第15話
ギルドに向かい、俺はまず素材の売却と剣の鑑定を依頼するため、受付へ向かう。
冒険者たちが並ぶ列に俺もつき、しばらくして俺の番になった。
「素材の売却と、ドロップした剣の鑑定をお願いします」
「承知しました」
受付の女性はにっこり微笑みながら、俺の言葉に頷き、素材を確認し始める。
俺はアイテムボックスから素材を出していく。
シャドウウルフの素材や魔石を次々と確認し、計算している様子だ。
「素材の売却した金額で、剣の鑑定をお願いしたいんですけど」
「分かりました。少々お待ちください。素材の売却した金額が1000マナーになりまして、剣の鑑定が500マナーになります。問題ありませんか?」
「大丈夫です」
俺が頷くと、受付嬢がすぐに剣を手に持ったあと、メガネをかける。
少しの間、ギルドの賑わいを感じながら待っていると、受付嬢は小さく息を吐いてから、こちらに視線を向ける。
「お待たせしました。こちらの剣は【黒雷剣】といいます。筋力+15、敏捷+10がついているようです。装備に関してはレベル5以上であれば装備できるようですね」
おお……敏捷+10か。Sランクまでは行かないが、Aランクくらいの価値はあるな。
「こちらの武器であれば5万マナーくらいで買取可能ですが、いかがしますか?」
……ギルドとしてもなかなかの装備品だから買取たいようだな。
だがもちろん、売るつもりはない。
「いえ、自分で使いますので」
「そうですか……。それでは、こちらが500マナーになります。ありがとうごさいましたは」
受付嬢は少し残念そうな表情こそしたが、特にそれ以上は何も行ってこなかった。
素材の売却した残りを受け取り、俺はそれらをアイテムボックスにしまっていった。
これで今後の冒険もだいぶ有利に進められるな。
さて、これであとは帰るだけなのだが、屋敷に戻ってエレナに一つ相談しないといけないことがある。獲得した武器が自分の物として使えるかどうか、聞き忘れていた。
さすがに、プライベートで手に入れたものだから大丈夫だよな?
屋敷に戻り、俺はエレナに相談するために声をかける。
彼女は、ちょうど荷物を運んでいるところだったので、俺はそれを手伝いながら質問する。
「手伝って頂いて助かりました。それでロンドさん、何かご相談でしょうか?」
「実はダンジョンで武器をドロップしたんだけど、これって自分のものにしても問題ないか?」
エレナは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに微笑んで答えた。
「もちろん、ご自分のものにしていただいて構いません。アイテムボックスと貸し出し品に関しては返却していただければそれで大丈夫です」
「そうか……分かった」
エレナの言葉に、俺は心底ホッとした。せっかく手に入れた武器が没収されるなんてことになったら、さすがにへこむところだったからな。
「本日貸し出した装備品に関してはアイテムボックスに入れてあるのでしょうか?」
「え? ああ、そうだな」
「それでは、倉庫に用事がありますので私がそのまま置いてきましょうか?」
「それなら、お願いしてもいいか?」
「はい。まだお休みですから、ゆっくりしてください」
エレナ……優しいな。ゲームではほとんど関わりがないため、彼女がどのようなキャラクターなのかは分からないが、見た目良し、性格良しなのだから運営はもっとこの陣営の物語を作れば良かったのにな。
「それにしても、初日から武器をドロップするなんて運が良いですね。レベル上げはどちらで行っていたんですか?」
「【黒沼の洞窟】だな」
「ああ、やはりあちらですか。でも、シャドウウルフたちって……武器のドロップありましたっけ?」
「いや、スケルトンロードからだな」
エレナがいう通り、シャドウウルフは武器のドロップはないんだよな。
俺が苦笑混じりに答えると、エレナが足を止めた。
「え? ど、どういうことですか?」
……めちゃくちゃ、驚かれてしまっている。ゲームの時は攻略方法はたくさんある魔物だが、この現実だとそういうことはないのかもしれない。
「えーと、スケルトンロードと戦ってたまたまドロップしたというか……」
そう言った瞬間だった。エレナはパッと俺の方にやってきて、俺の肩を掴んでくる。な、なんだ!?
「怪我はしていないのですか!?」
「え? あ、ああ、大丈夫だぞ」
エレナがめちゃくちゃ心配したきたので、俺は体を動かし五体満足であることをアピールする。
それで、ようやくエレナは安心したようでほっと息を吐いた。
「……そ、それなら良かったです。スケルトンロードといえば、ユニークモンスターなんですからね? とても危険な魔物なんですから、遭遇したらすぐに逃げてくださいね!」
エレナが少し怒った様子で声を上げる。……心配、させてしまったようだ。
「済まない。たまたま、魔物に襲われている人がいたから助けに入ったんだ」
……まあ、どちらかというとレアドロップを狙っていた部分はあるけど。
「……それは、とても良いことですがね。あなたはまだレベルも低いんですから共倒れになっていた可能性もあるんですからね?」
「そうだな……まあ、これからは無茶はしないように気をつける」
……今度からは、そういった事態に遭遇してもエレナには黙っておこう。
その日の夕食を終えた後、俺は部屋に戻り、少し休憩を取っていた。
……夜になっても、ルシアナ様が来ない。
あれ?
いつもだったら「ばぶぅ!」とか言って甘えに来る時間だよな。
今日は他にやることがあったのかもしれない。
少し驚きながらも……いや、これが普通なんだよな。
とにかく、俺は一人の夜を久しぶりに過ごすことができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます