第19話
「
「なあおい
「何!? なんの話だ!?」
「春も言うとったやん、三会會の仕事のうちのひとつ──」
──麻薬の密売。
くん、と鼻を鳴らす二式に逆に腕を掴まれた
「麻薬……いや違う、これは阿片か!?」
「俺には分からん! 嗅いだことないし……」
「
今にも妹に駆け寄りたいはずの
ここには本当に、
いるとするならば──
(おかしい、腑に落ちん、僕の中の『鬼』と香港の『
「
叫ぶ
「ここは第四撮影所やぞ
気付いて、体当たりをした時には既に遅かった。二式の痩躯では
「言わんこっちゃない! 落ち着けや! 天井見ろ! めちゃくちゃ狙われとるぞ!! これ全部
「落ち着いていられるか!
「せやから落ち着け、
体を震わせながらも立ち上がろうとする
郭封鈴との会話を思い出す。彼女は、日本人嫌いのアベル
分からないことばかりだ。
だから今は、目の前にいる
傍らにいる
秘密。葛原二式も抱えている、秘密。
床に膝を付いたままの
そうして腹から声を出す。口にする予定がなかった響き。
「……亞媽!」
お母さん。
第四撮影所に響き渡る渾身の叫びに、応じる者はいない──いや、いる。
広い第四撮影所。その四方の暗がりに、闇よりもよほど黒い何かが蠢いている。
──ああ、あれが、母か。
本当だったのか、と
ただ、母親が。記憶の中に薄っすらと残る優しく美しい笑顔を浮かべた母親は、二十年以上もこの暗がりの中に閉じ込められていた。
辿り着けるとは思っていなかった。それなのにようやく辿り着けた。
誰かが招いてくれたのか、それともすべては罠なのか。
「お母さん、僕や! 二式が来たで!」
葛原二式を産んだ、母親の名前だ。
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