スキル・・・?
「これも、これも。これもー!」
家を出て森の中を少し歩くだけで色々な薬草やキノコが目に入りテンションも上がってしまう。
結局俺はラミスに袋を持ってもらっていて、とりあえず片っ端から採れるものは袋にいれていく。
「こんなに何に使うんだ?」
「それは帰ったら説明するけど、今は使えそうなものとか食べれそうなのをいっぱい集めるのが先!」
「ふー。」
ラミスが呆れたように溜息をつくのを聞き流し、どんどん袋に入れていると30分程だろうか?袋がいっぱいになってしまった。
「もう入らんぞ?」
「えぇーっ!まだ全然入ると思ってたのに!」
「いや充分集めてるじゃないか。ほら持ってみろ。」
重い。そしてパンパンで目の前に袋を置かれたら俺の背より高さがある。そっかー。全然袋が足りないから、袋に代わる採集用のカゴとか作らなきゃかなー?
「そんなに集めたいなら収納スキルを使えばよかろう?」
おや? また新しいワード。しかもスキル? 収納とは?
「何そのスキル? ラミスは使えるの?」
・・・ ラミスは無言だ。
「俺にも使えるスキルなの?」
そもそも俺はスキルなんてものは何も知らないわけで、使い方なんて当然わからない。
「使えそうな気はするが・・・」
「どうやって使うの? しかも収納スキルってどういうやつなの? 名前からして便利そうだよね?」
俺は一気に捲し立てるようにラミスに質問する。
「まぁ待てまて。収納スキルはストレージという呼ばれ方もする。ストレージは簡単にいうと空っぽの空間のようなところに物を片付けることが出来るスキルだな。」
なにそれ。もの凄く便利。それを俺が使える? だったら使いたい!
「すごいねそのスキル? でもスキルってどうやって使うの? 魔法とは違うの?」
「ははっ。さっきから質問ばかりだな。」
優しい目つきでこちらを見ながら返事をしてくれるラミスに俺はさらに
「スキル使いたい! ラミス、使い方教えて!」
「こらこら、慌てるな。落ち着け。」
「儂も詳しくは説明出来んが、簡単に言うと、ぱってやったらパパパッて感じだな。」
「なにそれ。。。」
「使うために身に付けるものではなくて、もともともってる素質があって、それがスキルに変わるんだったかな確か。だから感覚でしか儂も伝えられんのだよ」
結局全くわからない。けど、一つわかったのはラミスが使えるって言ってくれたということは、きっと俺には使える素質があるはずだ。
問題はそれをどうやって使えるようにするか。
「あーもう全然わかんない。」
「なんとなくだが、ユウは袋に出したり入れたりするだろ? それと同じように袋があるイメージでやってみたらどうだ?」
なるほど。何もない空間にものを出し入れしようとするからイメージが湧かないなら、実際身近で自分が使っているものを基準にイメージしてみたら良いのか。
ここで、俺は気付いて無かったがチート能力による補正と前世の記憶が役に立った。
「たしかあのネコ型のやつのあいつのポケットが袋代わりになるんじゃ?」
いつものラミスとは逆で俺は暫くの間、キノコを片手に持ってブツブツ言っていた。
「こうか? 違った。 これなら?」
何度も出し入れするイメージ動作を繰り返すうちに頭の中でそのイメージがどんどん鮮明になっていく。
そして、
「こうかっ! 」
ようやくキノコ一つを収納することに成功したときにはもうだいぶ日が傾いていた。
なんとなく掴めた手応えを忘れたくなかったが、
「ユウ、もうそろそろ帰るぞ。儂は酒が飲みたい。」
「あっ、ううん。もうそんな時間?」
確かにかなり腹が減っている。集中し過ぎたかな。
「確かにお腹も空いたし、今日は付き合ってくれてありがとう! それにストレージのことも!」
感謝の気持ちを忘れるな。
これはパルも言っていたし前世の俺も記憶でも言われていたというか、体感していたような感覚があった。
なんでだろう? 実際今ある記憶としては食べ物や知識の一部等ばかりで、名前とか年齢とか自分に関することは思い出せてないのだ。
ただなんとなく不意にふと頭の中を掠めるというか、感覚的な部分で認識していることがあり、感謝に関してもその一部だと思う。
「なに、礼などいらん。儂には人のことはよくわからんしな。」
「そっか。でもありがとう。ラミスのおかげで俺なんかやっていけそう。今日は色々収穫出来たから晩ごはんは豪華にしよう!あっ、でもまだストレージがうまく使えないからラミスには袋持ってほしい!」
「やれやれ。しょうがないな。その代わりうまい飯を頼む。」
「任せて。」
そんな会話をしながら帰路につく。
「ただいまー、 おかえりー。」
一人二役状態だが、それくらい俺はまだテンションが上がっていた。
「袋持ってくれてありがとう。」
そう言って受け取った袋の中身を整理する。
晩御飯になりそうなのは・・・そう考えながら並べた収穫物を見比べる。
メニューとしては朝と変わらずキノコと木の実の炒めものではあるが、食後のデザートにも木の実を食べられそうだな。
ラミスはすでに酒を飲み始めている。
「ラミス、朝使った魔石ってまだ使えるの?」
「あー、そうだった。いかん、すぐ忘れてしまう。ユウが子どもらしくないからだな。もう今日は酒を飲みたい気分だし料理はまた明日にしよう。それにユウを待っている間にこれをもらったのも忘れておった。」
なんてフリーダムなんだろう。だけどラミスは普段はきっとこんな感じなんだろうな。
そしていつの間にかラミスの手元には緑色をした大きな丸い球体をした果実があった。
それをポーンと投げ渡されキャッチする。5歳の俺が受け取るには十分な重量と大きさだ。
そして、ん? この感覚、投げられたものをキャッチする・・・? 何かが記憶を刺激する。大事なことのような気がするが今は何も思い出せない。
まあいっか。
「そいつは、その大きさだと滅多に手に入らないし美味いぞきっと。」
渡された果実は甘い匂いを漂わせている。
「これは」
俺はピンときた。メロンの香りだ。前世でも高級品で滅多に口にすることはなくたまに孤児院に来るお客さんが手土産で持ってきたものをみんなで切って食べていたような。
そしてメロンだとしたら種があるはず。確か畑みたいなところが勝手口から出たところにあったよな? そこで育てられる?
とりあえず切りたいから調理場に行くか。
そう思い調理場に向かうと、そこは朝見た時以上に綺麗に掃除も片付けもされていた。
「あれ? なんで? 魔法じゃん! でも誰が・・・ ラミス・・・ なわけないか。」
そう思って周囲を見回してみても綺麗な空間ということ以外は何も変わったところはない。
ただ、俺の目線だからより気づけたことがある。地面に台が置いてある。朝はなかったから調理台が高すぎたけどこれに立てばきっといける。
誰かわからないけど、こんなに親切なことしてくれてありがとう!
外は夕日が大地を照らしている。今の季節は春の終わり、5月くらいの印象だろうか? 森は新緑が太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
換気も込めて開けた勝手口のドアから爽やかな風が吹き込むのを肌に感じながら俺はメロンもどきを抱きかかえていた。
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