イケナイこと 9

「それはそうだけど、今日は一緒に入ります!」


 苺果ちゃんは断言すると、背中にぴったりくっついてくる。弾力のある感触が生々しい。


「と、とりあえず離れてくれない……?」


「このまま体を洗ってあげます!」


 冷静になるために頭を流した。くらくらする。


「じゃ……じゃあ、僕も、苺果ちゃんの体洗うけど、いい……?」


「いいよー!」


 雑な快諾を得た。


 苺果ちゃんが言いだしたら曲げないということもわかっていたので、もう、好きなようにさせる。


 苺果ちゃんは繊細な手つきで、僕の体に触れる。

 野菜を洗う時のような手つきを想像していた僕には意外だった。


 ちゃんと泡立てて洗ってくれて、洗い終わったあとはシャワーで丁寧に流してくれた。


 僕が洗う番になる。


「えええ、これ恥ずかしいよ」


「苺果ちゃんが言い出したことでしょ」


 苺果ちゃんは恥ずかしがっていたが、腕をとってあげて、洗ってあげた。

 やられたら、やり返します。


「そろそろお湯溜まったね。一緒に入ろう」


 苺果ちゃんの体から泡を流して、湯舟に一緒に入る。


 僕の足の間に、苺果ちゃんが入るような形だ。


「光るのすご~い」


 照明を落として、湯舟だけ光らせていると、苺果ちゃんはとても喜んだ。


「ねー、わかってるの? お兄ちゃんといたいから、プールで水かけてたんだよ? いまだって一緒にいたいから一緒にいるんだよ? わかってる?」


「わかってる、わかってるって」


「わかってな~い!!」


「あっ」


 顔にお湯をかけられる。そんなに熱くないが、びっくりする。


 お返しに、苺果ちゃんの露出した耳を噛んだ。


「ひゃん!」


 苺果ちゃんは体をそらせて、びくびくと震える。

 大袈裟すぎて、笑ってしまった。すこし、せいせいした。


 部屋着に着替えて、一緒にベッドの上でくつろぐ。セミダブルのベッドは悠々として気持ちいい。


「ねーお兄ちゃん、しないの?」


「んー眠いから」


「ええ~つまんないよ~! ここまで来たら、やりたいよ~」


 苺果ちゃんはじたばたとベッドの上で暴れる。子供みたいだ。


「普通発言が逆なんよ。おぢたんの発言なんよ」


「だって~、一回もお兄ちゃんとしたことない! してみたい! 抱かれてみたい! お兄ちゃんが何回できるのか興味がある! 挿れながらキスしたら絶対天国気分!」


「もうやめて、恥ずかしいから」


「お風呂に一緒に入っておいて、恥ずかしいってなに!?」


 問い詰められてしまった。


「んーでもゴム持ってないし」


「じゃーん、苺果が持ってきました」


「え」


 苺果ちゃんがベッドから飛び降りて、荷物を漁って、小さな箱を取り出した。


「ローションもあります!」


 かたまる。その展開は予想外だった。

 しかもそういうものを女の子に買わせるとか、僕の立場がない。


「ねー、やろー。イケナイこと、しよっ」


 うだうだと苺果ちゃんは駄々をこねていたが、僕は乗る気はなかった。

 苺果ちゃんを手招きして抱きしめて、布団の中に押し込めてしまう。


「やりません。寝ます」


「えー!!」


 消灯してから、苺果ちゃんとキスをする。闇の中で絡み合う。その体を確かめる。

 本番なんてしなくても、それだけでも十分だ。



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