第30話
ワープによって一階層へと戻った俺がそのままダンジョンの外に出ようとしたときだった。
「わわ!? もしかして、ロンドさんですか?」
ワープした先。ちょうど、アンフィの姿があった。
彼女の隣には同じような表情で驚いている騎士のような服装の人たちがいた。
皆どこかまだ慣れない様子だ。……新人の騎士とかだろうか?
「そうだけど……そっちはレベル上げにでも来たのか?」
「そんなところですね。私ももう先輩騎士になりましたので。新しく入ってきた子たちの面倒を見ているんですよ」
自慢げに胸を張ったアンフィは嬉しそうに語っている。
アンフィの言葉に合わせ、新米騎士の子たち三人が丁寧に会釈をしてくる。
それに俺も同じように返していると、一人の子がアンフィに問いかけた。
「……アンフィ先輩。このかっこいい人ってもしかして、アンフィ先輩の彼氏さんですかぁ?」
「か、かれ!? そ、そんなんじゃないですよ! 変なこと言わないでください! 失礼ですよ!」
「でも、このダンジョンに来るときに語っていた困った時に助けてくれたことのある王子様みたいな人がいるって……この方ですよね?」
「いいいいいいい! 言ってないです! そんなこと、言ってないですよぉ! ロンドさん! 誤解ですよ! この子、うまく言葉が喋れないんですよ!」
「……そ、そうか?」
……確かに何度かアンフィを助けていることもあったからか、それなりに好感度は高いようだ。
ただまあ、別にそれを指摘したところでどうこうなるわけでもないので、俺は特に触れることはしなかった。
「そ、それよりもですよ! 先ほどワープしてきましたが……もしかして、ダンジョンボスを討伐されたのですか?」
「ああ、よく分かったな」
「やや! さすがですね、ロンドさん! 私も、最近は一人で四階層まで行けるようになりましたが、まだまだダンジョンボスに挑む勇気は出ていないのですよ」
「まあ、急ぐ必要はないからな。レベルをじっくり上げてから挑んだほうがいいぞ」
「ですよね……。私、不運ですし、どんなイレギュラーに巻き込まれるか分かりませんから」
「……そうだな。新人の子たちも、気をつけてな。アンフィ、もうすでに二回もユニークモンスターに絡まれてるからな」
「ちょ、ちょっとロンドさんんん! からかわないでください!」
俺が冗談めかしく言うと、新人の子たちは苦笑していた。
「……私たちも、すでに一度巻き込まれて逃亡したんですよ」
「……やっぱり、アンフィさんって超絶不運ですよね」
まじか。
やはり、アンフィと一緒にパーティーを組んで冒険したほうがいいのかもしれない。
とはいえ、彼女は騎士としての仕事もあるわけで、そう都合よくはいかないだろう。
「……まあ、死なないようにだけ気をつけてな」
苦笑を浮かべていた彼女たちを労ってから、俺は彼女たちと別れた。
屋敷へと戻ると……何やら見慣れない顔のメイドたちが多くいた。
そういえば、今度退職する人たちがいるということで、新しく何名か雇用するという話だった。
ちょうど、エレナが案内していて、戻ってきた俺に気づいた。
メイドたちの視線が俺に向けられる。……無駄に美形なので、注目を集めているようだ。
「おかえりなさいませ、ロンドさん。皆様、彼は私と同じでルシアナ様の専属の使用人として働いている者になります」
「どうも、これからよろしく」
紹介されたので、とりあえず挨拶をすると皆からも返事があった。
……新規のメイドは五人いたのだが、その中の一人。
あの太ももは確か……リーニャンというキャラクターではないだろうか。
ゲーム本編にもいたキャラクターだ。……ある王族の元で働いている潜入調査や、時には暗殺なども行う裏側の人間。
種族は、キャット族であり可愛らしい猫耳と尻尾が揺れている。
ボーっとした表情をして、エレナの後について行っているが……なぜ、リーニャンがここに?
……少しだけ、気になってしまった。
夜。
俺はエレナから渡されていた新規のメイドたちの名簿を見ていた。
名前を覚えるためという理由と、それぞれの経歴などを俺たちも確認しておくように、とのことだ。
一応、ルシアナ様はあれでも王女様だからな。何かないとも限らないからな。
メイドたちの名簿を見ていった俺は……リーニャンについて特に注目していた。
彼女の経歴について……特には書かれていない。
……まあ、ゲーム本編とこの世界では色々と違うからな。
もしかしたら、俺の考えすぎという可能性だってある。
それでも、万が一彼女が本当にルシアナ様のことを調査に来ているのだとしたら、警戒する必要がある。
そんなことを考えていると、俺の部屋へとルシアナ様がやってきた。
「シア、つかれたよー! いいこいいこしてぇ!」
……俺の内心のことなど何も知らず、ルシアナ様は部屋に入るなり、楽しそうに飛びついてきた。
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