第5話 皇帝の真意

翌朝、霜花は昨夜の出来事を皇帝に報告するかどうか悩んでいた。彼女が襲われたのは皇帝の密命に従っていた最中であり、何者かが彼女の動きを知っていたのは明らかだった。しかし、誰にこの情報を伝えるべきなのかがわからない。もしも宮中の他の女官や妃たちが関与しているなら、信頼できる相手は限られている。


「このままでは……」

霜花はふと宮廷の庭園に目をやり、考え込んでいた。


その時、彼女の前に皇帝が現れた。


「霜花、お前の昨夜の任務はどうだった?」

廉明の低い声が響く。彼の顔には普段と変わらない落ち着きがあり、冷静な眼差しが彼女に向けられていた。


「陛下、実は……昨夜、私は襲われました。」

霜花はすべてを打ち明けることにした。廉明の顔に一瞬驚きが走ったが、すぐにそれを押し隠した。


「誰に襲われたか、分かっているのか?」


「まだ確証はございませんが、麗華様の侍女が追っていたように見えました。」

霜花は慎重に言葉を選びながら答えた。


「麗華か……」

廉明はしばらく黙考した後、重くため息をついた。


「後宮の陰謀は深い。お前が巻き込まれたのは偶然ではない。だが、俺のそばにいる限り、安心してよい。」


霜花は皇帝の言葉に感謝しながらも、心の奥底で何か引っかかるものを感じていた。彼女が後宮の陰謀の中でどのような役割を担うことになるのか、まだわからなかったが、ここで引き下がることはできなかった。


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