第14話


 少し落ち着いたところで、俺はスケルトンロードがいた場所に落ちているドロップアイテムを確認する。

 そこに転がっているのは、黒色に輝く剣だ。

 おお、まさか武器がドロップしてくれるとは!

 スケルトンロードのドロップ率はそこまで悪くないが、これは嬉しい。


 確かこの武器は……【黒雷剣】、だな。

 レベル5から装備可能の剣だ。

 漆黒の刀身が冷たく輝いていて、持った瞬間に手に馴染む感触が伝わってきた。筋力+15の補正が確定でついていて、ユニークモンスターがドロップした品なので、恐らく他にも補正があるだろう。

 スケルトンロードのドロップ品だと……敏捷+1~15のどれかがついていたんだったか……?

 この数値一つで結構ステータスが変わってくるので、ユニークモンスターのドロップ品の厳選は地獄なんだよな……。最高数値を引いた装備品なんて、相当な高値で取引されるものだ。


 まあ、さすがにゲームと違ってそこまでの厳選をするつもりはない。高い数値だったらラッキーくらいだな。

 武器に関しては鑑定してもらう必要があるので、ダンジョンを出たら見てもらおうか。


 装備品のドロップなど、ゲーム的な要素があるとやはり楽しくなってくる。

 ついつい口元を緩めながら、剣をアイテムボックスにしまいこみ、それから、残った素材も忘れずに回収していると、後ろから声をかけられた。


「あ、あの……!」


 振り返ると、アンフィがこちらに向かってきていた。

 ……あっ、忘れてた。

 一人テンションが上がっていたことを思い出し、少し恥ずかしくなった。


「助けてくれて、ありがとうございます」


 アンフィが小さく頭を下げる。その表情はどこか恥ずかしそうに頬を染めている。

 俺は、そんな彼女に軽く手を振りながら応じる。


「気にするな。それよりも……このドロップしたアイテムたちは俺がもらっても……いいか?」


 ……MMORPGで、厄介なプレイヤーは助けたというのに装備は寄越せと喧嘩することもあるからな。

 だから、ゲームでは基本他人を助けることはしていなかった。

 しかし、アンフィはぶんぶんと首を横に振り、物を譲るかのように両手をこちらへと動かしてくる。


「どうぞどうぞ! 構いませんよ! あなたのおかげで助かりましたから!」

「……そうか」


 ふう、良かった。無用なトラブルは避けられそうだ。


「俺はこれでダンジョンを出るが……お前たちは大丈夫か?」


 彼女の倒れている仲間たちを見る。アンフィは一度視線を向けてから、こくりと頷いた。


「……私たちもすぐに脱出しようと思います」

「そうか。気をつけてな」

「……はい。本当にありがとうございました!」


 アンフィは頷き、それから倒れた仲間を背負っていく。

 ……ここから出口までそう遠くはないし、問題はないだろう。

 俺も一人ダンジョンから脱出するため、入口へと向かっていった。



 ダンジョンから脱出したところで、俺は自分のステータスを確認する。


 ロンド レベル5 ジョブ:【付与術師】 ステータスポイント:15 加護:【時導神リムレス】

 筋力:10 体力:11 魔力:27 魔法力:11 敏捷:10 運:1

 

 スキル:【甘やかし上手:レベル4】、【掃除:レベル1】、【料理:レベル1】、【剣術:レベル2】


 お、レベル5まで上がってるのか。

 スケルトンロードとの戦闘で一気にレベルが上がったようだな。

 ステータスポイントも増えたし、これなら【黒沼の洞窟】のダンジョンのさらに下の階層にだって行けるだろう。

 さらに、ウィンドウの片隅に新たな項目が表示されているのに気づく。


 ウィンドウを切り替えると、称号の画面があった。

 称号はレベル5から開放されるものだったな。


 称号は、行動によって得られる特別なもので、セットしておくことでステータス補正や一部のモンスターへの特効効果が付与される。何かしらの便利なスキルを得ることもあるし、戦闘において非常に重要だ。


 今回得られる称号の候補がいくつかある。

 ……獲得した称号以外は消えてしまうので、どれをセットするかは重要だ。

 色々と称号が提示されていたのだが……悩む必要はない、な。


 スケルトンロードを倒したことで恐らく獲得したのだろう称号――【無謀なる挑戦者】。

 これは、低レベルの状態で自分よりも格上のユニークモンスターを討伐した者に与えられる称号で、序盤の最強称号の一つと言われている。

 全ステータスに補正がかかるため、レベル50くらいまではこの称号で十分だ。

 俺は他にも候補があったが、迷わず【無謀なる挑戦者】を選んだ。


 【無謀なる挑戦者】は、全ステータスに+5%の補正が入るぶっ壊れ称号だ。

 低レベルでは、パーセントよりも固定値での上昇の方が強いが、高レベルではパーセントの方が恩恵は大きい。


 ひとまずは、こんなところか。ステータスポイントも余っているが、それはまた後で倒せない魔物が出てきたら割り振ればいいだろう。


 あとは、屋敷に戻る前にギルドに戻って素材を売って、用意した金で【黒雷剣】の鑑定を行えばいいだろう。


 ……それにしても、かなりの成果だったな。

 装備品はもちろんのこと称号に、経験値とゲームでの最短攻略ができてしまった。


 とはいえ、毎回こんな命を賭けた戦いをするのは、正直避けたいところだ。もっと安全に、のんびり成長していければ、それが一番だ。

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