第3話

「まだ若く幼い女子おなごを一人で雪山に放り出すとは、氷千人ひょうせんじんはどこまでも冷たいのだな」


白金山は既にドール帝国軍の手に落ち、王座の間では ドール三将軍の一人、"飛人ヒビト"がイムと対峙する。


「まぁいい。貴様は… 少し賢い氷千人のようだ。"土紀ドキ"の奴には捕虜は要らんと言われたが… 猿一匹ぐらい手土産に持って帰ってやろうか。」

"飛人"が言うと、兵士がイムを捕らえる。

イムは大人しくその場に跪く。


「物分かりのいい猿だな。気に入ったぞ」



~中央帝国 宮廷~


中央帝国は ドール帝国と休戦状態にある。

ここ数年、平和が保たれていた土地であった


「陛下!!! ドール帝国が 白金城を陥落したとの知らせが入りました!」

週例会議の最中、薄い甲冑をきた兵士が報告する。


「ドール帝国… 早いな。」

テーブルの奥、王の席に座る男が話し始める。

「この平和も、もう間もなく終わりのようだ。」


すると、王のそばに座る 老人が言う

「ドール帝国もそう簡単には攻めてこれん。彼らは戦に強い、だからこそ我が国の戦力を見誤りなどしないはずじゃ」

彼は様々な戦を経験してきた猛者の風貌を持ち、その場にいる皆、王までもが彼の話に耳を傾ける。

「わしが予測するに… ドール帝国が進軍を開始するまで、あとひと月。」

彼は落ち着いて語る。

"ひと月"という言葉に安堵する者もいれば、今まで経験のなかった戦を前に 恐怖を隠せない者もいる。


見かねた王が立ち上がり言う

「我が臣下諸君よ! 我々はいつからドール帝国ごときに怯える種族となったのだ!? この大陸を支配するのが誰か、川の虫共に教えてやろうではないか!!!」

王の覇気ある言葉に 士気が上がる。

中央帝国の若き王でありながら、長年国を治めた還暦と余裕を感じさせる立ち振る舞いが現れる。

感銘を受ける臣下の中、隣に座る老人は言う。

「まぁ落ち着け息子よ、わしらは確かに強い。だがしかしドール帝国の実力は計り知れぬ点も多いとは思わぬか? ここで一つ、かつてのように同盟を結ぶというのはどうだろうかな?」


「しかし、現状大陸に、同盟を結べる国などないはずでは…?」

少し離れたところに座る若者が応える。

大陸は、既に中央帝国とドール帝国が大半を治めており、既に国家という国家は残っていないのも事実である。

そんな中、王が気づく。

「オークランドか…」


彼の言葉に驚く人がいる中、一人の男が言う。

「オークランドの民は戦や地位などに興味のない者たちです。文献から推察するに、今までどこの組織とも同盟を結んだことのない孤立したですよ?」

他の者も続ける。

「"国"というのも怪しいものだ。彼らは領土を主張せず、山奥を拠点に世界を放浪しているだけの蛮族と言っても過言ではない。」

「そもそも彼らは 他国との交流を望まない… 唯一彼らが表向きに外国に訪れると言えば、婚姻の時のみでは…」

一人の男が言うと、一部の物が気づく。


「まさか…」

周りの者も感づき始めると、老人が話し始める。

「オークランド当主 にはまもなく20になる娘がいたはずじゃ。 オークランドの掟からして、まもなく婚姻の時期じゃろうな。」


「しかし、そんな娘と一体だれが婚約を結ぶので?」

男が聞くとすべてを理解した王が応える。

「私か。」


会議の場は衝撃で氷つく、その場に座る臣下の一人が反対意見を言う前に扉がひらき、赤髪の女が入る。

「残念だが、オークランドとの友好はもう無理だ。」

マリーがそういうと、兵士たちは捕らえた二人のオークランド人をその場に座らせる。

突然の部外者の来訪に、一人の男が言う

「誰だ! 今は重要な会議を執り行ってる最中だ! どこの馬の骨かは知らんが立ち入りは厳禁のはずだぞ!? 兵士!この女をつまみ出せ」

兵士は動かない、マリーも動じることなく答える


「君は私のことを何も知らないようだ。まぁ落ち着け 」

彼女が話し始める。

「今朝、こいつらは私を狙って店まで来た。どこの者か知らんが商人に情報を頂いたようでな。」

彼女が続ける

「つまり、オークランド人、少なくともこいつらには、王族にオーエム人が紛れ込んでるという情報がバレたということだ。」

彼女の言葉にまた驚く臣下たち。事情を知る者も知らぬ者も。

老人が話す。

「滅多に王宮を訪れない娘が 戻ったと思えば、悪いニュースばかり抱えてくるとは…」


マリーは、中央帝国王族であり、 現王ウィリアムの腹違いの姉である。

彼女の行動は、今後の中央帝国に大きな影響を及ぼすこととなる。











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