みんなでもっと……
今日、穂乃果は楓の両親と一緒に夢の国へと遊びに行っている。
そして夢の国限定のポゥさんショップに行くとも言っていた。
昨日の夜はウキウキしていたのか眠りにつくのが遅くなっていたけど、穂乃果は大丈夫かな?
そしてそのまま楓の実家にお泊まりする予定になっているはずだから…… 今日は家に楓と葉月しかいない。
まあ、穂乃果がいないからといって特に何かあるわけでもなく、いつもと変わらないんだけどな……
帰宅途中、車を運転しながらそんな事を考えていた。
そしてマンションの前に到着し、車を駐車場に停めて自宅へと歩いていく。
退社した時にスマホのGPSアプリで二人の居場所を確認したら自宅になっていたので、二人共今日は出掛けずに家にいたんだな、なんて思いながら家の前まで来たので玄関の鍵を開けると……
「ただいま…… んっ?」
あれ? 返事がない…… おかしいな、薄暗くなってきたのにリビングも電気が点いてない。
二人とも自分の部屋で休んでいるのかな? なんて思いながら、とりあえず自分の部屋に向かってみると……
あっ、俺の部屋の扉が少し開いている…… いつも出かける時は閉めているはずなのに変だな……
「……っ! ……っっ …………」
何だ!? 部屋の中から呻き声みたいな音が聞こえる! そしてふと頭をよぎったのは……
『木下さん、このマンション、ポルターガイストが起きるから防音はしっかりしておいた方がいいですよ? 深夜になるガタガタ揺れたり、ギシギシとか何かがパンパンとぶつかり合う音も聞こえるんですよ!』
と、別の階に住む若い夫婦の旦那さんが入居当時言っていたことを思い出した。
うっ! 俺はお化けとかそういう類いのは苦手なんだよ! やだなぁ、恐いなぁ、恐いなぁ……
そして心臓がバクバクとしながらも、楓や葉月が悪霊に取り憑かれそうになったり、宇宙人にアブダクションされそうになっていたら大変だと、勇気を出して部屋の扉に手をかけ、勢い良く自分の部屋の扉を開け、中に入ると……
目に入ってきたのは、床にぐちゃぐちゃのまま脱ぎ捨てられた服と、俺のベッドの上で重なり合うように横になっている…… 楓と葉月がいた。
「えっ…… 二人とも、何して……」
「だ、大樹くん!? いやぁぁぁぁっ! み、見ないでぇぇぇっ!」
「んっ…… あっ、大樹さん、おかえりなさーい…… んふっ」
「あっ!…… だ、大樹くん、にぃ、見られちゃうからぁ…… 葉月、ちゃ、やめっ……」
二人とも…… い、一体何をしているんだ!?
恥ずかしそうに自分の顔を手で隠す楓、その上で重なるように密着しながら…… 楓の身体を触っている葉月…… しかも二人とも産まれたままの姿で……
えっ? えっ? ……頭の中の情報処理が追い付かない!!
「本当に…… 二人とも何してるの?」
「大樹さんが相手にしてくれないから、あたし達寂しくなっちゃって…… それで我慢出来なくなって…… お互いに慰め合ってました、あはっ!」
「そ、そんな! わ、私はそんなつもり…… んんっ!」
お、俺のせい? 楓が何か言いたそうに俺を一瞬見たが、葉月の手の動きによって、再び手で口を押さえるように顔を隠してしまった。
「楓さんも『大樹くんは汚い私を触りたくないはず』とか、自虐的な事を言うから悪いんですよー? そして大樹さんもあたしとあれこれしていたくせに、変に潔癖ぶって楓さんと距離を取ろうとするから…… こうでもしないとあたし達は切ない気持ちを抑えられなかったんです、だから仕方なかったんです」
潔癖!? そんなつもりはなかったが…… そうか、潔癖ぶっているか、葉月に直接言われてしまったら……
再び一緒に生活することになったのに楓に対してなぜこんなにそういう事をするという点で距離を取っていたのか、葉月に指摘されてようやく、俺がどれだけ意固地になっていたかという事に気が付いた。
確かに俺と葉月は仲を深めるために何度も触れ合っていた、期間だけでいうと楓の様子がおかしいと思っていた時と同じくらいの期間、葉月と仲良くしていた。
そしてその間に葉月には大人のお店で働いていた事、色んな人に触られ汚れていると聞き、その事をかなり気にしていた葉月に対して俺は、汚れてはいないし気にしない、と言ったのを覚えている。
じゃあこういう生活を選んだ時点で葉月の過去の経験は良かったのに、楓はダメという言い訳はもう通用しないのに…… どちらも守り、どちらも同じくらい大切に思いながら共に過ごすと決めたんだから。
葉月の言いたい事は理解した、だけど…… どうして話の途中なのに、しかも俺が見ているのに続けようとしてるの!? 葉月ちゃん!
「だから仕方ないなぁー、と思いましてね? 楓さんの色々凝り固まったものを優しくほぐしてあげているんですよ…… それに大樹さんのために隅々まで綺麗にしていたんですよ? ほら、大樹さん…… よく見て下さい……」
「きゃっ! は、葉月ちゃん、こんな格好恥ずかしいからやめて…… 大樹くん…… 見ちゃいやぁ……」
「ここも、ここも…… あたしがほとんど綺麗にしましたから…… だから大樹さん、もう食べられますよね?」
あれっ? その言葉どこかで…… あっ……
「大樹さん、ほら、早くこっちに来て下さい…… 大丈夫ですから…… あたしもそばにいますから……」
そして…… 優しく微笑みながら俺に向かって手招きをする葉月に吸い寄せられるように……
…………
…………
そして俺と楓は…… 葉月に手助けされ、見守られながら二年以上ぶりに…… 再び触れ合い、そして結ばれることが出来た。
「うぅっ…… ぐすっ…… うぅぅ…… ありがとう…… ありがとう…… 大樹くん……」
「あはっ…… 良かったです…… これで二人のわだかまりはなくなりましたね」
「あ、あぁ…… 色々ありがとう、葉月…… 楓も…… ありがとう……」
見守る…… というか、サポートするためにとか言って色々と手を出してきていたけど…… この際どうでもいいか。
そして終わった後、過呼吸を起こすんじゃないかというくらい泣き出してしまった楓を、俺と葉月が挟み込むように抱き締めながら…… 俺達はしばらくベッドの上で横になっていた。
そしてしばらくして、楓が落ち着いてきたのを見計らってなのか、葉月がモソモソと俺の方に近付いてきた。
「もうこれであたしも楓さんに遠慮しなくてよくなりましたね」
えっ? いや、今は色々と余韻に浸っているところなんだけど…… うわっ!
「んー、大樹さん、ちょっと元気がないですねー、久しぶりにあたしが…… 『特別サービス』しちゃいますね、あはっ!」
は、葉月!? ……あぅっ!
「は、葉月ちゃん…… す、すごい……」
「んふっ…… どうです? 楓さんも一緒に…… します?」
ちょっ、葉月、何を言って…… か、楓?
「……私ももっと大樹くんと触れ合いたい」
あっ…… そ、そんな……
…………
…………
「ふぅぅっ…… あはっ…… 大樹さぁん…… んふふっ! 大樹さん…… あたし、すっごく幸せです!」
「は、ははっ…… そ、そうか、俺も幸せだよ……」
そりゃあ大切な二人に大切にされちゃったからなぁ…… こんなの初めての経験だよ。
「楓さんも幸せでしたよね? あんなに喜んでましたもんね、あはっ!」
「は、葉月ちゃん! 恥ずかしいからやめてよぉ…… それは私だって凄く幸せだけど…… その…… 大樹くん、大丈夫なの? 疲れてない?」
「あはっ、大丈夫ですよー、あんなに元気でしたもんね!」
俺を真ん中に、右側でくっついている楓が心配しながら話しかけてきたのに、左側で同じようにくっついている葉月が返事をするという…… 不思議な気分を味わっている。
「でも…… 連続でなんて……」
「あはっ? 大樹さんはエッチですから大丈夫です! きっと今までは楓さんを心配して遠慮していたんですよ」
「そうなの? いつも私がクタクタになっちゃうせいで満足出来てなかったのかな? ごめんね、大樹くん……」
「大樹さん、丁寧というか、結構ねちっこいですからねー」
「ち、違うよ! 大樹くんはいつも何事にも一生懸命なの! そこが素敵な所なんだから!」
「あはっ! そうとも言えるかもしれないですね、とにかく…… 大切に扱われるのは幸せな気持ちになりますよね」
「うん…… 大樹くんと…… その…… すると、すごく幸せで…… 大樹くんじゃなきゃダメなんだって思っちゃうの……」
「あはっ! その気持ちはよーく分かります! あたしも優しくされてコロっと落とされちゃいましたから!」
おい…… 俺を挟んでなんて話をしているんだ。
ダメ出しされているわけじゃないから良いけど…… 変な評価を直接されるのは恥ずかしいからやめてくれ!
「だから…… あたし達の相手くらい、大樹さんは平気ですよね? 二人とも幸せにしてくれるんですもんね?」
「わ、私は…… 負担になるだろうし、別におまけでも良いよ? でも…… 出来れば仲間に入れて欲しいな……」
葉月!? いや、楓も遠慮しているように見せかけて、さりげなくおねだりしているっぽい言い方になっているし……
まあ、二人とも大切でどちらも守ると決めたのは俺だ…… 二人が望むなら、男として全力で幸せにしてやらなければいけないよな。
「ああ、二人とも大切にするために頑張るよ、だから心配しないでくれ……」
「大樹さん……」
「大樹くん……」
「でも二人とも…… 特に葉月…… 手加減はしてくれよ?」
「あははっ! 楓さん、どうしましょうかねー?」
「私は…… 葉月ちゃんのを見ちゃったら、まだまだ勉強不足なんだなぁって思ったから…… 頑張らないと」
頑張らなくて大丈夫だから! 楓まで頑張っちゃったら…… 俺が持たないよ!!
「とにかく…… 二人とも、ありがとう……」
そして改めて二人とも大切だという思いを確認した俺は、二人の背中に手を回し、もう二度と離さないという思いを込め…… ぎゅっと抱き締めた。
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