第6話

 ルシアナ様が立ち上がり、優雅に部屋を出ると、俺とキャリンもその後に続いた。

 屋敷にある浴室は広々としていて、まるで温泉のような空間が広がっている。湯気がほんのりと立ち上り、清潔感に満ちたその空間は、貴族らしい品位に溢れていた。

 ……この世界では、風呂はそこまで高級品ではないのだが、とはいえ平民が毎日浴びるようなことはない。


 大浴場、と呼ばれるような施設があるというのは、さすが第七王女なだけはある。

 更衣室まで同行した俺は、すでに心臓がバクバクだ。


「ロンド、服を脱がせてくれ」


 ルシアナ様はちらりと一瞬だけこちらを見てから、まるで何も感じていないかのように、さらりと言い放つ。

 ……彼女にとっては、これが日常の一部なのだろう。

 俺は深呼吸をして心を落ち着け、彼女の背中に手をかける。


 まずは、彼女の上着をそっと脱がせ、次にドレスのファスナーをゆっくりと下ろしていく。ファスナーが開くにつれて、彼女の滑らかな背中が露わになる。

 その肌は透き通るように白く、俺の指先に触れるたびに心臓が激しく鼓動を打った。


 肩からドレスが滑り落ちると、彼女は自然に腕を動かして服を脱がしやすくしてくれる。

 彼女の体が次第に目の前に現れ、そのたびに俺は意識を集中させないように必死だった。


 ルシアナ様、本当に堂々としている。彼女の様子が崩れたのは、俺に甘えているときくらいである。


 彼女の表情には恥じらいはなく、むしろその威厳ある佇まいに圧倒されてしまう。


 俺は次に彼女の下着に手をかける。

 ルシアナ様は一瞬だけ俺を見下ろし、そのまま静かに立っていた。

 ドキドキするのを必死で抑えながら、俺はゆっくりと下着を下ろし、彼女の体を全てさらけ出した。

 芸術品のような美しい肢体に、堂々とした彼女のたたずまい。

 それだけあればさすがに俺も興奮するということはなく……嘘です、バキバキに興奮しています。


「さて、行くぞ」


 ルシアナ様は当たり前のようにそう言い放ち、悠然と更衣室を後にした。

 俺たちは特に着替えるということはせず更衣室を抜け、湯気に包まれた広々とした浴場に入った。

 広々とした浴場の中央には大きな湯船があり、両脇にはシャンプーやボディソープが整然と並んでいる。

 ……前世でもよく見たような風景ではあるが、一つだけ違うのは浴場全体が高貴な雰囲気に包まれているということだ。


「それじゃあ、ロンドくん。まずはルシアナ様の髪を洗ってもらおうかな? 基本的には、自分の髪を洗うのとそう変わらないからね?」


 キャリンが優しく促してくる。俺は心を落ち着けようとしながら、ルシアナ様の背後に立ち、シャンプーを手に取った。


 ルシアナ様は特に恥ずかしがる様子もなく、シャワーのようなものの前で鎮座している。

 ゲーム内にもあった魔道具で製作したお風呂シャワーセットだったな。

 俺はシャンプーを手に持ちながら、少し緊張してその様子を見る。


「ロンド、早くしてくれ」

「も、申し訳ありません。すぐに行います」


 俺は慌ててシャンプーを手に取り、ルシアナ様の髪に指を通すように洗い始めた。その長い髪はしっとりと滑らかで、まるで絹のような感触がする。髪を撫でるたび、心地よい匂いが鼻をくすぐる。

 ……俺は前世で犬を飼っていた。今は犬を洗うときのような気持ちで、ルシアナ様の髪を洗っている。

 そう思うとうん、多少は大丈夫なのでは? いや、犬はこんな綺麗な背中してない……!


「なかなか、上手だな」


 ルシアナ様はリラックスした声でそう言うが、俺の内心は全くリラックスしていない。

 彼女の背中や肩、首筋が目に入るたびに、その美しい体に目が釘付けになる。


 ……これは思っていた以上に試練だな。


 前世含めて、こんな状況になったことなんて一度もない。俺は童貞だし、いきなりこんな美しい女性を目の前にして冷静でいられるわけがない。だけど、俺はルシアナ様の専属使用人。ここで自分を制御しなければ、失礼にもほどがある。


「ロンド、そこをもう少し頭皮をマッサージするように洗ってくれないか?」

「は、はい!」


 言われるがままに、俺は指先に力を入れて彼女の頭をマッサージする。だが、その度に胸の奥がざわついてしまう。どうしても彼女の肌が意識に入り込んでくるのだ。


「ん……気持ちいいな」


 ……一日仕事をしていて、疲れているんだろうな。

 俺は邪念を振り払うようにして、ルシアナ様の髪を洗っていった。



 そうして髪を洗ったあと、シャワーでシャンプーを落としていくと、


「よし、次は体を洗ってもらおうか」


 ルシアナ様がすっと立ち上がった。

 い、いよいよ、か。

 湯気の中で彼女の肌が光を帯びたように輝いて見える。再び俺の理性が試される瞬間が来た。


「分かり、ました」


 俺はタオルを手に取り、彼女の背中を軽く拭き始める。スベスベとした肌触りで、少しでも力を入れすぎると傷ついてしまいそうなほど繊細だ。そんな風に思いながら、俺は全身全霊で彼女の体を……楽しませてもらうことにした。


 でも、何もできないわけで……生殺しなんだけどな。




―――――――――――――――

もしよろしければ、【フォロー】と下の【☆で称える】を押していただき、読み進めて頂ければ嬉しいです。

作者の投稿のモチベーションになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る