異界史忍者大戦

@kandoukei

第0話:忍びたる者、初心忘れべからず。

 いきなりだが、俺は服部半蔵炎慈。赤髪と赤眼を持ち、日ノ本の何処にでも居る普通の忍びだ。

 訂正、普通の忍びじゃねぇ。御庭番衆を率いる忍びの息子だ。そう、俺には御庭番衆を引き継ぐ重要な役目と輝かしい出世の未来が待っている。

「お前って将来どうするんだ?」

「将来もどうも、忍び一択に決まってるだろ?」

「嗚呼、いやさ…どういう忍びになるか、目指しているかって、ことだけどだ。」

 はずが、不意に問い掛けられた時に気づいてしまった。敷かれた在りレールの上に歩かされていることに。

 ああ、本当、これだから侍は、感情論でしか物事を見ない猪武者め。

「まぁ、俺はまぁ、そうだな。侍よりも強い忍び、いや、地球最強の忍びになることを目指してやるぜ。そういう言い出しっぺのお前は? まさか、俺より何も考えてない訳じゃねぇよな?」

 出任せを言った自分が悟られねぇよう、言い返した。

「お前と同じ地球最強の侍にはなりたい。だが、俺の一番にすべき事は兄、大和津流義つるぎを超えることと夢で見たあの一振りに近づくことだな。」

「飽きるほど聞いたぜ。兄好き《ブラコン》も…夢自慢も!」

 俺は話を聞きながら、ある方向に苦無を投げ打った。そこにあるゴミ箱を穿ち、後ろにいた曲者、というか隠れて機を伺った不良が恐怖の余りに逃げた。

 今、俺たちがいるのは城南中学校の屋上で、夕焼けが差し、辺りで躯の山、まぁ、生きているだろう。軽い呻きや悶えが聞こえる内はな。

「たくよ、城南のエリートならず者どもめ。喧嘩を振ってきたのに。まだ、試してもない忍術もあるのによ。練習相手は当分の親父の方だな。」

「すまねぇな、俺の喧嘩に巻き込んで。」

「何が巻き込んで、だぁ。突っかかって来たのは品川んとこの名家の跡取りの出涸らしだろ。あそこに伸びてる。」

 俺は手裏剣を持ちながら、気絶しているはずの坊主頭を指差そうとしたが、奴がいないことに気付く。

「なっ、あいつ!? 逃げやがったのか!?」

「親に言いつけに行ったんじゃねぇか。たく、片やあいつは華族の末裔、片やこいつは総理の御子息兼朝廷護家の正統血縁者、おまけに俺は日ノ本最大の諜報機関の長の息子、陰陽師や新撰組の子孫も全員揃って喧嘩に明け暮れるなんてな。」

「そんな事言ってる場合じゃないだろ。万が一、お前がこの責任で進路にひびが入ったら…」

「安心しな。親父に今回のことを伝えたからよ。まぁ、お前の護衛である俺の不手際くらい、自分で拭うからよ。」

 その後、俺たちが仕出かしたことは後の大事件として語られ、その蛮勇は日ノ本中に広まった。

 その為、親や上司のこっ酷く叱られたが、あの芋侍が言うようなひびは入らなかった。まぁ、親父からは"精進が足りない"と言われたけどな。


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