Bad end (結末)
「冷子が死んだ。」
研究室の扉を勢い良く開けて、入ってきたケビンは出会い頭にそう呟いた。ケイトは研究の手を止めて、ケビンの方に目を向けた。ケビンは息を切らして、扉の前に立っていて、右手には新聞紙が握られていた。
「……冷子はイカレたC3から逃げられなかったのね?」
「……そうみたいだ。
最後にイチかバチか警察に通報したらしいが、それを盗聴されたらしい。警察が冷子の隠れている場所に向かったら、もう既に……。」
「……。」
「逮捕されたC3のメンバーの一部の証言では、冷子を確実に撃ったと言っているそうなんだ。」
「ちょっと待って! C3のメンバーは逮捕されたの?」
「ああ、冷子が潜んでいた場所で気絶していたらしいな。」
「どういうこと?」
「詳しくは知らないが、全員スタンガンで気絶させられたみたいだったらしい。何かの電子機器がショートしたのかもしれないな。」
「電子機器がショート? それは限度があるでしょ。
だって、テロリストが水中にいたなら理解はできるけれども、全員空気中にいたんでしょ。空気中に放電して、周りの人間を気絶させるような高電圧なんてありえると思う?」
「確かにそうだが……。」
「おそらくそれは冷子が仕掛けた罠だったんじゃないかしら?
冷子は全く別の場所にいて、そのテロリストを罠にかけるためだけに、その電撃爆弾のある所に呼び出したとかは考えられないの?」
「いや、冷子は確実にそこにいただろ。だって、さっき説明した通り、メンバーの一部は冷子を確実に撃ったと言っているし、廃墟の床には出血があったそうなんだ。
テロリストのメンバーは一切出血していなかったから、冷子が撃たれて、出血したことは確実なんだよ。」
「じゃあ、テロリストを巻き添えにした特攻だったってことなの?」
「そうかもしれないな。冷子だって、ただでは死にたくはなかったんだろうよ。」
「なんで、冷子が執拗に命を狙われなきゃならないのよ?
C3なんて、つい最近まで都市伝説みたいな眉唾の噂話だったじゃない。確かに、最近有名な科学者が次々に病死していたから、そんな噂話に信憑性はあったわ。仮に有名な科学者の死がC3が仕組んだものだと信じたとしても、それは全て殺人とバレないような暗殺だったのよ。
なのに、急に今になって、冷子のトランクケースに爆弾を仕掛けたり、銃を持って、撃ち殺したりするようになったのよ。」
「それは、最近FBIがC3の幹部を特定して、C3の存在を確定させたからだろう?」
「なんで特定できたのよ? だって、C3は上手く立ち回っていたんでしょう。実際、ほとんどの科学者の死が病死や事故で処理されているんだからね。
でも、なんで急にFBIはC3の存在を掴んだの?」
「情報提供があったからとかか?」
「FBIが確信するような情報提供者となると、C3の仲間の中の誰かが内通者となったってこと?」
「そういうことかな?」
「……でも、こんなこと考えてもしょうがないわよね。確かに、明日は我が身なのかもしれないけれども、冷子は死んじゃったんだしね。」
「……確かに、”冷子は死んだ。”と僕は言った。でも、それは新聞に書かれていることを見たら、”冷子は死んだ。”と言わざる負えないからだ。
……ただ……。」
「ただ?」
「このことについては、この新聞を見た方がいいかもしれない。」
ケビンはそう言って、右手に握った新聞紙を広げた。そして、新聞紙の中から、C3が起こしたテロ活動についての記事を指差した。
___________________________________________________________________________
【C3の大半が逮捕へ。C3は壊滅か?
昨日未明、サンディアナ空港を爆破した疑いのあるテロ組織C3の幹部である一色剛(31)容疑者が建造物侵入の容疑で現行犯逮捕された。
ある廃墟の一軒家にて、銃を持った人がたくさん倒れているという通報があった。警察が駆けつけると、そこには、気絶したC3の人間と思われる人間が12人倒れており、その中の1人が一色剛であった。
一色容疑者達に命の別状はないが、高電圧の電気に感電したことによる全身麻痺により、現在でも病院にて治療が行われている。
高電圧が生じた原因は調査中ではあるが、洗濯機には銃弾の後が残っており、その銃弾の跡が高電圧の原因と関係するのではないかとされている。
また、洗濯槽の中には血が多量についており、C3の人間に出血をした人間がいなかったことから、この廃墟内に別の人間がいたことが予想される。この廃墟には、クロント大学の学生である飴井冷子(16)さんのものと思われる学生証や私物が見つかっていた。
なお、飴井冷子さんは、ちょうど1週間前のサンディアナ空港爆破事件以降、連絡がとれておらず、現在も行方不明のままであった。
警察は飴井さんが潜伏していた廃墟がC3に攻め込まれた結果、逃げ場を失った飴井さんが洗濯機の中に隠れたが、C3に見つかってしまった結果、洗濯機ごと撃ち込まれた。
その結果、洗濯機が何らかの原因で、ショートを起こし、放電した。なので、その場にいる人間が感電により気絶したとして捜査を続けている。
しかし、洗濯機の中や廃墟の中を捜索したが、飴井冷子さんは見つかっていない。】
___________________________________________________________________________
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます