過去との対峙

実家 1

 数日、苺果ちゃんの部屋通いが続いた。片づけはだいぶ捗った。


 苺果ちゃんは今まで神経が張りつめていたぶんを取り戻すかのように、睡眠時間が長くなった。


 バイトから帰ってきても、ぐっすり寝ているとかよくある。


 うつ症状が出ているのかもしれない。医者ではないから、わからないが。


 今度、苺果ちゃんがメンタルクリニックに行く際について行こうと思っている。



 コンビニの外の空が明るくなってくる感覚があって、完全に眩くなると、時間だ。


「お疲れ様です、店長」


「お疲れ様。おはよう」


 店長は今日もきりっとしている。


「急におやすみを頂くことになってしまい、申し訳ありません」


「いいよ、長崎羊はいつも頑張って働いてるし」


「ありがとうございます」


「ところで、相談があるんだが……」


 ◆


 バイトから、苺果ちゃんの家に帰る。


「ただいま、苺果ちゃん、おやすみがとれたよ」


「ありがとう! おはよー」


 暖房をガンガンつけているので、室内は暖かい。

 苺果ちゃんはキャミソール姿だった。

 キッチンに立って、味噌汁をつくっている。

 朝からそんな手間のかかることをしているのは僕のためだ。


「そんなんじゃ風邪ひくって言ってるでしょ」


「膀胱炎にはなるけど風邪はひかないもん」


「寒いから膀胱炎になるんだよ」


 ちょっと怒り気味に言ったが、苺果ちゃんはどこ吹く風だった。


「仙台に一緒に行ってくれるんだね?」


 味噌汁の味見をしつつ、苺果ちゃんは問う。


「うん、行くよ」


 僕は覚悟を決めていた。


 苺果ちゃんの過去と向き合うと。

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