第2話
「ああ、おぼえているよ」
と、俺は答えた。樋上の声が急にかわった。たぶん、二つのスマホのその向こうで彼はふわりと笑っているだろう。
「そうか。あいつらと――仲間にならないか?」
「えっ……それは、その、辞典にのってる意味での《仲間》?」
と俺は聞き返した。
「ああ、そうだよ」彼がこたえる。「……というか、それ以外の何を指して仲間なんだよ」
「へえ……それもそっか、でも、」ゴミくずでいっぱいのアパートより、ずいぶん楽しそうじゃないか。
行こう、とおもえた。
*
――樋上信也の帰国――
樋上信也は電話をした三日後に日本に帰国した。羽田空港で待っていたのは端戸の車だった。
「沼津までいけるか?」
「うん、長距離ドライブなら任せてよ」
端戸はカバンの中からしばらく何かを探していたが、あきらめた。「ゴールド免許証、どこにやったかな……」
信也はそれに苦笑しながら、でも、お前らしいなと思った。
*
「じゃあ、高速に乗るぞ」と俺がいった。
樋上は珍しくうきうきとした態度を見せた。俺は、作家同盟の会の初期メンバーとしての焦りを感じていた。
電話の続きは、たしかあんなだった。
「作家同盟の会――。SF好きの博士と知り合いになったんだ、この国で。日本生まれだから、カタコトだけど日本語も話せるさ」
「で、死者をある目的のためだけに生き返らせることに成功したのか」
「そこまではいってないけど、生前の彼の考えから答えを導き出すようなAIを開発したんだ」
「おお! すごいじゃないか。AIってのが何なんだかは知らんけど多分、スマホがニンゲンみたいに考える感じか」
「そうらしい。苦心5年だとさ」
5年――。その重みに耐えながら俺は笑っていた。
*
回想を終えて、俺は大宮のどこかのインターチェンジや、ジェットコースターのクライマックスのような大きな曲がり角に向けて、意気揚々とアクセルを踏み込んでいったのだった――。
作家同盟の会 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel
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