第10話 行きたい場所

 手は大丈夫だったかな?すぐに冷やしたから後にはならないと思うけど。


隣の席の夫婦がニコニコして、奥さんが、


【お嬢さん、優しい彼氏だね。あんなにすぐに手当してくれるなんて】


彼氏じゃないぞ、俺。


すかさず美優は、


【そうなんですー、優しいだけが取り柄だから。凄く気に入っています。ねっ、正人〜】


おい、何ふざけてるんだよ。


【俺、彼氏じゃあり…いて!!何?】


美優のやつ、脛蹴りやがった。


【付き合ってちょうど一年くらい?ねっ、正人。あっ、牡蠣!!】


今度は夫婦の旦那さんが、


【お嬢さん、牡蠣は何もつけずに食べてみて】


【はい。ん?んんん!!!これは、美味しい】


【私達もよくここに来るんだけど、牡蠣は最初に何もつけずに食べてます。とにかく美味しい牡蠣だから、それこそ牡蠣しか食べない日も】


そんなに、じゃ、俺も焼こうかな。



………………………………………………………



 その後、美優も結局、牛肉も食べて、満たされた俺達はスイーツタイム。隣の夫婦は先に食べ終わり出て行った。


【お腹苦しいよ、これ、すぐに運転出来ない】


【その割にはスイーツこんなに持ってきてるじゃん。なぁ、さっき何で嘘ついたの?彼氏なんて】


【そんなふうに見られたなら、それもありかな?って思って。私、童顔じゃん。正人と買い物行ってるの友達が見てたらしく彼氏だと思われてね】


【美優、嫌じゃないの?】


【嫌じゃないよ、何で?あー、正人は私みたいなのが彼女じゃ嫌なんだ…】


【違うって!!嫌じゃないよ。俺は嫌じゃないけど、なんて言うか、バランス考えるとさ、美優の方が、うーん、だから!!そういうこと】


な、なんだよ、美優?


何、覗き込んでるんだよ?


美優はニヤリと笑って、


【じゃあさ、カップルってことで、行きたいとこあるの。付き合ってよ。カップルじゃないと困るんだよね。友達から聞いてどうしても行きたかったんだ。ねっ、お願い!!】


【バレない?美優は童顔だから姉ってよりも、妹ってなるかも知れないけど】


【それでもいいの。とにかくカップルじゃないと困るの。お願い、ねっ、まーくん】


まーくん?女優だな、美優は。



………………………………………………………



バイク🏍️で、美優の行きたいってとこに。


教えてくれないんだよな、何処だか。


 不安だよ。それに、バイク🏍️の後ろに乗る俺も疲れるんだよな。美優はエンジンをかけ、


【正人、お腹つかまないでよ。食べ過ぎで恥ずかしいから】


【じゃ、どこに?肩付近?ここ?】


【そこじゃ、安定しないよ。お腹じゃなきゃいいの。はい、ここ、落ちないようにね】


んー、なんか、微妙な。いいのかな?


意識すると、変な汗出そうだから、普通に。


【じゃ、行っくよー!!落ちないでね】








 

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