第7話
ひととおりの作業が終わった。
そう、作業だ。そう思っていないととてもではないが耐えられなかっただろう。
ルシアナ様は満足そうに湯舟につかり、俺とキャリンは端の方でそれを眺めていた。
「ロンド君、意外と落ち着いているね。男の子だから、もっと興奮しちゃうかと思ったけど……もしかして、異性に興味がないタイプかな?」
キャリンが微笑みながら言葉をかけてくる。
なぜ、異性に興味がないタイプかどうかでテンション上がってんだ。
ひとまず俺は自分を落ち着かせるよう、自分に言い聞かせるように口を開く。
「……遣える主に対してそういった劣情は抱かないように心掛けているだけだ」
「へぇ、そうなんだ……?」
なんでちょっと残念そうなんですか。
欲情していると判断され、ルシアナ様に追放されたらひとたまりもないからな。
第一……この屋敷から追い出されるとき、それすなわち俺が消されるときだろうしな。
口では強がってみせたが、ルシアナ様の裸に興奮していないわけがない。
だって俺、前世含めて童貞だし!
「……まあ、多少は意識したけどな」
「それもそうだろうね。まあでも、ルシアナ様が気にしていないんだから、ロンドくんも変なことはしないようにね」
「分かってる」
そう短く返事をしたところで、ルシアナ様がこちらへ顔を向けてくる。
「すまない。少し脚のマッサージをしてくれないか?」
「分かりました。私がやりますね」
……それはキャリンなりの俺への気遣いなのかもしれない。
俺はほっと胸を撫でおろしながら、その様子を伺っていた。
夜、俺は一人自室に戻り、ようやく落ち着けるかと思っていた。しかし、安らぐ暇もなく、部屋のドアがまたしても勢いよく開けられた。
「ロンド、起きているか?」
そこに立っていたのは、言うまでもなくルシアナ様だ。まあ、約束していたわけではないがまた来るんだろうな、とは予想していたんだけどな。
「……どうされたのですか?」
俺が戸惑いながら問うと、ルシアナ様はそのまま俺のベッドに歩み寄り、ふっとため息をついた。
「また甘やかしてもらおうと思ってな」
不敵な微笑を浮かべる。その顔は、何か危機的状況を打破するような名案でも思い付いたかのような表情である。
「ばぶぅ……ロンド、さあ、抱っこしてくれ」
またしても彼女の甘え状態へと移行する。
俺は仕方なく、ルシアナ様を膝に乗せて軽く背中をさすった。彼女は幸せそうな顔で甘えてくる。
「あああぶ!」
テンション上がったようで、完全に赤ん坊かしている。
俺がルシアナ様の頭を撫でていると、
「だあぶ! ああそうだった。……今週は研修扱いだが、来週からは本格的に仕事を始めてもらうつもりだ。レベル上げも必要になるだろう」
「いきなり普通の状態に戻らないでください」
「だああぶ!」
すまん! とばかりに声をあげる。
……今は完全にプライベートな状態のルシアナ様にこのことを聞くかどうかは迷ったのだが、聞いておきたかった。
「ちょっとだけ聞きたいことがあったのですが、いいですか?」
「だぁ?」
「専属の使用人はいざというときの護衛を行うということでレベル上げの必要もあると聞きましたが……今後自由時間とかにレベル上げとかは好きにやっていいんですか?」
「だあぶ! ……ところで、聞きたかったのだがキミのレベルは現在いくつなんだ?」
「レベル1です」
「そうか。それならば、これから精進してほしい。私としても、キミを手放したくはないからな」
その理由は俺に甘えるためなんだよな。
俺は自分の現在のステータスを、確認してみる。
意識すると、俺の眼前に自分のステータスウィンドウが表れる。
ロンド レベル1 ジョブ:なし ステータスポイント:10 加護:なし
筋力:10 体力:11 魔力:12 精神力:11 敏捷:10 運:1
ゲームのようにHPやMPは表示されないのか。
筋力、体力、魔力、精神力、敏捷、運のパラメータが並んでいる。
筋力は攻撃と防御力、体力は防御力や移動の際などに、魔力は魔法の威力と回数に、精神力は魔法への耐性と魔法の回数などに、敏捷は移動速度に、運はドロップ率などに影響するんだったな。
他にも、スキルによってステータスの一部が関係しているし、細かい部分でステータスが関わってくる。
……今の俺ってレベル1のステータスで見れば、ゲーム開始時点のプレイヤーよりも弱いんだよな。
そして、運が露骨に低いのはまあ納得ではある。
別のウィンドウを開けば、現在獲得しているスキルについても確認できる。
このゲームでは、自分の行動次第でスキルを獲得していける。剣を使えば、剣術のスキルが手に入ったり、掃除をすれば掃除のスキルが手に入ったりな。
そのおかげか、俺は【掃除:レベル1】と【料理:レベル1】のスキルが手に入っている。
そして、一番下の気になるスキルがあった。
【甘やかし上手:レベル3】。
なんやねんこのスキル。
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