第9話 ツーリング

 美優は颯爽と走り出す。俺はどこを掴めばいい?姉だけど、女性だ。どうすればいい?


 そして、落っこちるのは嫌だ。大怪我する。そもそも乗ったことないバイクになんの説明も無しに…


【ほら、ちゃんとつかまって!!じゃないと落っこちる】


【解ったよ、あまりスピード出すな!!】


【えっ?なに?聞こえない】


 俺は美優にしがみつき、そもそもこの乗り方で良いのか?



………………………道の駅………………………



【ここね、食べ放題…どした?】


【スピード出し過ぎ…】


【あんなにくっついていたら、そりゃ疲れるね。背中、汗だく💦】


 そりゃ、美優のせいだ!!しがみつく俺の身にもなってみてくれ。触れちゃいけない場所も考えて大変だったんだぞ。


 美優はフロントのジッパーをおろして、なんかちょっと、それってどうなの?中、Tシャツ着てるけどさ。


【見惚れた?】


【なんで美優に見惚れることあるんだよ。そんなことありっこない】


いや、嘘をついた。ただ素直に慣れなくてさ。


【ふーん、あっそ。食べに行こ】


今朝、焼き魚だったよな?ここは海の幸か。


牡蠣、エビ、ホタテ、何故か牛肉もある。


俺は牛にしようっと。美味そー!!!


【ちょっとちょっと、何でホタテのすぐ横でお肉焼くのよ!!】


【俺は肉が食べたいんだよ。焼き魚だったろ?朝食。他にもいろいろあるぞ】


【今朝は魚でしょ?私のホタテは別。そして香りが大事なの】


 もう、面倒なやつ。俺は後にするか。奢ってもらう都合。我慢するか。


 カレーもあった。先にこれ食ってるからいいや。


【はい、醤油は少しね】


美優、俺のためにホタテを?


まだ自分が食べてないじゃん。


【俺のため?あんなに真剣に焼いていたのは?】


【そうだけど?早く食べて】


優しいんだよな、時々。


俺も戸惑うんだよ、美優のこういう行動が。



 あちち!!ふーふー、モグモグ…うんまいぞ!!これ。



【どう?美味しいよね!!】


【優しいじゃん。彼氏にもこうしてツーリング連れてきてあげれば?喜ぶよ。免許ある彼氏じゃ無いと駄目だけどな。美優の後ろには載せたく無い…あっ、いや、美優って汗かくじゃん。それで…あー、もう、ホタテ美味すぎて自分でもよく解らん】


 なんつーか、美優の後ろでしがみつく彼氏のこと想像したらなんか嫌だったんだよ。


【彼氏いないもん…】


悪いこと言っちゃったかな。


【憧れの主任は?バイク教わったんでしょ?尚更いいじゃん。頼りになるもんな】


何で黙ってるんだよ、美優。


【彼女いるもん、あの人…あー、やめやめ、食べよ!!次の牡蠣も、あっちー!!!】


おい、何してんだよ!!軍手あるだろ。


大丈夫か?氷で冷やさないと。


美優の手をとって、氷を当てて冷やして、


【ありがとう、熱かったー】


【火傷のあと残ったら大変だよ】







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