あたしのママ 《穂乃果》
◇◇◇
あたしの名前は穂乃果、小学校三年生。
おしゃれが大好きで、学校にもおしゃれな服を着ていくから、クラスのお友達に『ファッションリーダー』って呼ばれることもあるんだぁー、えへへっ。
「凪海ちゃん、またねー!」
「穂乃果ちゃん、バイバーイ!」
学校帰り、同じマンションに住んでいるお友達の凪海ちゃんとバイバイして、あたしは自分のお家まで走って帰る。
何でもうすぐお家なのにわざわざ走るのって? えへへっ、それはねぇ……
「ただいまー!!」
「あっ、おかえり穂乃果」
「穂乃果ちゃん、おかえりなさーい」
…………
あたしには『二人のママ』がいる。
あたしの本当のママである
ママはいても変じゃないけど、何で二人もママがいるの? って思うよね?
でも葉月ちゃんがいないと…… パパとママだけじゃダメなんだ。
……あたしが保育園に行ってた頃、パパとママがケンカしちゃって離れて暮らすようになって、あたしが何とかしてパパとママを仲直りさせようって一人で頑張っていた時に出会って、あたしのお手伝いをしてくれたのが葉月ちゃんだったの。
パパのお友達で、おしゃれで可愛くて、初めて見た時に『葉月ちゃんみたいなお姉さんになりたい!』って思ったの。
そしてあたしが葉月ちゃんみたいにニコニコと笑っているお姉さんになれば、ケンカしているパパとママもニコニコしてくれるんじゃないかなって。
そして話していても楽しいし、まるで本物のお姉ちゃんみたいで、あたしはすぐに大好きになっちゃった。
パパも葉月ちゃんもお互い大好きみたいだし、もしかしたら葉月ちゃんがパパとママの仲直りを手伝ってくれそうな気がして、あたしは葉月ちゃんにお願いしたの! ……これが『女の勘』ってやつだね! えへへっ。
そしてパパがケガをした時、あたしがいっぱいお願いして、パパのお世話をみんなですることになって…… それでパパとママと葉月ちゃんとあたし、四人で一緒に住んでいたらパパとママが仲直りしてくれたの!
そしたら今度は葉月ちゃんがパパとケンカしちゃって…… だからあたしは…… パパとママを困らせるぐらい『葉月ちゃんに会いたい』って、毎日言い続けた。
パパが困った顔をしてもママが困った顔をしても、駄々をこねてワガママを言って…… だって葉月ちゃんがいないと寂しいし、パパとママがまたケンカしちゃいそうで恐かったんだもん。
そして毎日毎日駄々をこね続けていたらパパが葉月ちゃんに『ごめんなさい』をしに行くって言って、あたしも一緒に行って葉月ちゃんにお願いして…… あたし達は新しいお家でみんなで暮らすようになったの。
新しいお家は広くて綺麗だし、近所のおじちゃんおばちゃんはみんな優しいし、お友達もいっぱい出来て最高!
葉月ちゃんもお姉ちゃんからだんだんママみたいになってきて、その頃から『あたしにはママが二人いるんだ!』って思うようになってきた。
だけどあたしがそう思っていても、小学校のお友達に『ママが二人いるなんて変!』って言われた事もある。
だからそんな時はあたしと凪海ちゃんで『あなたのお家はママが一人しかいないんだぁー』って言い返してるんだぁ!
だってママが二人いたら、二人と遊べるし、二人に可愛がってもらえるんだよ? 一人よりも嬉しいし、おトクだよね?
そして毎日みんなで一緒にいて、パパとママと葉月ちゃん、おじいちゃんおばあちゃん達、みんなに可愛がってもらえるのは凄く嬉しかった、だけど……
「「おねーちゃーん」」
「あっ、凪海ちゃんの弟と妹だ……」
弟と妹を可愛がってお姉ちゃんをしている凪海ちゃんが羨ましくなって…… あたしも可愛がられるだけじゃなく、弟か妹を可愛がるお姉ちゃんになりたい! って思ったの。
だけど赤ちゃんってどこから来るのか分からなかったから、大海くんママに聞いてみると……
『パパとママと葉月さんに聞いてみて、穂乃果ちゃんがお願いしたら、もしかしたら『どんぶらこ』してくるかもねー? うふふっ』って教えてくれて、それでママ達に『誕生日プレゼントに弟か妹が欲しい』ってお願いしたの!
あたしがお願いした時、パパは困った顔をしてたけど、ママと葉月ちゃんは何だか困ったふりして嬉しそうな顔をしてたから大丈夫だと思ったんだけど……
でもお願いしたのにしばらくパパ達はあたしに何も言って来なかった。
もしかしてお願いしたのに忘れちゃったのかな? って思っていたけど、それから何だかパパとママと葉月ちゃんは、前よりも凄く仲良しになっていた。
ママと葉月ちゃんがソファーに座ってるパパに抱き着いたり、ママと葉月ちゃんもニコニコしてお料理中に抱き着いたりもしてたの。
みんなが仲良しなのが凄く嬉しくて、あたしもみんなにギューって抱き着いたりしてた。
でもパパ達があたしに隠れてチューしてたのも知ってるんだからね、えへへっ。
弟か妹ってお願いは忘れられちゃったけど、パパもママも葉月ちゃんも毎日ニコニコしていてあたしはとっても嬉しいから、それでもいいかなぁーって思っていた、そんなある日、パパが……
「穂乃果、あのな…… 今、葉月のお腹の中に、穂乃果の弟か妹がいるんだ」
えっ…… 葉月ちゃんのお腹の中に!?
「あはっ、穂乃果ちゃん…… しばらくしたらお姉ちゃんになるんだよ? お姉ちゃんとしてお腹の子を可愛がってあげてね?」
「葉月ちゃん、本当に!? わーい! あたし、お姉ちゃーん!」
でもどうやって赤ちゃんが来たんだろうと思って聞いてみたら、『パパと葉月ちゃんが仲良くしていたから』ってママと葉月ちゃんに言われて、あとで赤ちゃんの作り方とか色々教えてもらったけど…… あたしにはよく分からなかった。
だけど赤ちゃんを作るのは簡単な事じゃなくて、大切な人といっぱい話し合わないと、女の子は特にダメなんだって事も教えてもらった。
ママと葉月ちゃんがいつもより恐い顔をしながら何度も『最後は自分で自分を守らなきゃいけないの、だから気を付けないとダメだよ』って言ってた。
そしてそれから葉月ちゃんのお腹がだんだん膨らむように大きくなってきて、しばらくするとお腹にいるのはあたしの妹だって分かって……
そして……
「穂乃果ちゃん…… お姉ちゃんとして、可愛がってあげてね……」
あたしの妹……
実乃梨が産まれるのをパパとママと一緒に見守っている時、ママと葉月ちゃんが『気を付けないとダメ!』って言っていたわけが何となく分かった……
葉月ちゃんは汗だくで痛そうな顔して、聞いた事がない大きな声を出しながら、実乃梨をあたし達に会わせるために必死に頑張っていた姿を見せてもらったから……
『弟か妹が欲しい』
あたしは簡単に言っちゃったけど、子供を産むって大変な事なんだって葉月ちゃんに教えてもらった。
でも葉月ちゃんのおかげで、大きな声で元気に泣いているあたしの妹、実乃梨と出会えて…… あたしは『お姉ちゃん』になれたんだ。
パパ、ママ、葉月ちゃん、ありがとう。
あたし、みんながいて…… すっごく幸せ!!
…………
あたしが急いで帰る理由、それは…… 可愛い妹の実乃梨に早く会いたいから。
ランドセルを背負ったまま、ベビーベッドにいる実乃梨のところに一直線。
あたしが覗き込んでいるのに気が付いて、手足をパタパタさせながら笑っている…… えへへっ、可愛いー!
「ただいまー、えへへっ、良い子にしてた実乃梨? お姉ちゃんだよー!」
「あぅっ、あぅっ!」
「ふふっ、穂乃果、先に手洗いうがいしてきなさい」
「はーい!」
実乃梨のためなら一緒に遊んであげるし、オムツも替えるし、ミルクだってあげる、泣いてたらあたしがあやしてあげる、だってあたしは…… お姉ちゃんなんだから! えへへっ!
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