魔王の妹にTS転生したのでメスガキムーブで世界征服を狙うことにした

第1話 目覚めたら魔王の妹だった

「ポン太、あんまり走るなよー」

俺、尾崎純也（おざきじゅんや）は日課である犬の散歩をしていた。

部活から帰ってきたらまず最初に散歩に出かける。

閑静な住宅街を歩きながら飼い犬と共に眺める夕日ってのは悪くない。

「よしよし、良い子だ」

「ワン！」

いつも元気いっぱいなポン太は俺にスピードを合わせてくれた。

頭を撫でると元気に吠える。

可愛い奴め。

そんな、いつも通りの平和な時間だった。

「…ん？」

何か凄い物音が俺の背後から聞こえてきた。

何事かと振り返れば、歩道に乗り上げて車体を縁石にぶつけながら俺の方に迫り来る車の姿が。

「えっ、ちょっ！？———あっ！！」

「ワンワン！」

咄嗟に逃げようとしたが、動揺のあまりつまづいて転んでしまった。

まずい、終わった…。

せめてもの思いで俺はリードを手放した。

「ポン太、逃げてくれ…」

「ワンワン！！」

俺の思いが通じたのか、歩道から逃げたポン太は俺の方を心配そうに見つめて叫ぶ。

なんとか俺は身体を起こしたが、あと2秒もすれば車は俺とぶつかるだろう。

こんな時、思考が加速して周りがスローモーションに見えるというのは本当らしいな。

ああ、ごめん。

お母さん、お父さん、姉ちゃん、ポン太…。

俺は心の中で家族に別れを告げ———

「ワンワン！！！！」

——意識を失った。

* * * * *

「——るの？」

……ん？

なんだよ、うるさいな。

もう少し寝させてくれよ。

「———いるの？——ているの？」

だからもう少し寝させろ…って、あれ？

……どうなってるんだ？

俺は確か車に轢かれて…。

「——聞いているの？」

じゃあこの女の人は誰だ？

病院の人、ではなさそうだな。

なんで悪魔みたいなコスプレした人に俺は声をかけられているんだ？

「…ようやく目を覚ましたのね」

目を覚ました？誰が？俺がか？

じゃあやっぱりこの人は医者なのか？

「…こ、ここは、病院、ですか？」

なんだろう、声が出しにくいな。

やっぱり事故の影響か？

「何寝ぼけてるの？ここは私の城。魔王城。

寝ぼけてないで支度しなさいシルヴェンナ」

え？

シルヴェンナ？誰のことだ？

…………まさか！？

「…俺が、シルヴェンナ？」

尋ねると、部屋の扉から出ようとしていたコスプレ美女が振り向いて答えてくれた。

「だからいつまで寝ぼけているの？あなたは魔王である私の妹、シルヴェンナ＝ヴァルクライトでしょ？まったく、私は行くから」

そう言うと彼女は部屋から出ていった。

…しかし、これは夢か？

「…」

いや、夢にしては意識が鮮明すぎるし、視覚や聴覚といった身体機能も万全な気がする。

そしてさっきの彼女のセリフ。

「俺が、魔王の妹、シルヴェンナ?」

流石に、そろそろ認めざるを得ない。

あまりにも現実味がないが、実際にこの身に起きていることなのだから認めるしかないだろう。

俺はシルヴェンナ=ヴァルクライトとして生まれ変わっていたのだと。

「…やっぱり、俺の意識と連動して動かせる」

腕を動かそうとすれば思ったように動かせる。首を曲げれば思ったように曲げられる。

やはり、この身体は俺の身体だ。

少しづつ現実を理解してきた俺は、次にこの部屋を見回してみた。

全体的に茶色い色をした、文字どおりに暗い部屋だ。そんな部屋の真ん中に天蓋付きのベッドが置いてあり、そこに俺は座り込んでいる。

そして、俺は部屋の片隅に姿見が置いてあることに気がついた。

俺はベッドから飛び降りてそこに行き、自分がどんな姿をしているのか確認する。

「…なっ！！」

そして鏡に映った自分の姿を見て驚愕する。

10歳前後と思われる少女の身体。

やけに露出度の高い服を着ている。

頭からは小さな角が2本生え、むき出しの背中からはコウモリのような翼が一対生えている。

更に、お尻の少し上からは黒い尻尾が伸びていた。

「……はは、ははは」

正直、俺はもう楽しくなっていた。

この現実離れした現実に俺は興奮している。

この際、一才を疑うことなく全てを受け入れていこう。

俺は異世界で魔王の妹として生まれ変わった。

エロい見た目の幼女、シルヴェンナ=ヴァルクライトとして！！

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