リメイク、近付く心の距離 4

「ありがとうございました、それじゃあ…… また連絡しますね」


「はい、今日は…… いや、今日も穂乃果のために付き合ってくれてありがとうございました、お礼はまた今度します」


「はづきちゃんバイバーイ! またねー」


「あはっ! またねー」


 家まで送ると言ったんだが『ちょっと家を見られるのは恥ずかしい』とのことで、葉月さんの最寄りの駅まで送り、今日はここでお別れとなった。


 そして車を発進させて、俺達も家へと帰ることに。


「パパー?」


「んー?」


「パパって…… はづきちゃんのこと、すきなのー?」


 ぶっ!! ……な、何をいきなり! 

 いや、嫌いではないし、どちらかと言えば好きだけど…… それはどういう意味での『好き』なんだ?


「ほのかはねー、はづきちゃんのこと、だいすきだよー」


「はははっ、そうか、仲良しだもんなー」


「それでパパはー? すき? きらい?」


「どっちかというと…… 好き、かな?」


「えへへっ、そっかぁ……」


 ……えっ!? それで話は終わり!?

 いや、好きだよ? ……友達として。


 友達にしては深い仲になったけど…… それでもやっぱり……


『ふふふっ、大樹くん……』


 俺の心の中からいなくなりは…… しないんだよ。


 



 …………

 …………




 昼休憩はゆっくりと過ごしたい派なんだがそうはいかない、何故なら……


「木下さん! 木下さん!」


「どうしたの、草薙くん」


 最近は草薙くんの惚気話を聞く係みたいになっていて、休憩のたびに彼女と仲良くしていることを楽しそうに話しかけてくるからだ。


「いやー、これを見て下さいよ!」


 そう言いながら草薙くんはスマホの画面を俺に向けてくる、そこに写っていたのは、黒髪で清楚そうな美人な女の子だった。


「これが俺の彼女、柑奈ちゃんっす!」


「えぇっ!? これが彼女なのかい?」


 お店の写真では、どこからどう見ても『ギャル』という感じだったけど……


「元々はこういう格好の方が好きだったみたいっすよ、だけどお店で働くために派手にしていたらしいっす、柑奈ちゃんにも色々あったんすよ」


「へぇー…… で? これがどうしたの?」


「どうしたの? って…… ただ木下さんに見せびらかしてるだけっすよ! ああ…… 柑奈ちゃんは俺の女神っす……」


 自慢するためだけに、あんな騒がしく俺を呼んでいたのか!? ……まったく。


 でも彼女と出会って以来、草薙くんは仕事も頑張っているし、私生活もギャンブルをスッパリ辞めて、彼女と過ごす時間を大切にしているらしいからな…… 急に真面目になったのは、彼女が良い影響を与えているからじゃないかな?


「木下さん、彼女がいると幸せっすよー? あっ、木下さんには穂乃果ちゃんって女神様がいますもんね!」


「ああ、俺は穂乃果がいてくれるだけで幸せなんだよ」


「良いなー、俺も早く子供が欲しいっすよ…… 柑奈ちゃんに言ったら『ちゃんと生活が安定してからじゃないとダメ』って言われそうっすけどね、てか言われました」


「い、言ったんだ……」


「当たり前じゃないっすか! ビビっと来たんすよ! 『ああ、俺にはこの人しかいない』って」


 あははっ…… 相当惚れているんだな。


「……こうしちゃいられないっす! 今日も定時で帰るために頑張って仕事をするっす!」


 ああ…… また言いたいことだけ言っていなくなったよ。


 でも、普段はやる気なさそうに見えるけど、いざとなれば積極的で行動力があるのが草薙くんの良い所なんだよな、それを付き合っている彼女が上手く引き出しているみたいだ。


 心配したが、なんだかんだ良いカップルなのかもな。


 そう思いながら…… 俺は草薙くんより年上なのに、中途半端な事をしているなぁ、と草薙くんと比べてしまい、少し恥ずかしい気持ちになった。



 …………



「はづきちゃん、おふろはいろー」


「うん! じゃあ大樹さん、またお先に入らせてもらいますね」


「はい、穂乃果をお願いします」


 前回会ってから一週間、再び葉月さんが家に泊まりに来た。


 何でかというと…… 穂乃果が俺のスマホを使って、勝手に葉月さんを家に招いていたからだ。


 俺のスマホを触っているなー、とは思っていたが、まさか葉月さんにメッセージを送っていたとは…… 

 しかもすぐに葉月さんから『OK』と返信が来てしまったから、今さら『間違いでした!』とは言えず…… また来てもらったってわけだ。


 でも葉月さんが来ると穂乃果も喜ぶし、俺も葉月さんと過ごす時間を楽しいと思っているから…… 正直、会えるのは嬉しい。


 さて…… 今のうちに布団を用意しておくか。



 ◇



「穂乃果ちゃん、次は身体を洗ってあげるね」


「ありがとー」


 あはっ、可愛い…… 穂乃果ちゃんといるだけで癒されちゃうなー。


 ……はぁっ、今週は大変だったな。


 店のルールを破ろうとするお客さんに、あたしの態度が気に食わないとクレームを入れるお客さん。

 おかげでオーナーには怒られるし…… 嫌になっちゃう。


「えへへーっ、きもちー!」


 でも、穂乃果ちゃんと大樹さんと会えたら…… そんなストレスも吹っ飛んじゃった。


 ……今日も可愛がってもらえるかなぁ?

 可愛がってくれるなら、うーんと癒しの特別サービスしちゃお! あはっ。 


「ねぇねぇ、はづきちゃん」


「なーに?」


「はづきちゃんは…… パパのこと、すき?」


 えっ…… 


「う、うん、好きだよー」


 友達として…… うん、友達として…… そう、だよ?


「えへへっ、そっかぁー」


 えっ!? そ、それだけ? ……何だったの、この質問。


「じゃ、じゃあ流すよー」


「はーい!」


 そして…… 何であたしは『好き』と言ってこんなにドキドキしているの?

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