第一忍務前編:忍びたる者、他国のスパイに負けるべからず
忍びとは命に従い、静かに手早く執行し、泡沫の夢の如く証を消す者、それこそが忍者だ。親父がいつも言っていたことだ。
だが、今、中学三年生の俺、服部炎慈、以下略はどうやら、跡をつけられている。
スーツ姿の
明らかに不審者だが、目先に囚われた民衆たちには俺以外誰も見ようとしなかった。
理由は分かる。俺やあの芋侍とその愉快な仲間達が城南の不良集団をしばき倒した【城南中皆殺し事件】が新聞に載られ、しかも、俺の顔が紙面の写真に写し
秘密主義の忍びが顔を晒されるなんて、風上にも置けねえ。なんて、後悔してもしょうがねえから、心機一転しよう。
と思った俺は人混みを曲がり進みながら掻い潜り、背後から出る気配を遮断してその民衆たちの中へ溶け込んだ。
怪しい奴は俺の急な速さに驚くも、跡を追うかのように歩幅と速さを上げる。
だが、その度に人波に何度かぶつかり、スムーズに動けない為、すぐに見失ってしまう。
俺はすぐさま路地裏に隠れ、やり過ごしている内に怪しい奴は去っていた。
忍びを舐めんなよ、と余裕に浸っていたが、親父がいつも言っていることを思い出す。
(炎慈よ、忍びと同じ
「誰かが似たようなことを言ったな、"深淵を覗く時、深淵もこちらを覗いている"って…、まぁ、分かんねぇからいっか。」
そう楽観し、俺は路地裏から出て、
しかし、その途端、俺の首筋が痺れ出し、口元と出鼻に眠気を誘う匂いで呼吸を塞がれた。
見れば、
全く一つでも良いのに、忍び相手に二つ得物を使われるとはな。
ということはさっきの怪しい奴はこの二人の前に誘い出す為の囮だったか、道理で不自然に気付くほど怪し過ぎた訳か。
しくじったな。また、親父から叱言を言われそうだ、と俺は思いながら深い眠りに堕ちた。
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