れたって感じではあった。クラスのみんなも上田か高橋だったら高橋の方が好きだからさ、見て見ぬふりしてたんだよね」


「それで怒って…いつもより力が出たってことですか?」


「流れで言うと…そうなるんだけどね。ありえないよね普通に考えて」


今思い出してもありえないことだ、教室壊しただけじゃなくて石持って1階と2階の間ぴょんぴょん跳んでたもんな…


「そうだ、上田の家知ってるからちょっと聞きに行ってみる?お見舞いって形で」


「え!いいんですか!?」


ラッキー!

普通に考えてこんな可愛い子と2人で歩けるチャンスなんてもう二度とないぞ。

途中でコンビニ寄ってアイス買ったりしよう。

…ん?


「あー!俺今日バイトじゃん!」


「え…」


「ごめんごめん、明日でいい?明日行こう」


「ん…私モヤモヤしたらずっと落ち着かないタイプで。おうち教えてくれません?ダメ元で行ってみます」


「ええ〜〜!明日でよかったら俺も一緒に行くよ?」


「どうしても気になって…ダメですか?」


「んん〜〜」


やばいやばい繋がり消える、なんか考えろ俺!俺!


「わかった!じゃあ家の場所マップで送るからLINE教えて」


「やった!!ありがとうございます!」



おれほんと天才!!





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