イケナイこと、しよっ

イケナイこと 1

 僕のバイト先は家から歩いて十分の近場にあるコンビニだ。


 僕のシフトは22時から朝7時までの休憩1時間実働8時間のバイト。

週に5日間入っている。


長崎羊ながさきよう、夜勤中の迷惑な客のことなんだけど……」


 朝6時~7時が僕の出勤時間帯での最後のピーク。

 朝7時前になると、店長が出勤してきて、業務内容の引継ぎをする。そこで指示を伝えられることもしばしば。


 店長はひっつめ髪にした凛とした女性で、僕のことを必ずフルネームで呼ぶ。

身長は170センチあって、女性としてはデカイ。肩幅もデカイ。存在感が強い店長だ。

 たしか年齢は二十五歳くらい。

 店長の胸元には、真室川まむろがわと書かれたネームプレートがつけてある。

が、僕は店長をあまり名前で呼ぶことはなかった。


 伝達事項の確認が終わると、店長は相好を崩し、「朝ごはんに廃棄食べていきなよ。カレーの廃棄出てたでしょ。好きでしょ、カレー」などと言う。

このコンビニでは、廃棄は店内で食べるなら自由に食べていいということになっていた。


 僕は適当に「ありがとうございます」などと答える。

 会話になっているのかなっていないのかわからなかったが、とりあえず、店長とコミュニケーションはとれていた。(僕がそう思いたいだけかもしれないが)


 僕はあまり会話が得意ではない。


「今日は帰ったらなにするの?」


「寝ますね」


 即答する。


「長崎羊はそればっかりだな。たまには遊んで気晴らしでもしてきなさい」


「……まあ、そのうち」


 脳裏に苺果ちゃんのことが思い浮かぶ。


「そのうち、遠出したいとは思ってます」



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