第6話

次の日、舞花は手紙を握りしめ、朝から落ち着かなかった。授業の内容も頭に入らず、ただ一つのことだけが気になっていた。夏音にこの手紙を渡せるだろうか――いや、渡さなければならない。そう自分に言い聞かせながら、放課後のチャイムが鳴るのを待った。


放課後、教室の窓から差し込む夕日が、教室を暖かく照らす中、舞花は意を決して夏音の席へと向かった。夏音はまだ荷物を片付けていた。


「夏音、ちょっといいかな?」舞花の声は少し震えていた。


「ん?どうしたの、舞花?」夏音が微笑みながら振り返った。その笑顔を見て、舞花はさらに緊張したが、ここで立ち止まるわけにはいかない。


舞花はそっと手紙を差し出した。「これ、私からの手紙…読んでほしいんだ。」


夏音は少し驚いた様子だったが、すぐに穏やかな表情に戻り、優しく手紙を受け取った。「わかった。ありがとう、舞花。あとでしっかり読むね。」


その一言に、舞花は少し安心したものの、不安がさざ波のように広がる。今の瞬間は、確かに勇気を出した証だったが、この先どうなるのかはまだ分からない。自分の気持ちを正直に伝えたことで、舞花は少し肩の荷が下りたように感じたのだった。

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