第七話 帰陣

俺たちがフルデリ城に近づくと城の方から馬がかけて来た

「若様!おかえりなさいませ!」

馬上にいたのは父の懐刀であるカリンだった


「イヴァン様が評定の席にてお待ちです!」

その声にセリスとハンター、ナタリーを連れて評定の席に急いだ




評定の席に向かうと鎧を着込んだ父と武官が動員を終えて作戦を練っていた

「父上、今戻りました!」

俺もその席に入ると父は顔を上げニヤリと微笑んだ

「ルイ!ようやった!よくノーブル殿から200の兵を借り受けてくれた!これで数的劣勢どころか優位すら取った!この戦、勝ったぞ!」

「ありがたきお言葉。この方はノーブル殿の軍を率いるナタリー殿です」


ナタリーを手で示すと父は好色な顔を浮かべてナタリーを見ていた

「ゴホン、父上!そのような視線はおやめくださいませ友軍の将ですぞ」

俺の諫言に父は慌てて咳払いをして俺の方へと向き直った

「よ、よろしくお願い致します」

ほらぁ、ナタリー殿も困ってるじゃないか


「それで父上、攻略目標の説明をお願いします」

俺が促すと目を泳がせていた父はスッと武人の顔に戻ると絵図を示した

「今回の攻略目標はこのルカント城だ。城主はキース・ウォーデン。わしと同じく先の内乱のゴタゴタで立ち上がった成り上がり者だ。ただ、城の規模感としては廃城を修繕した我らと比べて主君だった元の城主を惨殺して強奪したそうで、倍ほどの勢力を誇っている」

なるほど、侵攻先は主君殺しか。容赦なくいけそうだ

そうなると敵陣からの裏切りも期待できるかもしれないな


「敵はおよそ350、対して此方はベートン家からの援軍を足して400、数的有利で正面からぶつかっても勝てよう」

「えぇ、ですがベートン家はお家騒動の決着がまだですので兵をいたずらに減らせません。なので一計を案じました」

俺の言葉に父は片眉をあげて続ける様に促す


「まず、ルカント城の北に位置するシーバル城の兵が手薄であると言う流言をいたします。さすれば主君を殺すほどの野心家であるキースは兵を率いて北へ向かうでしょう。守兵として100ほど残すでしょうが我らは400、城攻めの定石である3倍から4倍の兵力は確保できることになり容易に城を落とせましょう」

俺の提案に父は顎を撫で付けながら嘆息を漏らす


「なるほどな、さらに兵の消耗を抑えられると言うことか……。気に入った!流言の件はお前に任せる。はなから野戦に誘き出すつもりであったから失敗しても構わぬが成功すればお前を此度の勲一等とする!」

父の叫びに武官達がざわめいているが父の言葉に反論はできない様だった


「お任せください!すぐにでも奴らの城下へ向かい流言を流して来ましょう」

この戦では然程大きな活躍はできないと思ってはいたが行幸だ

勲一等ともなれば奪い取った城も与えられるかもしれない。そんなことを思いながら代えの馬に飛び乗って俺と近習の二人は帰って来たばかりではあるがすぐに西のルカント城へと向かった。

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