2章 11回目~死体を巡る話~
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――――――キキイイイィィィィィッッッッッッッ!!!!!!!!!!
――――――ドオオオオオォォォォォォォォォォンン!!!!!!!!!!!
◆ 202X年9月6日 21:00 ◆
◇ 六甲山中カフェ ◇
「断る」
『うぅっ……!!』
幼馴染の
わざわざラインではなく電話をかけてきてくれたのに申し訳ないが、だからってさっき彼女が言った頼みを承諾するかというとNOだ。
「よりを戻そうと言われても、俺はもう君とは関わりたくないんだ。ごめんな、藤乃」
『ねぇサっくん……もう一度チャンスを頂戴? また昔みたいに仲良くやろうよ!』
「その昔の思い出を汚したのは、君自身だろ」
昔と全く変わらないあだ名で、俺のことを呼んで来る藤乃。
はたから見れば微笑ましい光景なのかもしれないが、その事実に俺は反吐が出ていた。
確かに幼稚園の頃の俺たちは、実の兄と妹のように仲が良かった。
彼女の父親が警察官で彼女自身も警察官志望だと知った小学生時代、じゃあ俺も一緒に警察官になるよ、と決意をした時もあった。
中学に入って俺が勇気をもって告白した結果、彼女にもにもなってくれた。
だが、そんな関係も、あの日すべて打ち砕かれた。
高一のある日、ラブホテルから警察学校卒配前の金持ちと出て来る彼女を見た、その日に。
そう、あの日俺は彼女を寝取られ、彼女は俺を裏切ったのだ。
「大体君には、あの金持ちの巡査部長がいるじゃないか。あの人と一緒になればいい」
『サっくんも知ってるでしょ……あの人は最低のクズだったのよ! だから詐欺に加担して捕まっちゃったのよ!!』
「三年付き合っておいて、彼を庇う気もないのか。俺のこともそんな風に裏切ったわけだな」
『そ、それは……』
藤乃の言葉は、全てが白々しかった。
なびいた先輩のことを今になってクズ呼ばわりしてはいるが、誠意が一つも感じられない。
大体本当によりを戻す気があるなら、電話ではなく、直接この六甲山中のカフェに会いに来てあの日の謝罪をしに来るはずだ。
「女の子と待ち合わせてるんだ、俺。電話とはいえ、君と話してると勘違いされかねないし困るんだけど」
ある種の牽制のつもりで、俺はそう言った。
これ以上何かくだらないことを言ってきたら、すぐに電話を切るつもりだった。
そもそも俺がこの場にいるのは、こいつに会うためではなく、今の恋人―――バイト先の後輩の
こいつなんかには何の用事もない。今この瞬間も、これからも。
『………………じゃあ、じゃあ、サッくんが……』
今この話をしている瞬間ですら、俺は虫唾が走りっぱなしだった。
次くだらないことを言えば、通話を切ってやる。
そう思って、俺は彼女の次の一言を待った。
『サッくんが人を轢き殺したこと、警察にバラシてもいいの……?』
「………………………………………………………………………………………………」
…………………………………………何でそれを……………………………………?
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