笑う門には『福』来る
「パパー、早く早くー!」
「ははっ、ちょっと待ってくれよ」
「早くしないと、ママと
楓が無事、俺達の息子である『福乃助』を出産してくれて、今日は楓の退院日となっている。
子供の名前はまたみんなで考えたんだが、穂『乃』果の『助』けがあっての今の俺達で、みんなで幸せになるために過ごしているうちに笑顔が増えた結果、更に『福』が訪れた、ということで『福乃助』と名付ける事にした。
穂乃果の学校もあるからと病院に泊まりはせずに毎日病院に通ってはいたが、退院日という事で朝から穂乃果が俺を急かすようにドタバタしていた。
「あはっ、穂乃果ちゃん嬉しそうですねー、またお姉ちゃんになりましたからね」
「ああ、本当に…… 穂乃果はお姉ちゃんとして頑張ってくれているからな……」
「もう! 大樹さんはすぐに泣きそうになるんですから…… 泣き虫なパパだねー、実乃梨ー?」
「あはっ、あぅ、ぱぁぱー!」
「は、ははっ……」
一歳になった実乃梨は、少しずつ単語だけだか言葉を話すようになってきた。
初めて実乃梨に『パパ』と呼ばれた時には…… 穂乃果の生まれた時の事や、今まで色々あった事を思い出して泣いてしまい…… ははっ、幸せになってから涙もろくなって、本当に泣き虫なパパになってしまったな。
「ほら、楓さんが待ってますから、みんなで迎えに行きましょう?」
そして新たに買った大きめのファミリーカーで楓が入院している病院へと走り、楓と福乃助の事をみんなで迎えに行った。
楓の出産は意外と時間がかからず、あっという間に終わった。
穂乃果も出産を見るのが二回目だからか、今回は楓の手を握ったり、すぐそばで『ママ頑張って』と声をかける余裕があったようだ。
葉月も実乃梨も一緒にいたが、やはり福乃助が産まれた瞬間俺は号泣してしまい、周りの助産師さん達にも苦笑いされた……
でも、一番泣いていたのは楓か……
ずっと密かに望んでいた二人目の子供という事で色々な思いがあったんだろう。
出産直後は疲れ切っていたが、福乃助を初めて自分の胸に抱いた時の顔が本当に嬉しそうだった。
「福乃助、元気かなぁー? えへへっ、頑張ってお世話しないとねー!」
「ああ、頼んだぞ、穂乃果お姉ちゃん」
「うん!」
そんな話をしているうちに病院に到着して……
「ふふっ、みんな…… 迎えに来てくれてありがと」
「ママぁ! 福乃助ぇ!」
「あはっ! 楓さん、お疲れ様です」
「楓、お疲れ様……」
そして退院の手続きなどをして、楓を乗せて自宅に帰ると、みんなの両親が家で俺達の帰りを待っていた。
それぞれ『三人目の孫』となる福乃助の誕生を祝ってくれて、特に楓のお父さんは実乃梨の時もそうだったが、スマホや自前のカメラで孫達をずっと撮影しながらデレデレした顔をしていたのにはみんなで笑ってしまった。
両親達は多分、最初に俺達が一緒に生活すると決めた事に対して思うところはあったはずだ。
だけど何も言わずに見守ってくれて、こうして仲良く暮らし子供まで授かった俺達を見て、今では心から俺達の生活を応援してくれていると思う。
そんなみんなで手に入れた幸せを守るため、俺はこれからもっともっとしっかりしないとな。
「ふふふっ、本当に可愛い……」
「ママぁ、福乃助を抱っこしてもいい?」
「うん、抱っこしてあげて」
「んっ、よいしょっと…… えへへっ、福乃助ー? お姉ちゃんだよー」
ははっ、『大人になりたい』と俺達のために頑張ってくれた穂乃果もすっかりお姉ちゃんの顔になったな。
福乃助を抱っこする手も、実乃梨の時に何度もしていたからか慣れた様子で抱っこしている。
お姉ちゃんにはなったが、それでも子供らしくのびのびと成長もして毎日笑顔で過ごせているし、本当に良かった……
「パパー、パパも福乃助を抱っこしてあげてー」
「ああ、んっと…… 福乃助、パパだぞー?」
福乃助…… 無事に元気に生まれ、俺達の元に来てくれてありがとう。
パパもお姉ちゃんも、二人のママも福乃助に会える日を楽しみにしていたんだ。
今日からこの家でみんなで仲良く暮らそう。
ははっ、小さくて可愛い手だなぁ…… 福乃助が幸せになれるようにパパ頑張るからな?
「あはっ、目元はやっぱり大樹さん似てますねー」
「ふふっ、そうだね、実乃梨も大樹くんの目元と似ているし、大きくなったらもしかしたら似るんじゃないかな?」
「えー? ママ、でも鼻はあたしにも似てるよー?」
「ふふっ、穂乃果にも似てるよ、だってみんな姉弟だからね」
「そうだよ穂乃果ちゃん、みんな姉弟なんだから」
…………
…………
「大樹さん、大樹さん……」
「んー?」
「今日は久しぶりに…… 良いですよね?」
福乃助が我が家に来てから何ヵ月か経った。
子供達が大切なのはもちろんだが、夫婦で仲良くするのも忘れてはいない。
さすがに避妊はするが、葉月とは仲良くするのを再開している。
もちろん育児があるから頻繁には出来ないが、タイミングを見つけてはこっそりと仲を深めている。
「んふっ…… 今日もたっぷり、大樹さんだけの『特別サービス』しますからね……」
「お、お手柔らかに頼むよ……」
「…………」
そしてそんな俺達の姿を見つめる楓も…… 何故かそばにいる。
実乃梨と福乃助は別の部屋で寝ているみたいだし、穂乃果もグッスリ寝ていたから大丈夫だと思うが…… そんなに見つめられるとなんだか気まずいな。
「楓さんは出産したばかりですからねー、楓さんの分まであたしが頑張っちゃいます、あはっ!」
「うぅっ…… 私も何かお手伝いしたいよぉ……」
「ダメですよ! 福ちゃんが夜泣きするかもしれないじゃないですか、おっぱい欲しがるかもしれないんですよ?」
「分かってるよぉ、でもぉ……」
「大樹さん、寂しがってる楓さんにたっぷりキスしてあげて下さい、その間にあたしは…… あはっ、こっちにキスしてますから……」
ちょっ、葉月…… それ、キスにしては…… 吸い込みが激しくない?
「大樹くん……」
こっちもこっちで…… 激しい……
まあ、二人が喜んでくれるなら…… 俺は受け入れて頑張るだけ…… はははっ……
…………んんんー!!
…………
…………
楓に羨ましそうに見つめられながら事を終え、甘えてくる葉月の頭を撫でていると、福乃助が夜泣きし始め、つられて実乃梨まで泣き出した声が聞こえてきた。
楓と服を着てない葉月が泣いている子供達の所に行き、泣き止むようにあやしていた。
俺は服を着て、葉月のパジャマを持ってから子供のいる寝室に向かうと
「あっ、大樹さん…… 実乃梨はおっぱい飲んだらまた寝ちゃいました」
「ふふっ、よしよし…… 福乃助、いっぱい飲んで元気に大きくなってね……」
授乳を終えた葉月が自分の胸を拭きながら、同じく授乳している楓の隣に座り微笑んでいる 。
「実乃梨の分が残ってて良かったですよ…… あはっ」
「どこかの大きな赤ちゃんが一生懸命搾ってたからね…… お腹壊しちゃうよ?」
「…………」
だ、だって『張って痛い』っていうから……
「穂乃果が赤ちゃんの時は私にそんな事をしなかったのにね……」
いや…… そんな事を言われても……
「あはっ、大樹さん、今度は楓さんにもしてもらって下さいね」
「葉月ちゃんだけなんてズルいよ…… 私だって張って痛い時があるのに」
やめて! 子供達の前でなんて話をしてるんだよ!
「二人とも平等に愛してくれないとダメですからね、大樹さん」
「そうだよ、私達は三人で夫婦なんだから同じくらい愛してね、大樹くん」
「わ、分かってるよ…… 俺は二人とも愛してるから…… とにかく、葉月は服を着てくれ」
「あっ! 忘れてました…… あはっ!」
「ふふふっ、葉月ちゃんはおっちょこちょいね」
福乃助が生まれ更に賑やかな家族になり…… 俺達はますます仲が良くなり、毎日幸せを感じながら生活をしている。
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