第5話猫達の出会い

2人は間一髪のところでぶつからずに済んだが、ルリは驚きのあまりしゃがみ込み、片膝を上げて右手をナイフにかけ、状況を把握しようとしていた。一方のララも着地に失敗して尻餅をついていた。


「痛った〜い! まさか人がいるなんて思わなかったにゃ……」

お尻をさすりながら、つい猫語が出るほど動揺しているララ。恐る恐る声をかけた。

「あの〜、大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」


それを聞いたルリはイライラしながら文句を言った。

「あんたさぁ〜、急に空から降ってくるってどういうつもり? もしかしてあたしに奇襲仕掛けてきたの?」「飛んだのは知ってるけど……何階から飛んだの?」

ルリは疑問を投げかける。

「えーと、確かあそこの手すりです。」

ララは3階の方を指差す。

「3階〜? いや、飛べなくもないけど、よし飛ぼうってなる高さじゃないよね。普通はちょっと躊躇するでしょ?」

ルリは驚きを隠せない。


「いいえ! 楽しそうと思って、ルンルンでジャンプしました!」

ララは満面の笑顔で答えた。


戦闘体制に入るのも馬鹿らしいほどの無邪気な笑顔に、ルリは彼女の話を信じることにした。

「……なんか頭おかしそうだし、さっさと立ち去ろう。」

心の中でそう思いながらも、どこか引っかかるものがあった。

「いや……あの顔、どこかで見たような……? というか、あの緑色の目……どこだったかな?」


その時、ララが急に言い出す。

「あの〜、急にこんなこと言うのもおかしいですけど、私たち、おんなじですね!」

ララは満面の笑顔で言う。


「はぁ? どこが同じなの?」

ルリは苛立ったように聞き返す。


「えー! 気づきませんか?」

ララはキラキラした目で尻尾をふりふりしながら、

「耳と尻尾がおんなじじゃないですか〜!!」

と嬉しそうに言う。


ルリはいつでも戦えるよう、戦闘体制に移行しようとした。

「ごめんなさい! 降り方がわからなかったんです!」

ララは焦って答える。


その姿に、ルリはちょっと呆れた感じで返す。

「へ? 降りれなかったってどういうこと? あのマンションならエレベーターとか階段もあると思うんだけど?」

「え? エレ何ですか?」


ララは困惑した様子で言った。

「とりあえずドアも開かないし、下を見たら飛べそうだったから……みんなも飛んでるのかなって思って飛びました。」「え?」

ルリはまじまじとララを見つめると、確かに猫耳と尻尾がついているのが見えた。色やもふもふ感は違うが、明らかにペアルックのように見える。

「確かに一緒だけど、あなたとは多分違うわ。だって、あたしは本物ですから!」

ちょっと誇らしげにポーズを決めるルリ。


「え? 私もそうですよ! 生まれた時から付いてましたから!」

ララは自信満々に言う。

「アクセサリーじゃないの?」

ルリはララに近づき、耳を思いっきり引っ張った。

「え? 痛い痛い痛い! 急になんで引っ張るんですか!? ちょっとひどいです!」

涙目になり、少し睨みながら耳をさするララ。


「いや、ごめんね。そうやって嘘つく人が多いから、つい引っ張っちゃった。」

ルリは少し申し訳なさそうに答えた。が、それと同時に目がキリッとなる。

「ってことは……元猫ってこと?今まであたし以外に見たことないけど、いたんだね、他にも。」


それを聞いたララは目を輝かせ、

「私もビックリしました! でも、一緒の人がいて良かったです。実は、私も人間になったばっかりで何もわからないし、外に閉め出されるし……でも良かったです、私とおんなじ猫がいて!」

と、嬉しそうに話し続けた。


「いや、あたしは閉め出されたわけじゃないし、昨日今日でもないのよ。あんたと一緒にしないで!」

ルリはさっきよりもキツく睨みながら言った。「じゃあもう、長いんですね。」

ララは嬉しそうに言い、少しもじもじしながら尋ねた。

「あの〜、良かったら道案内とかお願いしてもいいですか?」


すると、ルリはあっさりと答えた。

「悪いけど、今仕事でトラブっちゃって、これから現場に行こうと思ってたのよ。」

ため息をつきながら伝えた。


「そうですよね〜、急すぎましたよね。すみません……じゃあ、1人で歩いてみます。」

ララはそう言うと、軽く2Mほどの塀の上に飛び乗り、街の方へ歩き始めた。


「いやいや、ちょっと待って! 普通の人間はそんな所を歩かないの!」

ルリは慌てて注意する。


「え〜? 高いところの方が行きたくないですか?」

ララはキョトンとした顔で答える。


「あたしも夜とかは高いところに行くけど、さすがに昼間はやらないの。」

ルリは少し嗜めるように言った。


その時、ルリの携帯がブルっと震えた。

「ちょっとごめんね。」

そう言って携帯を確認すると、依頼主からの連絡があった。

『今は状況が見えないので、後日改めて確認しましょう』

「ふーん、状況が見えない? 確認できてないだけか……じゃあ、あたしがわざわざ出向く必要もないか。」


ルリは携帯をしまい、ララに向き直った。

「あー、予定キャンセルになったから、一緒に行こうか?」


一瞬キョトンとしたララだったが、すぐに笑顔になり、

「え? いいんですか!」

と嬉しそうに言った。


「じゃあ、登って来てください! 一緒に歩きましょう!」

ララは塀の上でクルクルと回りながら言う。


「いや、登らないし。この格好でそんな所登ったら、どうなるか分かるでしょ?」

ルリは少し呆れた表情で返した。

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