決別 2

 好きだとか愛しているとか、言い募った。言葉なんていくらでも嘘がつける。けど、行動は無理で、だいたい行動からばれる。

 行為中、気遣ったつもりだったけれど、無理はさせていないだろうかと僕は後でから不安になった。


 かわいそう。


 幼いながらに残酷なことを強制させられて、親からも祖母から愛されなかった子。

 同情の気持ちがたしかにあったが、キスしながら「幸せだから、死んでもいいです」と苺果ちゃんが言ったので、同情より緊張が勝った。


「幸せにしてあげると、約束はできないけど」


「断定できない?」


「未来は確定じゃないから」


「でも苺果、約束は欲しい~。言葉がほしい! 未来永劫、愛してるって言ってほしい!」


「永遠はないけど……ずっといっしょにいるよ。なにがあっても、ずっといっしょにいるの、約束する」


「……ありがとっ」


 苺果ちゃんは涙は見せなかったけれど、涙声だった。


 事後、射精の気怠さに包まれながら、苺果ちゃんと裸で二人寝そべって、話をした。


「ねえ、指輪買ってくれる? 苺果、自分で言うのもなんだけど肌白いから、シルバーかピンクゴールドがいい~。ただのゴールドじゃ絶対だめ」


「好きなの買ってあげるよ」


「結婚式は? ドレスかわいいの着たいんだけど」


「呼ぶ人いないから、挙式はしない。あーでも結婚式場、貸し切って、二人だけで挙げるのはいいかもね」


「わあ、それっていいね。密葬みたい」


「お葬式を例にあげるな」


 二人で将来の妄想を共有した。

 幸せな時間だったと思う。


 夢をみせてあげられたなら、よかった。

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