第6話 街かど愚連隊
コピちゃんは、おかみさんの店に戻った。
「アプナイ アプナイ
捕まったら大変よ」
コピちゃんは青いレーザービームを使うネコを瞬時に見抜いたようだ。マコトの右眼から一瞬放たれた光線のことだ。我々とはまったく違うネコだ。
「そういえば緑色の眼をしたネコもいたな」「ヤツはinvisible(インビジブル)の世界から観ている」
「あれは特に要注意だ」
お隣の韓国から来たコピちゃんは、漬物屋のおかみさんの所で飼われている小太りのネコだ。毎日が横丁観察の日々。何かあるとすぐ韓国から来たネコたちと連絡を取り合ってる。危機管理能力が高いネコと言える。
キムチが良く売れるハレヤ横丁。上野近くの大通り沿いには、我々の仲間が多く住んでいるので特に安心だ。
おかみさんは隣の八百屋から大根やら白菜を仕入れては手際良く漬物にしていく。いわゆる朝鮮漬けだ。この時代なぜか多くの韓国人が日本に渡った。何かを察してか自国を捨ててまで、日本の東京に来たらしい。まあその辺は色々事情がおありでしょうから言及しないが、同じアジア人としてすんなり文化融合が出来て、まあいい感じだよ。キムチも美味しいしね!
あの時、マコトに見つかったのは
そう、この小太りネコだった。
近くの電気街で色々と電子情報を貰っていたので、ちょっと異変を感じる事はお手のものだった。マコトのシャッター音が青いビームと同時に聴こえていたコピちゃんは、危機感を感じて、決して映らない様に身を隠していた。もしかしたら街角テレビの見過ぎか?
「そんなところにいないで
遊んでらっしゃい!」
おかみさんにお尻を引っ叩かれたコピちゃんは、慌てて店の外に飛び出した。普段から美味しいものを食べているので、見た目は太っているが、俊敏さはお手のものだった。
その時、マコトの視界にコピちゃんが入った。ヨシオさんには見えて無かったようだが、マコトの右眼は確実に捕らえていた。
結構逃げのびて、上手くいったと思ったのに、あ〜あ、おかみさんの所へ帰ったら、なんとヨシオさんとマコトが、韓国料理のおこぼれを貰っていたのを見て、ガックリと肩を落とした。
「コピちゃんもこっちいらっしゃい」
おかみさんはコピちゃんの分も持ってきた。
ヨシオさんとマコトは…
「アッあの時の!」
コピちゃんは…
「あの〜その〜という事でね」
マコトは右手を右眼脇に当てて、ブルーレンズを通して撮影した。しっかりコピちゃんにはレーザー光線らしき青色が照射されていた。カシャ!
「結局こうなっちゃうわけか!」
コピちゃんは諦め顔で二人を見つめた。
おかみさんは忙しそうだった。
ヨシオさんは察した。お礼と言ってはなんですが、仕事の邪魔にならない様にコピちゃんを連れ出そうと考えた。夕方は特に忙しくなるから居ない方がいいからね。
〜ネコ同士の会話が始まった〜
しばらくして3匹のネコは、神田の問屋街に向かった。今でこそパソコンオタクの聖地になってしまったが、当時は多くの食品問屋が軒を並べていたのであった。あと駅の一角に細々とラジオ部品を売っている店があって、それなりに繁盛していた。コピちゃんはなぜかその周辺が好きだった。
食品問屋は青物がメインだった。それに加え削り節から昆布、カンピョウ、海苔、缶詰等の乾物類。珍しいモノは何でも売っていた。木の台車を引く音が、朝早くから昼まで市場中に響いていた。ここも時間との勝負、ノロノロしていると怒鳴られた。
3人は食品問屋の裏手に回った。当然表に居ると邪魔になるからだ。裏手はダンボールが山積みになってる所もあって、意外と隠れる所があるようだ。
見るとここにもネコがいた。
〜見た目おじいさんネコだな〜
「ダンボールが積み上がってる裏って静かでいいんじゃよ」
「さだちゃん」って呼ばれているネコは、ダンボールの合間から頭を出してこっちに向かっていきなり話してきた。
「この辺はたまに乾物の返品とか、
不良品がゴミで出るのでありがたいんじゃ」
「俺も鮫洲の方から来たからよくわかるんじゃよ」
「まさかゴミ漁りじゃないだろうな」
ヨシオさんは風貌で判断してしまった。ちょっと変わったネコだな。オモロイ系だろうけど、こんな所で生きているのか?南の方から誰かと一緒に来たんだろうね。まあネコっていうのはそんなもんだからね。しかし毎日毎日ゴミの中で生活してちゃ辛くないかね〜。
マコトは撮影に集中していた。
確かにこの時代、全国から東京に物資が集まって来ていた。コピちゃんはヨシオさんの事が、何となく気に入ってきたようだ。
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