第15話急展開

再び沙樹が目を赤く光らせ、地面を爆発させる。しかしララは癒しの力で瞬時に盾を作り、二人を守った。爆風が盾にぶつかり、火花が散る中、ルリはその隙をついて本能の力を少し解放し、爪を伸ばして沙樹に攻撃を仕掛ける。


しかし、沙樹はその攻撃を軽々とかわし、動きが鈍い。彼女の剣さばきも以前のような鋭さがなく、ルリは疑問を感じた。「なんか…沙樹、前より弱くなってない?」と呟くと、試しに爪で衝撃波を放った。沙樹は防御せず、もろにダメージを受けたように見えた。


「防御力が落ちてるし、動きも鈍い…今回は楽勝かも」と油断した瞬間、沙樹の体が赤く光り始めた。足元から不気味な熱気が立ち上り、地面が震え出す。彼女の姿が炎のように揺らめき、攻撃力とスピードが一気に増していく。


「えっ…強くなってる…!?」ルリが焦りを感じた瞬間、沙樹は再び目を光らせ、地面を次々と爆発させた。ララは必死にシールドで防ぐが、衝撃波が何度も襲いかかり、二人は追い詰められていく。


「もう撤退した方がいいかも…」ルリが決断を下したが、ララは「でも…」と躊躇している。沙樹の剣をかろうじて避けたララは、反撃の機会をうかがっていたが、その瞬間、背後から冷たい感覚が走った。


「え…?」振り返ると、別の剣がララの体を貫いていた。彼女の視界が暗くなっていく中、痛みが全身を襲った。ララはその場に崩れ落ち、震える手で癒しの力を使おうとしたが、なぜか力が出ない。「どうして…?回復できないよ…」焦燥感が胸を締め付け、額には冷や汗が滲む。力を振り絞ろうとするが、その度に身体が言うことを聞かない。ララの目には混乱と恐怖が浮かび、手元のルリを見るが、その姿もぼんやりとしていた。


「ララ〜!」ルリの叫び声が聞こえ、本能の力を解放した彼女は、怒りに突き動かされながら沙樹に突撃する。しかし、驚くほど全ての攻撃が空を切り、逆に沙樹の剣が鋭くルリの心臓を貫いた。


「ルリさん…?」その瞬間、世界が止まったかのように感じた。ララは目の前で血を流すルリを見つめ、頭が真っ白になる。地面に倒れ込んだルリは血にまみれ、二人とももう動けない状況に追い込まれていた。


ララの心に絶望が満ちていく。「もう終わった…」そう思った時、背筋が凍るほど冷たい風が吹き、運命の女神がゆっくりと姿を現した。冷たい微笑みを浮かべながら、二人をじっと見下ろす。言葉を発する前のその一瞬が、永遠のように感じられた。


「もう消えなさい…」彼女の声は低く、重い威圧感がララの体に圧し掛かる。女神の冷たい目がララたちに刺さり、容赦のない運命を告げていた。


沙樹は目を赤く光らせ、最後の抵抗として爆発を起こす。だが、運命の女神は表情一つ変えず、軽く手を振ってその爆発を無力化する。「無駄だって言ってるでしょ?これ以上私を怒らせないで」と冷たく言い放つ。そして手をかざすと、同じ技で沙樹を包み込み、凄まじい爆発が起こる。沙樹はその圧倒的な力に吹き飛ばされ、大ダメージを負い、撤退を余儀なくされる。「いつもなら追いかけて倒すけど、今日は見逃してあげる〜」


運命の女神は弱り果てたララたちに歩み寄り、肩で息をする彼女たちを冷たく見下す。「私の言うことを聞かないから罰が降ったわね。二人とも…助けてくれると思ってた?」と、ニヤリと笑い、「残念だけど、その気はないわよ」と冷酷に言い放つ。


「せっかく力をつけても、神の力が相手だと無様なものね〜」とあざ笑うように、いつもより冷たく淡々と話す。絶望に満ちたララたちを見ながら、彼女の言葉は凍るように冷たく響く。


すると突然、空間が歪み、冷たい空気が漂い始める。そして、そこに時の女神が姿を現した。「今までかくれんぼしてたのが、どういうつもり?」と言いながら、運命の女神に鋭い視線を向ける。ララたちの体は光に包まれ、時の女神は「もう少しだけ耐えてて…」と優しい声をかける。


運命の女神は苛立ちを隠せない。「勝手なことしないでくれる?死ぬ運命なんだよ」と笑顔を保ちながらも、どこか刺々しい言い方だった。


「生かしたから殺しても良いって?」と時の女神は鋭く反論し、運命の女神の表情はさらに険しくなる。「姿も見せずに偉そうなことを言うの?イライラさせないで」と吐き捨てるように言うと、空からは静かに雪が降り始め、辺りは凍てつくような冷たい雰囲気に包まれる。


「あら〜?何が駄目なの〜?評判は良いのよ?」と運命の女神は挑発的に笑うが、時の女神は冷ややかに返す。「お前と関わると、死が近づくからな」と鋭い皮肉で返した。「いちいちイラつかせてくれるわね…お前もイライラしてるんじゃない?」と運命の女神は冷たい笑みを浮かべ、苛立ちを隠しきれない様子だった。時の女神はその余裕を見透かしながら、「さすがに運命の女神を抑えないとね」と言い、時の力で運命を封じようと試みる。しかし、運命の女神は素早くその力を避けると、前方に強烈な光を放った。


「待ってました!」時の女神はその瞬間を見計らい、光の流れを巻き戻し、速度を10倍にして返す。光の反撃を受けた運命の女神は一瞬驚いたものの、顔をしかめ、苛立ちを隠せない。「この…!」腹立たしそうに雷を無差別に地上へと落とし始めた。雷が地面を砕き、空を裂くように次々と降り注ぐが、時の女神は時の流れをゆっくりにして避ける。


「このままでは街が滅びる…」時の女神は状況の悪化を察し、周囲を見回した。運命の女神の攻撃は激しさを増し、電光が一面を覆っていた。彼女はルリとララを抱え、「ここから逃げないと…」と決意を固める。必死に光と雷の猛攻を避けながら、二人を連れて時空の裂け目に入ろうとするが、運命の女神は執拗に追いかけてくる。


「逃げ切れると思ってる?」運命の女神は時空の裂け目にまで追いつき、無理矢理こじ開けて攻撃を放ち続ける。彼女の光の力が凄まじい威力で次々と空間を砕き、時空さえも揺さぶる。「あいつ、本当に頭に血が昇ってるな…」時の女神は冷静に状況を分析しながらも、緊迫した展開に焦りを隠せない。


しかし、その猛攻の中、運命の女神の光によってルリとララは時空の外に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。二人はその衝撃で意識を取り戻し、周囲の異変に気づく。「何が起きてるの?」ララは自分の力が戻ったことを感じ、急いでルリを回復させる。「今は逃げるしかない…」そう言って二人は急いで街の外へ逃げようとするが、突如、道が光で消え去る。


「え…?」振り返ると、そこには激怒した運命の女神が浮かび上がっていた。「お前たちはしぶといね…」冷たい声が響き渡り、運命の女神が再び光と雷を撃ち放つ。二人は避けることができないと悟った瞬間、空間が歪み、周りの時間がゆっくりと流れ出した。攻撃がスローになり、二人はなんとかその場を離れることができた。


「大丈夫?」と優しい声が響き、振り返ると見知らぬ女性が立っていた。「私は時の女神。ごめんね、戦いに巻き込んじゃって…」彼女は申し訳なさそうに言うが、続けて「でも、どこに逃げても無駄かもしれないわ」と弱々しく呟く。


「ここに飛び込むのは駄目ですかね?」ララがすかさず提案すると、ルリが反射的に「何考えてるのよ!」とツッコんだ。運命の女神はその様子を見て不敵な笑みを浮かべ、「もう…まとめて消えなさい」と言い、両手に光を集めて3人に狙いを定めた。


その瞬間、空間が再び揺れ、周囲が異様な静けさに包まれる。暗闇の中から静かに現れたのは、無の女神だった。「もう、やめましょう。このままでは世界が滅びてしまう…」無の女神の声は静かだが、どこか威圧感があった。


「今日は奇妙な日ね…普段姿を見せないはずの女神たちが次々と現れるなんて」と運命の女神は苛立ちを隠せない。


「それはあんたの暴走を止めるためよ」と無の女神は冷ややかに返し、彼女の視線は鋭く運命の女神に注がれる。「このままじゃ、全てが消えてしまうわ」と静かに告げる。

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