調査の結果、そして……

 大沢さんの事務所に到着すると、すぐに応接室へと案内された。


「どうぞお掛けになって下さい」


 そして俺が椅子に座ると……


「……お茶です、どうぞ」


「おわっ!! ビックリしたぁ…… あ、ありがとうございます……」


 さっきまで誰もいなかったはずなのに、急に横から声がして驚いて横を見ると、かなり身長の高い女性が立っていた。


「はっはっはっ! 存在感がないってよく言われていてお客さんを驚かせてしまうんですが娘のヤエです、驚かせてすいません」


「……大沢ヤエです」


「は、初めまして……」


 そして俺の前にお茶を置いて娘さんは応接室から出て行ったが…… ビックリしてまだ心臓がバクバクしている……


「実は娘も調査員として働いているんですが…… 下手したら私より優秀かもしれません、今回も色々成果を上げてくれましたから」


 そう言いながら大沢さんは俺の前に大きな封筒を差し出してきた。


「まず『ヴァーミリオン』で事件を起こした鎌瀬らですが…… 今は『鬼島グループ』で雇われているになっています」


 えっ…… 鬼島グループ!? ヴァーミリオンって鬼島グループの経営するアパレルショップだよな? そこで事件を起こしたのに、雇われているってどういう事だ!? 葉月だって今、鬼島社長に頼まれたとアルバイトしているんだぞ? どういうつもりなんだ!?


「木下さんの心配している事は分かりますが、でも大丈夫です、形だけですから、木下さんだから話しますが、実は……」


 そして大沢さんが俺の疑問に答えるように説明をしてくれた。


 簡単に言うと、鎌瀬とかいう奴らは、葉月以外の女性に対しても危害を加えていて、その罪を償うため、被害者の女性達に慰謝料を支払うために鬼島グループで雇ったことにして、多額の慰謝料のために遠い海の上で働いているらしい。


 そこは過酷な職場らしく、罪を償うため反省させるなら持ってこいの場所…… と、いまいちピンとこない説明をされた。


「この国は法治国家ですから、本当なら警察に行って、その後は司法に任せるのが良いんでしょうが…… まあ、これだけにしておきます、とにかく鎌瀬達の件に関してはもう危害を加えられる心配はしなくても大丈夫だと思います」


「そ、そうですか……」


 心配しなくてもいいと言われても…… あまり納得は出来ないな。


「ははっ、あまり納得されてない顔ですね、分かりますよ、私も最初聞いた時は意味が分かりませんでしたから…… その話はとりあえず後にして、次はあの大学生…… ではもうないですが、彼らに関しての話になります」


 大沢さんも意味が分からない? ……それよりも今度はアイツらの話か。


「まず…… の彼ですが、あれから引っ越し先でも引きこもっていたらしく、すぐに出来たです」


 えっ? ……確保? ……らしい? 調査してくれたんじゃないのか?


「そして娘がスマホやパソコンのデータを確認してみたらしいのですが…… 証拠になりそうなものはありませんでした」


「そう…… ですか……」


「ちなみにホテルにも防犯カメラの映像の確認に行きましたが、そちらもありませんでした」


 やっぱり…… 楓の言う通り証拠になりそうな物を残さないようにしていたのか。

 もっと早く動けばホテルの映像はありそうだったが…… 事を誰にも話せないくらい精神的に追い込まれていたわけだから…… 仕方ないのか。

 追い込んだのは俺のせいでもあるし、その事を責めるなんて絶対しないけど。


「ただですね、彼ら三人の内、一人が証言してくれたです、『俺はアイツに『人妻とヤらせてやる』と誘われただけ』と……」


 ……っ!! ……ぐっ! ……ふぅぅぅっ、落ち着け、落ち着くんだ、俺。

 

 何が『ヤらせてやる』だ…… 楓を…… 楓をオモチャみたいに扱いやがって!!


「まあ、白状したのがつい最近らしくて…… 今すぐ彼らに何かをする事が出来ないんですよ」


「何でですか! 白状したなら…… それを証拠に! 楓を…… 楓を救ってあげられるのに!!」


「木下さん、こんな話を聞かせて落ち着いて下さいとも言いづらいですが、落ち着いて下さい、その事で今日はお呼びしました」


 大沢さんは協力してくれているんだ、当たっても意味がない… 落ち着け、俺…… ふぅぅ…… はぁぁ……


「すいません、話を続けて下さい…… それで、呼んだ理由を教えてもらえますか?」


 すると、大沢さんは俺に小さな紙を渡してきた。

 これは…… 名刺か? 


 はっ!? えっ? これって…… この名刺に書かれている名前は……


「木下さん、これ以上私の口から説明するよりも多分納得出来ると思いますので、ここに直接電話をして話を聞いてみて下さい、そして…… 自分の目で確かめて下さい、あとは探偵としての仕事の範囲外になりますので、私から言えるのはこれだけになります」



 …………



 そう言われて、調査結果の入った封筒を持って大沢さんの事務所を後にした。

 そして渡された名刺を改めて見てみた。


 この名前って……本当に大丈夫なのか?


 大物過ぎて不安になるが、大沢さんから言われたからと、俺は意を決して電話をしてみることにした。


「探偵の大沢さんの紹介でご連絡させて頂きました木下ですが……」


『……………………』


「は、初めまして…… それで『・・・・』の件について…… はい…… はい…… えっ? そちらに!? 二人も? あ、わ、分かりました…… はい、その日は大丈夫です…… はい、では…… お待ちしています、失礼します……」

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