家族として、未来について話し合う
穂乃果に気付かれないように涙を拭い、少し離れた席に座ってみんなの様子を眺めていた。
みんなは穂乃果がプレゼントを開けて喜んでいる様子を見て微笑んでいたり、楓のお父さんなんかはスマホのカメラで穂乃果の写真や動画をずっと撮影している。
母さんと楓のお母さん、葉月のお母さんは笑いながら話をしていて、楓と葉月は葉月のお父さんの料理を手伝いつつ、みんなと笑顔で話していた。
しかし…… 穂乃果のプレゼントか……
『弟か妹が欲しい』と言われても…… どうしたらいいのか?
本当に作るかどうかは置いといて、そうなればまず『誰と?』という話になるよな。
穂乃果の弟か妹、だったら楓と…… と、いう話になりそうだが、そうなれば葉月がどう思うのか、凄く気になる。
じゃあ葉月と…… となると、それはそれで腹違いの弟か妹になるし…… 更に複雑な家庭になってしまいそうだ。
こんな生活をしておいて今更モラルとかルールみたいなものを気にするなんて、と言われてしまいそうだが、世間の目を全く気にしないで生活するというのも難しい。
だけど『普通』って何なんだろうな……
別に俺達は法に反する事をしているわけではないし、『他人』に迷惑をかけているわけでもない。
歪な形になってしまったが新たな絆を作った俺達には、これが一番みんなの心が安定して、一番幸せになれそうだからとこの道をみんなで進もうと選んだんだ。
他人が作ったルール、他人が作ったモラル…… すべてを守らなければ生きる事さえ許されない? そんな訳ないよな……
「何を考えてるんですかー?」
「大樹くん、大丈夫?」
葉月…… 楓……
「まーた難しい事を考えている顔をしてますねー、あはっ!」
「ふふっ、大樹くんは分かりやすいからね」
本当に…… 葉月には悪いが二人とも似ているからというか…… 昔から楓としていたやりとりが最近は二倍になっているように感じる事が多い。
「ははっ、ごめんごめん」
「今日は穂乃果ちゃんの誕生日なんですから、難しい事は後で考えましょうよ」
「そうだよ、帰ってからゆっくり、みんなで考えよ?」
何を考えていたかすら見抜かれているみたいだな…… ははっ、俺ってそんなに分かりやすいのかな?
「パパー! 見て見てぇー! これ、お化粧品がいっぱーい!」
おお…… 見事にみんなオモチャとかではなく美容品ばかり。
まあ、穂乃果がおしゃれに関する事を楽しそうに話しているのをみんな聞いていたからだろうな。
「良かったなー、みんなにちゃんとお礼は言ったか?」
「うん! 帰ったら葉月ちゃんとママに使い方教えてもらうんだー、えへへっ」
プレゼントを持って満面の笑みを浮かべる穂乃果。
やっと引っ込んだ涙がまた出てきそうになったが、必死に堪えて笑顔で穂乃果の頭を撫でた。
…………
結局、晩まで葉月の両親の店で食べたり飲んだりしながら家族と過ごし、また集まろうと約束をしてそれぞれ帰宅した。
母さんは一人暮らしだし家に泊まりに来るかと聞いてみたが断られ、結局俺達は四人で帰宅する事になった。
「うぅん…… すぅ…… すぅ……」
「ふふっ」
「穂乃果ちゃん、寝ちゃいましたね」
昼から始まった穂乃果の誕生日パーティーだったが、よほど嬉しかったみたいで、穂乃果は夜まではしゃいでいたせいか、帰りの車の中で急に電池が切れたかのように寝てしまった。
「これは朝までグッスリかな?」
「そうだね、ふふっ、穂乃果ったらあんなにはしゃいでいたからね」
「あんなに喜んでくれて、あたしの両親も喜んでましたよ」
「葉月の両親には改めてお礼を言っておかないとなー」
あんな豪華な料理を無料で食べさせてもらって、しかも店を貸し切りで使わせてもらってだからなぁ…… いくら葉月の親で、のんびり営業しているから大丈夫と言われても、お礼くらいしておかないと。
「あはっ、大丈夫ですよー、実は…… 今日の食材もですけど、店の調理器具とかテーブルやイスなんかも、全部鬼島社長と亜梨沙さんが用意してくれたんですよ!」
「えっ!? 何で鬼島社長達がそんな事をして……」
「間接的でも穂乃果ちゃんに辛い思いをさせてしまったお詫びって言ってました、あたしと楓さんはお断りしたんですけどねー、でも誕生日プレゼントとして受け取って欲しいって言われて、結局頂く事になっちゃいました!」
本当に…… ここまで良くしてもらうと逆に申し訳なくなるな……
「葵社長と亜梨沙さんが言ってました、あたし達家族には今まで苦しんだ分、それ以上にうんと幸せになって欲しいって、あとあたしの両親にも慰謝料を払うとか言っていたのは両親が断ったらしいですが、その代わりに店の設備とか備品をプレゼントして頂いたみたいです」
ああ…… 確かに前に来た時よりテーブルとかイスがアンティークっぽくておしゃれな物になってるとは思ったが、そういう事か。
「とにかく、今日のパーティーのお礼はあまり気にしないで、また顔を出してあげるだけで喜ぶと思いますよ!」
「そっか…… 分かったよ」
それでまた今度お邪魔する時に菓子折りくらいは持って行くか…… あまりこちらが気を遣うと逆に困るっていう事だよな。
そして家に到着し、寝ている穂乃果を抱いて家に入る。
そのまま真っ直ぐ穂乃果の部屋に行ってベッドに寝かせ……
「さて…… 大樹さん、楓さん、家族会議ですよ!」
「葉月ちゃん…… ずいぶん張り切ってるね」
「あはっ! そうですかー? でもぉ…… 穂乃果ちゃんへのプレゼントについてじっくり話し合わないといけませんからね!」
「は、葉月ちゃん……」
ソファーに寄り添うように座っている葉月と楓。
葉月はニコニコしながら楓の手を握っていて、そんな葉月を楓は困った顔で見つめていた。
この事に関しては、この生活をずっと続けるならいつかは考えなきゃならないと思っていた事ではあるし俺も相当悩んだ。
でも最終的には……
「楓、葉月…… 俺はどちらも、同じくらい大好きで愛している、こんな情けない俺を見捨てず想い続けてくれた事も凄く感謝している、それでなんだが…… 『穂乃果のプレゼント』なんて言い訳は使わず、二人が望むなら俺は子供を作っても良いと思っている、産むのは俺じゃないから好き勝手な事は言えないが…… もし二人も子供が欲しいと言うのなら俺は家族を守るために全力で精一杯頑張るから…… 楓と葉月の本当の気持ちを聞かせて欲しい」
もしも二人が望まないのならそれでもいい、今のままでも幸せにやっていけると思っている。
でも二人が子供を望むのなら、俺達の子供を作るのなら、プレゼントのためとかではなく、俺達が愛し合った結果、みんなに祝福されて生まれてきて欲しいんだ。
「大樹さん…… あはっ! はーい、あたしも大樹さんを愛していますから、大樹さんとの赤ちゃんが欲しいです!」
「わ、私も…… 私も大樹くんを愛しているし、子供は二人くらい欲しいってずっと思っていたから…… 赤ちゃん、欲しいなぁ……」
「分かった、気持ちを聞かせてくれてありがとう…… 二人とも絶対に幸せにするから…… ずっとみんなで一緒にいよう」
「はい!」
「うん!」
…………
…………
それから俺達は、愛し合う時には避妊するをやめた。
子作りのため…… というより、もっと愛し合うためにだ。
そして愛し合った結果、いつか俺達の元に新たな家族が来てくれたらとても嬉しい、という気持ちで…… 俺達は何度も愛し合った。
まあ、穂乃果がいるから頻繁には出来ないし、俺達が一番優先しているのは穂乃果だから、たまに暇があれば葉月や楓、一人ずつとホテルに行ってみたり、穂乃果が俺の母親や楓の両親など俺達抜きでお出かけしている時に家で三人で仲良くしたりと、愛し合う事を楽しみつつ、焦らずに幸せを噛み締めるように生活を続けていた。
そして……
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