幸せな未来を手に入れるために 2
今日は三人とも午前中から出かけているので、俺は一人で外出している。
出かけていると言っても管理人さんの家で開かれているお誕生日パーティーに参加するためで、同じマンション内にはいるんだけどな。
俺も誘われたが、他のママ友や近所の奥様や子供とたくさん集まるみたいだから遠慮しておいた。
近所付き合いも上手くいっている…… というかかなり良好で、楓と葉月はたまに開かれる近所の奥様方とのお茶会など、あちこちに顔を出しているみたいだ。
前住んでいた地域での事もあるし無理して付き合ってないか? と何度か聞いてみたが、二人揃って『良い人ばかりだし楽しいから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ』と笑顔で話していたので安心している。
こんな特殊な関係で生活している俺達なのに、深く詮索されるわけでもないし、逆に気にかけてもらっているのも生活していて感じるから…… 嘘で言っているわけではないだろう。
あれから俺達は離れていても見守れて安心というのと、外出中にお互いがお互いを心配する必要が減るという理由で、GPSで居場所を共有する事にした。
あと、楓と葉月は出かける時には貞操帯を使用しているらしい……
直接装着しているところを見たわけではないが、二人が少し恥ずかしそうにしながらも笑顔で出掛けているのを見て…… それで二人が安心出来るならと、俺は何も言わない事にした。
二人とも、お互いがお互いのスペアキーを持っているとか言っていたな……
それから穂乃果にも防犯ブザーを持ち歩くように言って、使い方などもみんなで教えてあげた。
とにかく何も対策しないより、身を守るために少しでも出来る事は自分達でしよう、ということを家族会議で決めた。
さて、目的地に到着したな。
久しぶりだし緊張してきた……
でも、これも家族を守るための第一歩だ…… よし、行くか!
そして俺は車から降りて……
◇
「うふふっ、順調みたいねー 来月予定日なの?」
「はい! ……最初は不安だったけど、皆さんが色々アドバイスくれたおかげで助かりました」
「最初は緊張するよねー、私も不安で泣いちゃったし、旦那に当たったりしちゃったもん」
今日は管理人さんのお姉さんの息子、大海くんの誕生日ということで、誕生日パーティーにお呼ばれした大樹くんを除く私達三人は、パーティーの食事が終わった後、管理人さんの家で子供達を遊ばせながら楽しく過ごしていた。
それで今は管理人さんの家の右隣に住む若い夫婦の奥さんの相談事をみんなで聞いていた。
多分葉月ちゃんと同じくらいの歳だと思うんだけど、初めての子供ということで不安があったらしく、管理人さんやお姉さん、出産経験のある私に色々質問してきた。
でも…… こんな温かい人達がいる中で子育て出来るなら、凄く安心なんじゃないかな?
「どうしても困った事があったら遠慮なく言ってね?」
「うふふっ、私も子育ての事でこの近所の人達にたくさん助けてもらったし、みんな優しいから心配しなくても大丈夫よ」
「そうそう! それに人の家庭の事にあれこれ口出しするような人もいないし、のびのびと育てられて…… 本当にこの地域は生活しやすいの」
うん…… 引っ越してきたばかりだけど、それは凄く感じる。
大樹くんと結婚生活をしていた時に住んでいた地域は…… はっきり言って『余計なお世話』まで焼いてくる人が多かったから……
かと言って断ると『あそこの奥さんは生意気』とか噂されるから…… 上手くやるのが大変だったな。
でも大樹くんがお仕事や家の事も頑張ってくれていたから…… 言い出せなかったんだよね。
そんな心配のない地域で、たっぷり愛情を注いで子育て出来るなんて…… 羨ましいな。
「ママも私達の旦那の両親にいっぱい助けられたって言ってたもんね」
「うふふっ、そうよ」
ところで…… ずっと気になってたんだけど、管理人さんはどうしてお姉さんの事を『ママ』って呼ぶのかな? しかも『私達』の旦那? ……凄く気になるけど聞けない。
葉月ちゃんも気にならないのかな? と思って葉月ちゃんの方を見たけど、穂乃果に呼ばれて子供達と一緒に遊んでいるから聞いてないよね。
葉月ちゃん、子供に好かれるみたいで、しかも面倒見がいいから…… 将来良いママになりそう。
「だから管理人さんとお母さんも優しくしてくれるんですねー」
お、お母さん!? お姉さんじゃなくて? ママって呼ばれたりお母さんって呼ばれたり…… 確かにおっとりして落ち着いた雰囲気はするけど、こんな若いのに失礼になるんじゃ……
「そうねぇ…… 私達『
お、母娘!? へっ? えっ…… だから『ママ』なの!?
ああ、そんなぁ…… 普通ならそんな家庭、世間に受け入れられないんじゃ……
「なるほどー! でも本当に住みやすくて私達も『羽比町』に引っ越して良かったです!」
「ふふふっ、家庭なんて人それぞれ、世間の目なんか気にしないで、みんな幸せならそれでいいじゃない! とにかくそんなに不安にならなくても大丈夫だから、元気な赤ちゃんを産んであげてね!」
「はい! 色々相談に乗ってくれてありがとうございます!」
そっかぁ…… 色んな形があるけど、家族みんな幸せならそれでいい、幸せなのが一番大切なんだよね。
他人の目を気にして怯えながら暮らすよりも、家族みんなが幸せになる事を考えて生きる方が楽しいもんね。
そして、お誕生日パーティーがお開きになり、みんなで家に帰ると……
あれ? まだ大樹くんが帰って来てない。
「あれー? 葉月ちゃん、パパはどこに行ったのー?」
「うーん…… 用事があるって言ってたけど、分からないなぁー」
メッセージとかも届いてないし…… 心配だからスマホのGPSアプリで確認してみようかな?
…………んっ? ……えっ?
この、アプリの地図上に示されている大樹くんの居場所って…… 私の実家がある所…… だよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます