イケナイこと 3

炒飯は美味しかった。


「焦がしにんにく醤油が隠し味なんだよ!」とこの前言われたので、それのおかげで美味しいのだろう。


僕のガスコンロの下には、にんにくが詰められた醤油瓶が苺果ちゃんの手によって常備されている。料理上手だと思う。


「ごちそうさまでした。美味しかったよ」


「いつも炒飯だと飽きちゃうよね。次はもっとクレイジーな味にするね」


「しなくていい」


苺果ちゃんは僕の食べ終わった皿をさげて、シンクに片づけた。


その後は、テレビを見ながら、ソファに二人並んで座る。


「ね……あのね、お兄ちゃん、ぎゅーしよ」


苺果ちゃんはいつでも恥ずかしそうにそういう要求をする。

僕が両腕を開くと、おずおずと苺果ちゃんが抱きついてくる。


体がやわらかい。薄桃色の繊細な髪質からは、いい匂いがする。

香水をつけているわけでもないのに、なぜこんないい匂いがするのだろう。不思議だ。


「……好き。好きだよ、お兄ちゃん」


しっとりと、苺果ちゃんは囁く。


「うん、僕も苺果ちゃんが好きだよ」


指を絡め合う。苺果ちゃんの指は、細くて白い。白魚のような手という表現があるけれど、正にそれだ。


他愛のないバラエティ番組をBGMに流しながら、僕らはキスをする。

もちろん唇も柔らかい。舌を絡ませて、ぬるい唾液を交換しあう。

ひととおり苺果ちゃんの腔内を蹂躙したあと、唇を離して、苺果ちゃんの顔をまじまじと見る。彼女は照れながら僕を見つめ返してくる。


「……お兄ちゃん、結婚しよ」


「うん、いいよ。結婚しよう」


苺果ちゃんの白いケロイドで、でこぼこした腕を一撫でする。


いつものやりとりだった。

僕はお金にも困っていない。ただ人生に一切の希望が持っておらず、死にたい。

苺果ちゃんはちょっと破滅的だけど、それで僕の人生が壊れても構わない。


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