第37話



 朝早く、ギルドへと向かった俺は、いつも通り賑やかな冒険者たちで溢れるギルドの中を歩いていた。

 今日からは新しいダンジョンへと向かうので、そのダンジョンの選定を行おうと思っていた。

 ゲームならば、攻略サイトや掲示板とかを見に行けばいいのだが、ここではそんなものはないからな。


 期間限定のダンジョンだったり、何かしらのゲームとのコラボダンジョンだったりがゲームではあったが、そういったものはどうなのだろうか?

 ふとした疑問から、ギルドで調べてみようと思っていたのだが、


「ロンドさん!」


 聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。

 振り返ると、そこにはアンフィがいた。彼女は明るい笑顔を浮かべながら、こちらに手を振っている。隣には以前一緒にいた見慣れた騎士見習いの仲間たちもいる。

 ……女性四人組。おまけに皆の容姿が整っていることもあってか、周囲の冒険者たちからじろっとした視線を向けられる。


「アンフィ。今日はギルドに来ているなんて珍しいな。どうしたんだ?」

「そうなんですよ! ちょうどダンジョン攻略のために情報を集めに来ていたところだったんですよ!」

「そうなのか。新しいダンジョンに挑むのか?」

「はい。【黒沼の洞窟】のダンジョンボスを、全員で討伐したところだったので」


 アンフィは誇らしげにすると、彼女の仲間たちも同じように胸を張る。

 ……へぇ。それはかなり順調だろう。

 アンフィがゲーム本編に出るキャラクターだからか、その周囲の人たちの成長も早いのかもしれない。


「俺も似たような状況だな。この前、ダンジョンボスを倒したから今日から新しいダンジョンに挑もうと思ってな」

「やや!? もしかして、一人で討伐したのですか?」

「……一応はな」

「凄いですね……っ。私たちはパーティーで何とかって感じだったんですよ? 私たちも、頑張らないとですね……!」

「まあ、その方が安全だしな。無理に一人で挑む必要はまったくないと思うぞ?」


 そりゃあ経験値効率を考えればソロの方がいいかもしれないが、その分危険が増す。攻撃、回復、索敵など、全てを一人でやる必要があるんだしな。

 なんなら、ゲームよりリアルのほうが移動時間も気が抜けない分、ソロはかなり大変だ。


「この街、まだ結構ダンジョンあるんだな」

「そうですね。まあ、ダンジョンがたくさんあるところに街とかって作られますから」

「そうなのか?」

「はい。その方が冒険者が集まってきて街が発展しやすいですからね」

「……なるほどな」


 ゲームではそういった細かい設定などについては語られることがなかったのでちょっと新鮮に感じる。


「ダンジョンがあって冒険者が集まって、その冒険者たちに向けての商売が盛んになって、冒険者も店もいっぱいあるなら一般の方々も住み着くようになって……そうやって街ってどんどん成長していくんですよ」

「……確かに、そう考えると理にかなってるな」


 豆知識を披露するのが楽しいのか、アンフィは得意げに話している。

 確かに、この街には冒険者が多く、それを支える商人や職人も多くいる。街を管理している領主様であるルシアナ様も、特別何か悪い噂があるわけではない。

 そうなれば、自然と人が集まりやすい環境も整うんだろう。


「ロンドさんは次に挑戦するダンジョンは決めました? 私たちは【岩石遺跡】にしようかなって思ってるんですけど」

「【岩石遺跡】か。確か、適正レベルは20くらいじゃなかったか?」


 ゲームでもあったダンジョンなので、知っていた。ゴーレム系の魔物が良く出てきて、魔法系の職業ならオススメの狩場だ。


「そうですね。この街内だと次のダンジョンとしてはそこがちょうどいいかなって思っていたんです。私たち、結構魔法が得意なので」

「……そうか。俺は剣で戦うことが多いからなぁ」

「でしたら、別の街に移動したほうがいいかもしれませんね」


 でも街を離れるわけにはいかないからな。

 ……俺も【岩石遺跡】にしようか。

 【付与術師】を駆使すれば、ゴーレム系の魔物相手でも苦戦することは少ないだろうしな。


「まあでもとりあえずは、【岩石遺跡】に行ってからまた考えてみるかな。他に、おすすめのダンジョンはあるのか?」

「この街だと……ちょっといいものは思いつきませんね。北の街に移動すれば、あるみたいですけど」

「そうか。色々教えてくれてありがとな。アンフィたちも、頑張ってな」

「いえいえ。ロンドさんも頑張ってください。あとソロなんですから、気をつけてくださいね!」

「それはアンフィもな」


 俺よりも、不運なんだしな。

 だいたいほしい情報は手に入ったので、俺はギルドを後にして【岩石遺跡】がある方角へと向かっていった。


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