珈琲3杯目 (7)危機去りし後
「……なあ、ファル。私は夢でも見ているのか?」
夕方にわたくしが戻ってほどなく、スティア号から届けられた書状を何度も読み返されていたリュライア様は、信じられないといった表情お顔を上げられました。いつもの執事の服装に着替えていたわたくしは、達成感を表に出さぬよう努めつつ、おごそかにお伝えいたしました。
「いいえ、夢ではございません」
リュライア様のお顔が、安堵のあまりふにゃりと緩みました。そしてすぐに表情を引き締めると、わたくしと歓喜を分かち合おうと勝ち誇った叫びをあげられました。
「見ろ! マーファ姉様は帝都に戻られたぞ! 助かったのだ!」
わたくしは深い笑みで応じながら、リュライア様が差し出されたマーファリス様の書状を拝読いたしました。
<親愛なる私の妹、リュライアへ
本当にごめんなさい。どうしても帝都に戻らなければならない急用ができてしまったの。今日そちらでクラウと一緒にお話をする件は、また今度。必ず埋め合わせするので、どうか身勝手な姉を許してね。それと、クラウに愛していると伝えておいて。ファルにも、いろいろ準備が無駄になってしまったことを心から詫びていると言っておいてください。
取り急ぎ。あなたの姉、マーファリスより>
「これで安心して眠れるな」
わたくしが書状をお返しすると、リュライア様は目を閉じて、満足そうに椅子に背をもたせかけました。それでは、とわたくしが珈琲をお淹れするために下がろうといたしますと、リュライア様は「待て」と目を開けられました。
「まさかどんな手を使ったのか、秘密にするつもりではないだろうな? ずっと気になって仕方がないのだ……さっきは安心して眠れると言ったが、どうやったか聞かねば気になって眠れん。今夜も寝かさない気か?」
「お話するほどのことではございませんが、お望みとあれば」
「頼む。座って話してくれ」
リュライア様は目を輝かせ、わたくしが向かいの椅子に座るのを待ちかねたように話し始められました。
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