イケナイこと 5

 苺果ちゃんの下着を脱がすこともしないし、挿入するようなこともない。


 スマホのアラームが鳴った。出勤時間の一時間半前に鳴るようにしている。


 最後に苺果ちゃんのブラを直して、服のボタンを留めなおす。


 ぽや~っとした目で苺果ちゃんが僕を見てくるので、もちもちのほっぺを引っ張った。


「……物足りない」


 苺果ちゃんがつぶやくので、僕はくすりと笑った。


「かわいいね」


「……ありがと」


 そっぽを向いてしまった。


 僕は苺果ちゃんと離れてキッチンに向かい、洗い物をはじめた。皿やフライパンなど、食べた側が片づけをするべきだろう。おなかはいっぱいだけどやるべきことのために体は動く。


 こんな僕に料理を作ってくれる人がいることは幸運だ。

 結婚の話も、本気ではないとしても、してくれる人がいることも幸福だ。


 僕は今、幸せなのだろう。


 ――視界が潤む。両親が死んで、天涯孤独になってしまった上に友達もおらず、彼女もできない人生だった。もう人生はこのまま終わるのだと悲観していた。なのに、こんな人が現れるなんて、思っていなかった。大好きだ、苺果ちゃんのことが。もし苺果ちゃんがいなければ、僕の人生は闇に閉ざされてしまう。


 苺果ちゃんに、なにもかも捧げよう。

 そうして捨てられたら、今度こそ命を捨ててしまおう。

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