第18話
──1920年代。大陸、上海で
──さて、香港に移住してきた姫一族はまず何をしたか? 彼らは手始めに、香港で既に映画産業で名を馳せていた会社を潰し始めた。もちろん姫一族が直接手を下したわけではないよ。彼らは
だが、姫一族が目を付けた俳優や監督に関しては別だ。死なない程度の加害を行った上で、姫一族の人間が助けに入る。そうして言うんだ、「自分たちは三会會と対等な立場で映画製作を行っている。我々の会社に入れば、あなたにも、あなたの家族にも、これ以上の加害行為は許さない」ってね。唐突に暴れ始めた三会會によって仕事も生活もすべて奪われた人々が救いを求めて
──ところで、きみたち。どう思う? なぜ
──ヒントを与えよう。大丈夫、私は三会會と契約をしているだけの情報屋だからね。いざとなったら契約なんて一方的に破棄して、どこか遠く……どこに行っても三会會の支部は世界中にあるとはいえ、私を含めた四季を名乗る情報屋の繋がりだって負けず劣らず広く強い。どこかの誰かのもとに逃げ込んでしまえば、三会會だってそう簡単には追ってこられないさ。え? このタトゥー? こんなの、上からなんか綺麗な紋様を描いてしまえばすぐに消せるよ。気にするようなものじゃない。それよりヒントだ、若いおふたり。三会會のシノギは日本の
──そろそろ結論が見えてきたんじゃないか? 葛原二式、
──命が惜しくないというのなら。撮影所に戻るといい。私は──春天はきみたちを止めることができない。
──ただ無事であれと祈っているよ。本心だ。きみたちの行動は、勇気などという美しい感情を動機とするものではない。蛮勇だ。愚かだと思う。でも私は、愚かな若者たちが、結構嫌いじゃない。
──ああ、最後に。葛原二式、きみの通訳をしていた女性に対して哀悼の意を示す。彼女は本当に勇敢だった。早くに、きみの正式な通訳担当である逢坂がまともな人間ではないことを見抜き、誰からの助けも得られない若者、葛原二式を自分の手で守ろうとした。ああいう人間から順に命を奪われていく、
──無事でいてくれ。そうだな。五十年も経ったら、また会おう。
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